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アルシオン通信

Alcyon Blog

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2024年11月19日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年83本目】映画「シビルウォー」観ました。

近未来のアメリカ。
19の州が連邦政府から離脱する中、国内では大規模な分断が進み、
カリフォルニア州とテキサス州が同盟を結んだ「西部勢力」と「政府軍」による内戦へと突入する。
戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストチームは、
戦場と化した道をニューヨークから1,000キロメートル以上も走り続け、
大統領が立てこもるホワイトハウスがある首都・ワシントンD.C.へと向かう。

近未来のアメリカを舞台に、分断された国内で内戦が勃発するさまを描くスリラー。
多くの州が連邦政府から離脱し、内戦状態に陥る中、ある戦場カメラマンたちがワシントンD.C.を目指す。
監督などを手掛けるのはアレックス・ガーランド。
キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラのほか、
スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ケイリー・スピーニーらがキャストに名を連ねる。

【感想】
戦争映画「最後の視点」で魅せる、近未来の寓話。寓話だよね?

まずストーリー。
これはアメリカの「分断」という、現在進行形の社会問題を地理的に可視化。
ロードムービーにすることで、これまた戦争の「真の姿」を顕在化。
常に危うい、着弾一つで世界が終わる光景をしっかりと描写した脚本です。

そして演出演技。
客観のなかに、さらに客観を取り込むといった手法、これこそ最後の視点。
戦闘、命の奪い合いのリアルさをまざまざとみせつる。
その中で問われる人間性の問題にもリーチ。
戦闘シーン以外もまた戦場であることがしっかり伝わるトルクの効いた演出でした。

ただ、
分断の主要因、なぜ東西なのかが体感としてわかりにくく、
ヒューマニズムの問題への踏み込みは残念ながら浅く、
も一ついえば大国ならではの問題、核使用の葛藤も盛り込んででほしかった、
です。

さて。
「分断」「格差」という言葉が定着しきって、
主たる原因として争いを誘発し、暴力に結びつくシーンは別に近未来じゃ無く、
現代も過去も、世界の至る所で、なんだったら隣の町で、わが街で、
徳利返されているように思います。

本作ではおそらくは解決手段としての報道のあり方を提示したかったのであろうと推察しますし、
第4の権力、社会の木鐸なのだからそうであってほしいと希求します。

ところが現実にはフェイクは蔓延し、プロパガンダには利用され、、、。
人間の弱さ、やるせなさを感じました。

他山の石、と思いたい所ですが、もうそれどころでは無いのかもと思う鑑賞体験となりました。

【評価・つけるとすれば】
3.8です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年11月17日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年82本目】映画「SUPER HAPPY FOREVER」観ました。

2023年8月19日、幼なじみの佐野(佐野弘樹)と宮田(宮田佳典)は、伊豆の海辺にある閉館間近のリゾートホテルを訪れる。
5年前にここで出会った妻の凪(山本奈衣瑠)を亡くしたばかりで自暴自棄になる佐野を見かねて、宮田が助言するものの彼の言葉は佐野には届かない。
二人は閉店した思い出のレストランや遊覧船を巡り、かつて無くした妻との思い出の赤い帽子を捜す。

五十嵐耕平が監督などを務めたロードムービー。
妻に先立たれた男性が、妻と出会ったリゾート地を幼なじみと共に5年ぶりに訪れる。
佐野弘樹、宮田佳典のほか、山本奈衣瑠、ホアン・ヌ・クインらがキャストに名を連ねる。
五十嵐監督と組んだダミアン・マニヴェルが共同プロデューサーなどを担当する。

【感想】
短すぎた思い出と長すぎるこれからの日々。
美しい情景が胸をえぐる喪失の物語。

まずストーリー、脚本。
テーマ自体はよくあるパターンで、悪くいえばありきたりになってしまいがち。
これを前半に「破綻」、後半に「構築」を持って行く、いわば倒置法的に脚本をくみ上げることで新鮮味を確保。
さらにはプロットをちりばめ、男性と女性の別れの物語にとどめない話の幅と深みを持たせています。

そして演出演技。

これもまた出色。
自暴自棄な男性、意外に多い設定だと思うのですが、これが抜群に上手い。ともかくいやな感じ。
天真爛漫な女性、これもよくある設定ですが、また上手い。絶妙にハラハラする。
地方の観光地の華やかだった過去とひなびた今の対比。
自己啓発セミナーに傾倒してゆく親友。
苦しみ、閉塞感、しいては死の描写が細やか。
後半のボーイミーツガールの部分の浮き立つような日々が、
前半の残り香を探すかのような一日の輪郭を強調している。

正直最初の5分10分はきつく、苦手な映画と感じていましたが、
途中からみるみるストーリーに引き込まれ、まるで二人を目撃しているかのような気持ちにになりました。

さて。
出会ってしまえば別れるのは必至。
それは今日かもしれないし、十二分に先かもしれない。
喪失を感じるのは自分じゃないかもしれない。
言い換えれば出会いとは残酷の入り口なのかもしれない。

それでも人は出会い、慈しみ、共に生きてゆく。
SUPERでHAPPYでFOREVERじゃ無いことなんてわかっているのにもかかわらず。

心の渇きが癒やされる、豊かなラストシーン。
思い出の場所、思い出の時。

ちゃんと覚えていなきゃと感じました。

素晴らしい映画体験だったと感じます。

【評価・つけるとすれば】
4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年11月06日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年78本目】映画「サウンドオブフリーダム」観ました。

国土安全保障省の捜査官ティム(ジム・カヴィーゼル)は、
国際的な性犯罪組織に拉致された少年少女の行方を追っていた。
上司から特別に捜査許可を得た彼は、児童人身売買がはびこる南米・コロンビアに単身乗り込み、
前科者や資金提供を申し出た資産家、地元警察と組んで大規模なおとり作戦を計画する。
やがてティムは、尊い命を救うために命懸けで作戦に臨むことになる。

国際的な児童人身売買の被害に遭った少年少女の救出に奔走したティム・バラード氏の経験に基づく実録サスペンス。
児童人身売買の闇に立ち向かう捜査官をジム・カヴィーゼルが演じ、ミラ・ソルヴィノ、ビル・キャンプらが共演。
アレハンドロ・モンテベルデがメガホンを取り、メル・ギブソンが製作総指揮に名を連ねる。

【感想】
現在進行形の原罪と向き合う力作。
制作陣の覚悟に刮目せよ!!

まず、ストーリー、脚本。
よい意味でとても巧妙。
ヒーローを準備し、悪役をクッキリさせ、サスペンスやアクションまで用意。
激重なテーマの入り口を大きく取り、プラットフォームとしての「映画」を縦横無尽に活用。
まずは作品として、エンターテインメントとしてとっつきやすい設計、見事な脚本です。

そして演出演技。
これもまた巧み。
俳優陣の感情の明暗をきっちりつけながらの演技は圧巻でしたし、
世界にはびこる格差を映像として見せきることにも成功。
今回の作品は「児童誘拐・人身売買」がテーマ。
真実に基づく、とはありましたがおそらく映画で描き、
観客である我々が耐えうる作品に仕上げるにはこれもまたよい意味での希釈、その塩梅が問われるところ。
そこで大きく尺を取ったスリリングなアクションシーンや、サスペンス的な会話のやりとりなどなど、
もっと薄暗く、もっと血なまぐさくしてもよい所を敢えて明るく撮りきる演出プランも当たりに感じました。

さて。
人身売買は当たり前ですが
買い手があって成立し、格差があって需給が満たされ、闇経済を潤す財源となり、ひいては実経済を直撃し、また格差を生み出し、、。
この悪循環のスイッチであることはおぼろげながら認識はしていたつもりなのですが、
その規模、その荒っぽさ、子供たちが置かれた環境のひどさは演出上マイルドにしてあるはずなのに想像を遙かに超えるものでした。

社会には無数の問題があり、
どれもこれも解決は難しく、
仮に一つだけ克服しても、世界は変わらない。

諦観してしまうことは無理のないことかもしれません。
それでも主演俳優がエンドロールで語る、アンクルトムが世界を変えたように、
この映画の存在が現代の奴隷制度を打ち破らないとは誰にも言えないように思います。

少なくとも「我々」は買い手側、無関係ではあり得ないことも心に突き刺さりました。
社会問題に個人としていかにコミットしていくか、という大きなテーマも問われていたように感じます。

けして楽しい作品ではありませんが是非一度観ていただきたい一本になりました。

【評価・つけるとすれば】
4.5です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年10月31日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年77本目】映画「ラストマイル 」観ました。

ブラックフライデー前夜の11月、ビッグイベントにより流通業界が繁忙期を迎えようとする中、
有名なショッピングサイトから配送された段ボールが爆発する事件が起きる。
さらに事件は全国へと拡大し、日本中が混乱に陥る。
巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、
チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と共に、未曽有の事態の収拾に追われる。

ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」などの演出を手掛けた塚原あゆ子監督と、脚本の野木亜紀子が再び組んだサスペンス。
大手ショッピングサイトのセンター長とチームマネージャーが、協力して連続爆破事件の解決にあたる。
満島ひかり、岡田将生らが出演している。

【感想】
復讐すべきは会社か、さらにはその先か。
強欲という罪を問いただす社会派サスペンス。

まず脚本・ストーリー。
ドラマシリーズを全く未視聴でしたが問題なし。
スピンオフ感はおまけ程度、映画そのものとして骨格がしっかりとした、硬質な脚本。
ストーリーそのものにスピード感があり、台詞もエッジが効いている。
展開も時系列もめまぐるしいのに全く混乱しない。
まずは観客を退屈させない、
必ず物語に引きずり込んでやるという野心をしっかり感じられる脚本でした。
すさまじい、、、です。

次に演出、演技。
主軸の岡田将生さん、満島ひかりさんを使い切る。
脇を実力派でしっかり固め、サイドストーリーも緻密に展開。
時々ドラマキャスト出演、少ない尺でも重要なシーンに仕上げる。
などなど、手練れとしかいいようのない演出プラン。
それぞれの役に与えられたニュアンスをきっちり演じきる俳優陣も含め、
すいません、ドラマのスピンオフなんでしょ、映画はファンサービスなんでしょと嘗めていた自分を叱責しました。

さて。
今回の強く感じたのは欲望とは何かということでした。
欲望はどこから罪になってしまうのか。
おそらくは誰かの負荷が犠牲に変わり、飽和して崩壊した、その手前あたりなのだろうとは思うのですが。

その境界線はあまりに曖昧で、スパッと引けるラインがない。

幼い子供がクリスマスにほしがる小さなぬいぐるみ。
事業が当たって夢だったフェラーリ。

この違いが僕にはわからない。

想像力を働かせすぎると何も欲しがれず、
何も考えないと罪深き闇の中。

難しいなと正直感じました。

映画そのものとしては興味深く思いつつも、
犯人の動機や行動基準には共感できない点がありました。

この境目をこれからも見つめていきたいと思いました。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年10月27日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年72本目】映画「ホールド・オーバーズ」観ました。

1970年冬、アメリカ・ボストン近郊にある全寮制のバートン校。
生徒や教師たちがクリスマス休暇を家族と過ごす中、
嫌われ者の堅物教師ポール・ハナム(ポール・ジアマッティ)は複雑な家庭環境のアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)をはじめとする家に帰れない生徒たちの子守役を任される。
一方、食堂の料理長メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)は一人息子をベトナム戦争で亡くし、かつて息子と過ごした学校で年を越そうとしていた。
それぞれに孤独を抱える3人は、2週間の休暇を過ごす中で反発し合いながらも徐々に心を通わせていく。

アレクサンダー・ペイン監督とポール・ジアマッティが組んだヒューマンドラマ。
1970年のアメリカ・ボストン近郊の寄宿学校を舞台に、ほとんどの生徒や教師たちがクリスマス休暇を家族と過ごす中、
それぞれの事情で学校に留まる3人の男女を描く。
嫌われ者の教師をポール、食堂の料理長をダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、複雑な家庭環境の生徒をドミニク・セッサが演じ、
ダヴァインがアカデミー賞助演女優賞を受賞した。

【感想】
クリスマス休暇に降り積もるのは孤独を癒やす友情だった。
誰しもが思い浮かぶ「あの頃」を見事に映し出した傑作。

まずストーリー、脚本。
「寄宿舎モノ」といえば「今を生きる」を想起してしまうし、類似的な面は拭えない、のですが。
主要テーマをベトナム戦争のという痛みを伴う時代背景を織り交ぜて描く手法は的確で明快。
基本的には会話劇なのだけれど語りすぎず、それでいて説明不足もない。
王道ストーリーなのにちゃんと新鮮味のあるウェルメイドな脚本でした。

そして演出、演技。

寄宿舎の風景や校内の様子の撮影が実に雄弁。
台詞無くとも時代背景がしっかり伝わり、演技や台詞回しのフックなっています。
俳優陣の演技もまた見事。
親子関係が上手くいかない、トラウマと供に年齢を重ねる事への焦り、子供を戦争で失った孤独な者の喪失感。
それぞれの痛みをそれぞれの存在が、まなざしが、
しっかりと支え合うようになっていく様子はまるで優しいスープの様な味わい。
雪積もる冬の情景とも相まって心温まる演出でした。

さてさて。
親との相互理解の難しさ、
痛みを抱えたまま生きる苦さ、
大切な人を失ったまま過ぎていく日々を数えるつらさ。

生きていく上でいずれも避けがたく感じます。

それでも、それが何歳であっても
生き様を考える時間はあるし、
生き方を変える時間はある。

旅のように生きるとよく言いますが、
準備をするのに年齢は関係ない。
最初の一歩が踏み出せるかどうかだ。

小さな勇気を優しく後押ししてくれる。
そんな映画だったと思います。
とてもよい映画だったと思います。

::
個人的には寄宿舎体験があるのでやっぱり感慨深いものがありました。
同窓生には皆観てもらいたい!!

【評価・つけるとすれば】
4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年10月11日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年70本目】映画「ベイビーわるきゅーれ・ナイスデイズ」観ました。

高石あかりと伊澤彩織が演じる殺し屋コンビの活躍を描いたガールズアクションシリーズの第3弾。
任務のため宮崎県にやって来た二人が、同じターゲットを狙う一匹狼の殺し屋によって窮地に追い込まれる。
監督を阪元裕吾、アクション監督を園村健介が務める。

プロの殺し屋コンビである杉本ちさと(高石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)は、宮崎県で一つ目のミッションを終わらせ、バカンスを楽しんでいた。
ちさとはその日がまひろの誕生日であることに気付くが、次の任務のために宮崎県庁へ向かう。
しかしそこには、これまでに149人を殺害し、150人目として彼女たちと同じターゲットを狙う殺し屋がいた。

【感想】
まだまだ、まだまだ、もっといける!
ガールズアクションの頂ここにあり!

まずストーリー、脚本。
二人の絶妙に緩い会話劇の要素はそのまま。
プラス俳優陣が増え、トルクが強くなった分も力み無く加速。
宮崎でバカンスついでにミッションをする、という設定も丁度良い塩梅。
味のある嫌味も健在の詞回し含め、完成度の高いストーリー、脚本です。

次に演出、演技。
ちさまひコンビの緩急の付け方は流石の一言。
予想の遙か下を行く生活のだらだら感、予想の遙か上を行く執行のスピード。
さらにさらに池松壮亮さんの登場、ラスボス感は映画に重みをつけています。
アクションの手数、技の多彩さは「軽量級」ならでは。
瞬き不要で楽しめました。

さて。
今回は意外とアクション以外のシーンも作り込まれていて。
キャラクターそれぞれの

苦悩や孤独、
コミニケーションの難しさ、
仕事への思い

これは殺し屋以外の職業、日々にも意外と共通だなと感じさせられたりもしました。

いずれにせよ
相当に練り込まれたアクション映画。
もっと観たい!!と思えるシリーズでした。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2024年10月09日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年69本目】映画「侍タイムスリッパー」観ました。

現代にタイムスリップした武士の姿を描くSF時代劇。
落雷に打たれて現代の時代劇撮影所にタイムスリップした会津藩士が、剣の腕を生かして斬られ役で生計を立てる。
メガホンを取るのは安田淳一。
山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうののほか、峰蘭太郎、紅萬子、福田善晴らが出演する。

幕末の京都。
剣豪として鳴らす会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)は、
ある長州藩士を襲撃するように命じられて刃を交えるが、その瞬間に落雷に打たれて気を失う。
目を覚ますと、新左衛門は現代の時代劇撮影所にいた。
混乱しながら行く先々で騒動を起こし、江戸幕府が140年前に滅んだことを知ってが愕然とした新左衛門はこの時代で生きることを決意する。
自分には剣の腕しかないと、新左衛門は時代劇撮影所の門をたたき、斬られ役として身を立てていく。

【感想】
正直に死ぬか、卑屈に生きるか。
時代が時代を斬る、見事な時代劇!

まずは脚本、ストーリー。
とにもかくにも設定が絶妙!!
タイムスリップものはもう完全に使い古されていて、新しさは難しいと思っていたのですが、、。
そこにあえての時代劇設定。
古さに古さをかぶせるという手法は完全に発明。
これには感服しました。
また、過去=江戸時代と現代=時代劇が廃れゆく日々の対比を台詞の軽妙さも必見。
非常によくできた脚本、ストーリーです。

そして演出、演技。

時代劇シーンの殺陣シーンは実に練り込まれていて、観ていてハラハラするほど本格派。
カメラワークも含め、素晴らしいアクションシーンがてんこ盛りです。
さらには会話劇としてのシーンも見所多く。
少しづつ主人公が現代に溶け込んでいく様子や、
周囲の人々の優しさ溢れる台詞回し。
敢えてなんでしょうが敵役も含め悪人なし設定が生きる演出。
これもまたすばらしい発明でした。

気になったのは、一点だけ。
劇場の調整なのか、それとも原盤の問題なのかわかりませんが、
音が大きい、、。
もしかすると昔の時代劇のアテレコ風にしたかったのかも?しれませんが
これはちょっと聞きにくく、新設とは言いがいかなと思いました。

さて。
僕は会津生まれ。
実直に生きることをまるで使命のように教え込まれるお土地柄。
ならぬものはならぬ、で生きていたつもりでしたが、、、。

いつのまにか

嘘もつくし、
裏もかくし、
手も抜くし、
悪口も言う。

暑ければ日陰を歩き
寒ければ他人を風よけに

とても正直だったり、実直だったりとは遠い有様。

ただ、遠いんですがそれなりに幸せな日々でもあるわけです。

難しいな、、。
生き易さを巡る問いは難しいな。
と感じる次第。

実直さを見失うほどに廃れた気持ちに、
いやいやすてたもんじゃ無いと感じさせてくれる、
現代を優しく斬った時代劇。

映画愛、人間愛に溢れた今年の代表作だと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.4です。

ちなみに
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by alcyon | 映画観た
2024年09月25日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年66本目】映画「ありふれた教室」観ました。

ある中学校で発生した盗難事件が予想もつかない事態を引き起こし、学内の秩序が崩壊していくサスペンス。
新任の若手教師が盗難の嫌疑をかけられた生徒を守ろうとするも、生徒や同僚らとの対立を招いて追い詰められていく。
イルケル・チャタクがメガホンを取り、レオニー・ベネシュが主人公を演じる。
第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされたほか、数々の映画賞で高い評価を得た。

赴任先の中学校で1年生のクラスを受け持つことになった若手教師・カーラ(レオニー・ベネシュ)。
同僚や生徒の信頼を得ていく中、校内で盗難事件が続発し、彼女の教え子が犯人として疑われる。
校長らの調査に反発したカーラは独自に犯人捜しを始め、ひそかに職員室の様子を撮影した映像に、ある人物の犯行の瞬間を見つける。
しかし盗難事件を巡る彼女や学校側の対応はうわさとなって広まり、
保護者の批判や生徒の反発、同僚教師との対立を招き、カーラは窮地に追い込まれる。

【感想】
良心、使命感、理性。
どれもがありふれている「秩序のあやうさ」を見事にパッケージングした快作。

まずストーリー、脚本。
小さな、ありふれている、ただし見逃してはいられない「事件」。
この着想が実に白眉。
落としたインクが不規則に水面を汚してゆくように、じわりじわりと進行する。
徐々にテンポを上げて最後、加速の限界を振り切るような展開。
よくある、それこそ「ありふれた」話の領域をしっかり越える脚本でした。

そして演出、演技。
これもまた絶妙。
大人の事情を子供っぽく、子供の小狡さを大人っぽく。
これもまた「ありふれてない」、
いったい何を観ているのか、ざらついた違和感を感じました。
俳優陣、子役陣も躍動。
テンションの上げ方、不穏な空気のだし加減等々、精密な演技。
この精密さがラストにかけての濃密さを支えきっています。

さて。
小さな、
それでいて目をつぶることはできない事件、
言葉を換えれば「悪の種」はこの社会で生きていれば毎日のように出会ってしまう。
その種が発芽し根を生やせばあっという間に悪意の根は伸び、事態は大きな花を咲かせてしまう。

どこで間違ったのか、
適切な方法は無かったのか。

振り返った所で後の祭り。

破綻後の処理に右往左往しているのが昨日で今日で明日、
つまりは日々の生活なのだと思い知らされる。

行き詰まった社会正義、秩序の行方を見事に捉えた秀作だったと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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2024年09月24日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年65本目】映画「愛に乱暴」観ました。

吉田修一の小説「愛に乱暴」を実写化したサスペンスドラマ。
威圧感がある義母や自分に無関心な夫への不満を振り払うかのように丁寧な暮らしを送ることに固執する女性に、不穏な事態が次々と降り掛かる。
江口のりこ、小泉孝太郎、馬場ふみかのほか、風吹ジュン、水間ロン、青木柚らが出演する。

夫の実家の敷地内にある離れで暮らす桃子(江口のりこ)は、センスのある装い、手の込んだ献立などにこだわる丁寧な暮らしを心がけていた。
それは、何かと小さなストレスをぶつけてくる義母や自分に無関心な夫に対する不満の裏返しでもあった。
そんな中、近隣のゴミ捨て場での不審火、愛猫の失踪、夫の不倫を匂わせるアカウントなど、桃子の周囲で不穏な出来事が続発する。

【感想】
丁寧で規則正しい生活を支えているのは、闇深き感情なのか、、、。
人間の性根を暴き出す怪作サスペンス。

まずストーリー、脚本。

主要キャストのもつキャラクターイメージに合わせた台詞廻し。
生活空間に描写を固定する。
会話劇としてはやや多めの台詞量なれど、冗長過ぎず。
といった感じで、こなれた脚本、言葉が入って気易い安心設計です。

次に演出演技。
江口のりこさん、感情のオンとオフをきっちりつけながら物語を牽引。
これは圧巻でした。
脇を固める俳優陣もきっちりしっかり、そつの無い演技。
物語自体もテーマ通り、
ストレスフルなシーンを丁寧に積み重ね、飽和させる。
これも見事。

ただ
圧巻で見事、なんですが。
どのシーンもどこかで見たことのあるシーンに観えてしまう。。。
どの台詞も聞いたことがある。。。
俳優陣に当て書きをしたような「ぴったりさ」が逆にこぢんまりした印象になってしまったように感じます。

さて。
生活の中でストレスレスに生きていくのはもはや不可避。
いつだってざらついたような感情の中暮らしている。
どこに導火線があるのかわからないし、
いつ沸点に達するのかも知らない。
すさんだ心をなんとかやり過ごして、生きていくので精一杯。

「整理された生活」は闇深き性根に当たる陽光なのかと思うと、薄ら寒くなりました。

この映画、やっぱりサスペンスなのだと思います。

【評価・つけるとすれば】
3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年09月17日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年64本目】映画「きみの色」観ました。

山田尚子が監督を務めた長編アニメーション。
不思議な能力を持つ少女が、3人でバンドを組んで過ごす日々を映し出す。
吉田玲子が脚本を担当し、牛尾憲輔が音楽を手掛けている。

ミッションスクールに通う高校生のトツ子は、幼いころから人が色として見えている。
ある日、古書店でとても美しい色を持つ美少女、
そして音楽好きの少年と出会ったトツ子は、彼らとバンドを組む。

【感想】
「誰か」と「何か」を全力で。大人になってしまった僕らに贈る純度高めのジュブナイル。

まずストーリー、脚本。
ややオールドスクールにすら感じる舞台設定。
冷たい感情を抑え、飲み頃の紅茶のような温度感の言葉を紡ぐ、振り幅をあえて小さくした脚本。
この「狭さ」を巧みに活かし、台詞の一つ一つを粒立たせる。
台詞の数も多くも少なくもなく、自然。
素晴らしい脚本、こういうことだと感じさせてくれます。

そして演出、演技。

まずは見事な作画。
「人が色で見える」という設定自体相当難易度が高いと思うのですが、まさに「観える」。
そしてそしてどのシーンも美しく、優しい。
観客の気持ちを柔らかにすることに徹底しています。

次に演技。
若者が「好き」に触れたときの純粋さをこれまた見事に表現。
確実に、あの頃に、引き戻されます。

ただ、

高校生のもつ大人と子供の中間のような危うさだったり、
みえない将来への葛藤だったり、

は、
おそらく意図的に外してあり、
柔らかめのうどんを噛んだような、少し物足りなく感じました。

さて。
思えばあの日。

例えば部活、
例えば勉強
例えば恋

夢中になって
全力で好きの回路を全開にして
本気になってることにすら気づかず、
転ぶことも恐れず、走りまくっていた
あの日。

忘れていたわけではないが
薄れていくし、
大人という単語がボリュームを下げる、
それがこの日。

諦観、冷笑になれてしまうことを成長と勘違いしないか。
強い問い掛けを受けたような気がします。

【評価・つけるとすれば】
3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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