こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
【観た/2023年40本目】映画「TAR」観ました。
【解説・あらすじ】
リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、ドイツの著名なオーケストラで初の女性首席指揮者に任命される。
リディアは人並みはずれた才能とプロデュース力で実績を積み上げ、自身の存在をブランド化してきた。
しかし、極度の重圧や過剰な自尊心、そして仕掛けられた陰謀によって、彼女が心に抱える闇は深くなっていく。トッド・フィールドが監督を務め、ケイト・ブランシェットが女性指揮者を演じるドラマ。
有名オーケストラで女性として初の首席指揮者となった主人公が、重圧や陰謀といったさまざまな要因により追い詰められていく。
マーク・ストロングやジュリアン・グローヴァーなどが共演する。
【感想】
権力とエゴイズムを強すぎる音圧で奏できる、サスペンス?いや、これは多分ホラー。
まずストーリー。
まず目につくのは作品が取り扱う「問題」の多さ。
キャンセルカルチャー。
権力を作り出してしまうシステムとエゴイズム。
ジェンダーギャップと人種問題。
コロナ社会。
SNSの悪意。
芸術の狂気性。
ざっとみてもこれだけ多くの要素をストーリーに組み込んでいます。
普遍的なもの、現代的なものが混在するので、ぐちゃっとどっちつかずになりそうなところ、
どれもこれもギリギリのバランスできっちり可視化されるところはさすがの出来栄え。
誰もが反応できるポイントをきっちり作り上げてます。
そして演出だったり演技だったり。
かなり意図的に解釈、とくに物事の善悪、人の弱さを観客に委ねる、観る側の負荷を高く求める演出。
かなり振り切ってるなと感じました。
ケイト・ブランシェットの演技も圧巻。
全編彼女の視線で物語が進むのですが、これだけの長尺、これだけ複雑な内容をじゃあ、だれがやれるの?
説得力の強さはもはや暴力的、ねじ伏せるような力技。
物語との親和性、キャスティングについてはこれが唯一の正解と納得せざる得なかったです。
ちょっとこれはいかがなものかと思った点は、
・オープニングの演出。冗長だし、奇をてらったのだとしても効果的にはどうしても思えない。
・肝心の音楽シーンが少なく、薄く、あっても迫力不足。音楽そのものがはらむ狂気が伝わってこない。
のは極めて残念でした。
さて。
いかなるレイヤーにもそれを支える仕組みや構造が有り、かならず権力が生まれる。
権力はいつだって蠱惑的。
相当自律的に振る舞ってもいつのまにか悪魔のように心の弱い部分に巣を作り、良心を腐敗させる。
いつも僕らが観てきた、体験してきた、身に覚えがありすぎるあの不快感。
なにかに邁進すること、例えば音楽に身を捧げること自体は本当に尊いことなのに、
深淵に近づくほど。高みに迫るほどに張り巡らされている罠に気づけなくなる。
鑑賞後、体感として残ったのは「恐怖」。
この畏怖すべきものをいかに飼いならすのか。
自分が、世界が、怖くて恐ろしい。
痛烈なホラーを体験したように思います。
【評価・付けるとしたら」
3.8です。
ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です
もちろん「オススメ☆」です♪
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