こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
【観た/2023年32本目】映画「聖地には蜘蛛が巣を張る」観ました。
【解説・あらすじ】
イランの聖地マシュハドで売春婦連続殺人事件が発生する。
「街を浄化する」という信念のもと、犯行を重ねる殺人鬼“スパイダー・キラー”に人々は恐怖を抱く一方で、犯人を英雄視する市民も少なからずいた。
そんな中、事件を覆い隠そうとする圧力を受けながらも、女性ジャーナリストのラヒミ(ザール・アミール=エブラヒミ)は臆することなく事件を追い始める。
ある夜、彼女は家族と暮らす平凡な男の狂気を目の当たりにする。2000年から2001年にかけてイラン社会を震撼させた連続殺人事件を題材にしたクライムサスペンス。
不条理な圧力と身の危険を感じながらも、事件の真相を追うジャーナリストの苦悩を描く。
監督・脚本はアリ・アッバシ。
主人公を演じたザール・アミール=エブラヒミが同映画祭女優賞を受賞したほか、
メフディ・バジェスタニらが出演する。
【感想】
これは果たしてイスラム国家の問題なのか。
正義の暴走の行方から目を逸らせない、我が身事として振り返るべき問題作!
まずストーリー。
実話ベースではあるものの、ドキュメンタリータッチに寄せず、しっかりとソリッドな構成。
過剰な説明、例えばイスラム社会の背景などを削ぎ落とし、
緊迫感を最初から最後まできっちり張り詰めたスキのないストーリー展開はスピード感もあり呼吸を忘れる危険あり!
強烈な脚本、狂気じみているといって構わないでしょう。
つぎに演出、演技。
これもまた、エッジの効いた、硬派な演出。
「観客の価値観を揺らす。」
この一点にギリギリまでフォーカスを絞りきって、ピンと張り詰めさせる。
一体何が問題なのかをさらけ出すかのような手法はこれまた狂気じみている。。。
独特の画角や明暗のはっきりしたライティングなども効果的。
物語がくっきり浮かぶ、鮮やかな手腕でした。
俳優陣もおそらくはギリギリまで突き詰めた演技。
国の情勢や文化背景を考えると演じることすら危険に思えるような配役。。
よくぞ受けたし、よくぞ演じきった、魂のこもったとはまさにこのことでしょう。
少しだけ難点を言えば、
実話ベースとはいえご都合主義に感じる展開があるところ。
もっと脚色しちゃっても観客はついていける。
事実にこだわりすぎたのかな、とは感じました。
さてさて。
正義の暴走はいつの時代にも、いずれの場所でも再生産される人間の業。
今作ではミソジニー(女性蔑視)を強烈に取り上げていますが、
これはイラン国内、イスラム社会の問題ではなく、完全に世界へのメッセージであったと感じます。
例えば日本でのジェンダーギャップ、毎年発表されれば一時話題にこそなりますが、
何が問題なのか、動やったら解決するのかまで継続的に僕らが追っているかといえば自信なく感じます。
映画の中でのマスコミの有り様、本来の社会の木鐸たる姿も残念ながら日々強く感じることはないのが現状ではないでしょうか。
社会の有り様は構成する人々の営み。
正義の暴走は僕らの暴走でもある。
我が身のこととして感じなければいけない感じさせてくれた作品だったと思います。
【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。
ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です
もちろん「オススメ☆」です♪
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