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アルシオン通信

Alcyon Blog

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2023年12月28日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年89本目】映画「首」観ました。

【解説・あらすじ】
北野武監督が自身の小説を原作に、本能寺の変を描く時代劇。
北野監督が脚本などのほか羽柴秀吉役も務め、天下取りを狙う織田信長、徳川家康、さらに明智光秀ら戦国武将たちの野望を映し出す。
西島秀俊、加瀬亮のほか、中村獅童、浅野忠信、大森南朋、遠藤憲一らがキャストに名を連ねる。

天下統一を目指す織田信長(加瀬亮)が毛利軍、武田軍、上杉軍、さらには京都の寺社勢力と激戦を展開する中、
彼の家臣である荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こして姿を消す。
信長は明智光秀(西島秀俊)、羽柴秀吉(ビートたけし)ら家臣に村重の捜索を命じるが、
天下取りをひそかに狙う秀吉は、弟の羽柴秀長(大森南朋)、黒田官兵衛(浅野忠信)らと策を練る。

【感想】
これぞ北野武!いや、ビートたけしか?もしかすると集大成的な歴史大作!

まずストーリーとか脚本とか。
歴史物、しかも誰もが知っている「本能寺の変」。
いかにオリジナルの解釈を加えるか、勝負所でしたが、ここは流石の北野流。
しっかりと「ああ、そうだったかも!」と思わせる説得力。
台詞の一つ一つも粒たっていて一定の安定感があります。

そして演出とか演技とか。

まず前半から中盤にかけてです。

展開のスピード感。
絵作りの質量の大きさ、リアル感。
俳優一人一人のキャラクターの作り込み。
外れなし、外しなし、隙のない陣容でした。

一転して後半。

同じネタの擦りの多さ。
画面から退場時のキャラの単調さ。
なにより、「ビートたけし」のなんとも言いがたい既視感。
緊張感が緩み、前半とは別の映画を見ているかのよう。。

さて。
天下取りたいとか思ったことはどのジャンルにおいても一度も考えたことないのですが。
それでもなんとなくは向上心の行く末、トッ・プオブ・トップの狂気に触れると、
やはり影響されて、「何かが崩れる」かのような体験はしたことがあり。
一定以上の恐怖は快感に変わるのだと思うと背筋が凍ります。
これって形変われば現在形、自分を見失わないように、身の程を知るようにと戒めに感じる一本ではありました。

【評価・つけるとすれば】

3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2023年11月28日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年84本目】映画「ヴィレッジ」観ました。

【解説・あらすじ】

藤井道人監督が、ある集落を舞台に環境問題や限界集落、若者の貧困、格差といった社会の闇を描いたサスペンス。
美しい自然と神秘的な薪能が魅力的な村を舞台に、ゴミ処理施設で働く青年の人生が、幼なじみが東京から戻ったことをきっかけに変化していく。
主人公の青年を横浜流星が演じ、黒木華や中村獅童、古田新太などが共演する。

夜霧が幻想的な集落・霞門村に暮らす片山優(横浜流星)は、美しい村の山に建設された巨大なゴミの最終処分場で働いていた。
母の君枝(西田尚美)の作った借金の返済に奔走する一方、職場の作業員に目をつけられた優は、浮かばれない日々を過ごしていた。
しかし、幼なじみの中井美咲(黒木華)が東京から戻ったことから、優の人生が変わっていく。

【感想】
自然豊か、美しい田舎で子供を育てたい方必見!「身に覚えのある」パラレル・ストーリー!

まずストーリー。
地方あるある的な、この手の話はよく見かけるストーリーになりがち。
それを幻想的なまでの自然の美しさ。鬱屈し、閉鎖的な田舎。
対比の構図を「町」ではなく「村」まで落とし込んだアイデアは秀逸。
不気味でいびつな構造をきちり濃縮しています。

そして演出、演技。
横浜流星さんをはじめ、力量のある俳優陣をきっちり配置。
演出も手堅く、そつがない印象です。
絵作りもこれまた手堅い。
ある水準まではきっちり堪能できる設計です。

ただ、、

・ストーリー的にややご都合優先の面がある。もっと振り切れたはず。
・鬱屈さや閉鎖性の息苦しさ、窒息感が足りてない。
・「美しい田舎」の絵作りはもっとできたはず。

と感じる次第。
結果、役者陣がフルパワーで躍動していないように見えました。

さて。
田舎に住んでいるとどうしても相似形に感じる問題は多く含まれていて。

たとえば地方自治とはいうけれど、行政はついて行けるのか。
たとえば産業を誘致したとして、運用できるだけの人材育成ができるのか。
たとえば魅力あるまちづくり、魅力って何?とか。

都会にあるものは田舎にはない。
都会にないものは田舎にはもっとない。

格差だったり断絶だったりは当たり前にあり、
美しさだけではトレードオフにならないのが現実。

最適解が見つからない現在社会の「原罪」をあぶりだす作品で会ったとは思います。

【評価・つけるとすれば】

3.8です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2023年11月26日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年79本目】映画「愛にイナズマ」観ました。

【解説・あらすじ】
松岡茉優と窪田正孝を主演に、石井裕也がメガホンを取った人間ドラマ。
念願の映画監督デビューを目前に大切な夢を奪われた女性が、疎遠だった家族の力を借りて理不尽な社会に立ち向かう。
ヒロインの反撃に巻き込まれる家族を池松壮亮、若葉竜也、佐藤浩市が演じるほか、MEGUMI、三浦貴大らが共演する。

26歳の折村花子(松岡茉優)は幼少時から夢見ていた映画監督デビューを控える中、
空気は読めないが魅力的な男性・舘正夫(窪田正孝)と運命的な出会いを果たす。
人生に明るい兆しが見え始めた矢先、彼女は無責任なプロデューサー(MEGUMI)にだまされ、報酬をもらえないまま企画を奪われる。
卑劣な仕打ちに打ちのめされる花子だったが、正夫に励まされ、大切な夢を奪った理不尽な社会への反撃を誓う。
そして正夫と共に、長らく疎遠だった父(佐藤浩市)と兄たち(池松壮亮、若葉竜也)のもとを訪れる。

【感想】
「演技力日本代表」が冷淡な世に「愛と真実」を問う、渾身の会話劇!

まずストーリー。
まずは「恋愛」を皮切りに隣人愛、兄弟愛、親子愛、、と様々な愛の形を同心円的に膨らましていく。
手法としてはよくあるあの手、ではあるのですが。
会話、台詞の一つ一つが丁寧で、クッキリしていて、必ず回収される。
同心円的、その拡大するスピードがきっちり観客の予想を超えていく。
さまざまモチーフをちりばめながら、一つ一つの意味をぼやかさない。
これだけの役者陣、陣容なら必ず成し遂げられると信じ切った。
チーム石井裕也の真骨頂を感じることができます。

そして演出、演技。
まずはそのグレートすぎる俳優陣!
よくぞ集結したと感じるばかり。

松岡茉優さんが感情表現豊か、切れ味鋭い台詞回しでリードをとる。
窪田正孝さんがオフビートで骨格を支える。
池松壮亮さんと若葉竜也さんが感情の低いところから高いところまでメロディーを回す。
佐藤浩市さんは若い俳優陣をしっかり支えつつ、時に炸裂する。

まるで、バンドが再結成したときのような、熟練と新鮮を併せ持つ演技合戦には魅了されっぱなし。
これだけでも必見です。
脇を固める俳優陣、MEGIMIさん、三浦さん、仲野太賀さん、中野秀雄さん(仲野太賀さん実父。サービス台詞も泣かせる!!)
にもそれぞれ見せ場あり、個性豊か、色とりどりな印象も楽しめます。

さて。
今作のテーマは紛れもなく「愛」と「真実」。
日々生活に塗れてると、嘘や不誠実に慣れきって、冷笑気味に生きていた方が楽。

「日常ってそんなもんでしょ。」
確かにそうだとは思うのですが、それでもやはり
「いやいや、ちがうでしょう」
と思う瞬間だってこれもまた数多に訪れる。

今作では「赤」と「イナズマ」がメタになっていますが、
僕は
「赤=血の色=人間=愛」
「イナズマ=一瞬=真実を照らし出す」
と解釈しました。

そんな一瞬じゃなくて、もっとじっくり味わいたい。
そんな気持ちにさせてくれる濃密な物語。

よくぞ、世に出してくれたと感謝の気持ちさえ感じる一本でした。

【評価・つけるとすれば】

4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年11月19日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年78本目】映画「SISU/シス 不死身の男」観ました。

【解説・あらすじ】
第2次世界大戦末期のフィンランドを舞台に、一人の老兵がナチスドイツの戦車隊と激闘を繰り広げるバイオレンスアクション。
監督を務めたのはヤルマリ・ヘランダー。
ヨルマ・トンミラが不死身の老兵を演じ、
アクセル・ヘニー、ジャック・ドゥーランのほか、ミモサ・ヴィッラモ、オンニ・トンミラらが出演する。

第2次世界大戦末期の1944年、ナチスドイツに国土を焼き払われたフィンランド。
金塊を掘り当てた老兵アアタミ・コルピ(ヨルマ・トンミラ)はいてつく荒野を旅する途中、
ブルーノ・ヘルドルフ中尉(アクセル・ヘニー)率いるナチスドイツの戦車隊に遭遇し、金塊も命も奪われそうになる。
かつて祖国に侵攻したソ連兵を撃退した伝説の兵士であるアアタミは、
持っていた1本のツルハシと不屈の精神“SISU”を武器に、次々と敵を血祭りに上げていく。

【感想】
合理性?それって大事?何もかも忘れて「不死身」に酔いしれる90分!!

まずストーリー。
第二次世界大戦末期の北欧、フィンランドが舞台。
雄大すぎ、荒涼すぎの大自然をバックに、完全悪のナチス相手に老兵が大暴れ。
「潔い」とはまさにこのこと。
余計な心理描写や台詞を完全排除したシンプルすぎる脚本です。

そして演出。
ツルハシ一本で始まったナチス退治はどんどんスケールアップ!
まあ強い!
ほんとに死なない!
不屈の精神だけでは説明のつかない豪腕ぶりにはただただ感服するばかり。。
激しい描写もありますが、それもまた作風にジャストミート!
ムダというムダを削ぎ落とし、なんだったら観客の想像力をも切り捨て、アクションの可能性をぶち上げる!!
すげーな、、としか言い様がありません。。

さて。
こういう映画は合理性とか信憑性、リアルとか史実とかを追うのはホント野暮。
あんなにゴロゴロ金塊出てくるの、とか、金が軽々運ばれるのなーぜなーぜ、とかホント野暮。
時には頭を軽くして自分にはない暴力の波にのまれる、のも悪くはないなと感じる時間。

大変、悪くなかった!です(*^_^*)

【評価・つけるとすれば】
3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年11月17日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年76本目】映画「北極百貨店のコンシェルジュさん」観ました。

【解説・あらすじ】
西村ツチカの文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したコミックを原作に、Production I.G がアニメーション制作を手掛けたアニメ。
動物を顧客とする百貨店で、新人コンシェルジュが接客に奮闘する。
監督を板津匡覧、脚本を大島里美が担当する。

訪れる客がすべて動物という不思議な百貨店「北極百貨店」で、コンシェルジュとして働き始めた秋乃。
長年連れ添ってきた妻を喜ばせたいというワライフクロウや、父親へのプレゼントを選ぶウミベミンク、
恋人へのプロポーズに悩むニホンオオカミなど、秋乃は個性的な客たちの願いに応じるべく悪戦苦闘する。

【感想】
サービスに携わるすべての人に、希望と勇気を!前を向く力を与えてくれる至極のチアアップムービー!!!!

まずストーリー。
「新人コンシェルジュのドタバタ奮闘コメディー」で、複数のエピソードで構成されています。
全体の流れに意外性はなく、ストーリーも予想外のことはそんなに起こらない。
それでも一つ一つのエピソードが繊細で粒立っていて、ぐっと引き込まれます。
印象的で心に残る台詞の数々も好印象。
シンプルなフォーマットにこだわって伝えたいことに全振りした勇気と覚悟を感じます。

そして演出演技。
アニメーションでしかできないこと、にちゃんとコミット。
細かなキャラクター表現、
例えば動物の性質をそのまま性格として表現したり、
大きさの差を活用して視点や視線の動きでダイナミックな構図をとるところ、素晴らしく上手!。
シンプルさと派手さがしっかりかみ合った絵作りで好感度高かったです。

さて。
お話の舞台は「百貨店」。
しかも「絶滅種」専用。
ネットで何でも買えちゃう世の中、伝え聞くにこの業種の生き残りはいよいよ苛烈、。
それでもあの大きな建物の、

美しい雰囲気、
華やかな匂い、
きらびやかなざわめき

に心動かされ、足が向かう。

それは人の存在がなせる技だと僕は思うのです。

コンシェルジュの存在は僕たちサービスマンにとって頂点。
頂点の悩みやつらさは僕らの痛み。
頂点の喜びは僕らの喜び。

いろんな業界がオワコンと呼ばれ、AIに押され、生き残りに必死な今。
それでも人が存在し続ける理由がここにある。

強く信じることができる、サービスマン必見、必修の映画だったと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.1です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
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☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年11月12日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年75本目】映画「グリーンバレット」観ました。

『ベイビーわるきゅーれ』などの阪元裕吾が監督を務めた『最強殺し屋伝説国岡[完全版]』の続編で、ミスマガジン2021の6人が出演するアクション。
プロの殺し屋を志す女性たちが、京都最強の殺し屋の指導のもと訓練合宿で競い合う。
出演はミスマガジン2021の和泉芳怜や山岡雅弥、天野ききなどのほか、最強の殺し屋を演じる伊能昌幸、ミスマガジン2018の沢口愛華など。

山田ふみか(和泉芳怜)らプロの殺し屋を目指す6人の女性たちは、京都最強の殺し屋・国岡(伊能昌幸)がインストラクターを務める訓練合宿に参加する。
しかし、彼女たちは個性をむき出しにし、国岡もコントロールできなくなる。
そして、ある事件が起こったことから、凶暴な殺し屋集団「フォックスハンター」が合宿に送り込まれる。

【感想】
アクション映画の「シン・標準点」。緊張と緩和が生み出すのは笑いだけじゃない!!

まずストーリー、脚本。
監督の過去作の設定をうまく引用。
ファンならたまらない、初めてなら新鮮に、という難題をきっちりクリア。
オリジナル脚本なので、当たり前なんだけれど劇画的なのに元ネタが見当たらない。
アクションありきの映画ではあるがストーリーの基本的な骨格がきっちりしているのが特徴です。

そして演出、演技。

ソファーでゴロゴロからアクセル全開のような。
昼寝から朝活のような。
ユルユルからのキレッキレ、
とにかくメリハリ、緊張と弛緩を徹底的に繰り返し。
くすくす笑えてしまう一方で、アクションの凄みが際立つ。
もはやこれは阪元監督の作家性まで昇華、手練れ、熟練の域。
肝心のアクションも「見慣れた感」はまるでなし。
まだあったのか!といわんばかりのバラエティの多さはこれまた流石。
見応え十二分です。
一方、キャスト陣はおそらく初めての演技のかたも見受けられ。。
ぎりぎり成立している、といわざる得ないです。。
それでも伊能さんの演技は回を増すごとに出色。
今後は幅を持たせた他作でのキャスティングも期待できそうと感じました。

さて。
アクション映画、特にガンアクションものは、見飽きちゃうことが多いのですが、、。
阪元監督作は飽きない。
これは常に新しい技を探す、求道的な姿勢に共感できるからのように思います。
「突き詰めても突き詰めて、まだ尚まだ先を見つめる」
みなわわなくちゃ、と素直に感じることができた作品でした。

【評価・つけるとすれば】
3.8です。

ちなみに
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by alcyon | 映画観た
2023年11月10日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年74本目】映画「月」観ました。

辺見庸の小説「月」を実写化したドラマ。
重度障害者施設で働く元作家の女性が、同僚の男性が抱く正義感や使命感が思わぬ形で変容していく様子を目の当たりにする。
メガホンを取るのは石井裕也。
宮沢りえ、磯村勇斗、長井恵里のほか、高畑淳子、二階堂ふみ、オダギリジョーらが出演する。

堂島洋子(宮沢りえ)は、作家として成功を収めていたがスランプに陥ったことを機に重度障害者施設で働き出す。
陽子(二階堂ふみ)、さとくん(磯村勇斗)といった同僚と共に入所者たちの対応にあたる洋子は、自分と生年月日が一緒の入居者きーちゃんと親身になっていく。
そんな中、ほかの職員による入所者への冷淡な扱いや暴力を知ったさとくんが、自身の抱く正義感や使命感を増幅させるあまりに、ある行動に走る。

【感想】
「本当のところ、どう思ってる?。」人間の業、その罪をあぶりだす問題作!

まず脚本、ストーリー。
ある事件がモチーフなのは明らか。
命の重さについて幾つかの視点で鋭く抉っていく。
モノローグを多用し、執拗に迫るのは監督の執念を感じる作り。
覚悟を感じる硬質なストーリーです。

次に演出、演技。

観客の思考、モラルを「ある混乱」に導くことがおそらくは狙いで、まずは成功。
暗い、ほぼ真っ暗な夜シーンと薄曇りな日中の2パターンで構成される絵作りも作品の方向性をしっかり示している。

俳優陣も好演。
宮沢りえさん、オダギリジョーさんを配役できた時点で作品の質の担保はまず成功。
磯村勇斗さんは演技の幅がより広がっていて、もう日本映画には欠かせない存在。
見応えは十分です。

しかしながら、、。

脚本は言葉数が多く、過剰に感じる。脚本としては正直褒められない。
前半の絵作り、ちょっと作品の質とは違う、ノイズに感じる。
演出、演技も一部、仰々しい。リアリティトの乖離はあってもいいが、ありすぎても見づらい。
そもそも現実の介護士へのリスペクト、これでいいのかと感じざる得ない。

など問題点も感じました。

さて。
やはり考えるのは、思い出すのだすのはあの事件。
1ミリたりとも心を寄せることはできないが、でも忘れている、目を背けていのもまた事実。
良心、モラル、道徳、倫理。
言葉は様々あるけれど、どの枠を以てしても上滑りしてしまう現実の醜さ。
他人事ではない、負のループ。
自分を晒される映画だったとは思います。

【評価・つけるとすれば】
3.7です。

ちなみに
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2023年11月08日

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【観た/2023年73本目】映画「まなみ100%」観ました。

【解説・あらすじ】
平凡さを嫌う変わり者の青年と、彼が思いを寄せる女性との10年にわたる日々をつづった青春ドラマ。
川北ゆめきがメガホンを取り、川北監督の実体験を基にいまおかしんじが脚本を執筆。
青木柚が主人公、中村守里がヒロインを演じるほか、伊藤万理華、宮崎優、新谷姫加、菊地姫奈らが出演する。

自分勝手で少々変わり者の“ボク”(青木柚)は、高校で同じ器械体操部に所属していたまなみちゃん(中村守里)のことが大好きだった。
平凡さを嫌うボクとは対照的に、彼女は平凡そのものだったが、高校時代からその後10年を経て多くの出会いと別れを経験してもなお、
まなみちゃんに対する思いは変わらず、その理由は今も分からなかった。

【感想】
甘くて苦い。
青春の始まりから終わりまでがきっちり詰まった本物のジュブナイル!

まず脚本。
これはストレートな青春モノの文法をきっちり。
男女の出会い、やりとりをきっちりとしたト書きで。
気持ちの揺らぎを繊細な台詞回しで。
的確でケレン味のないストーリーテリングで推進力をしっかり確保。
話のわかりやすさも同時に担保しています。

そして演出、演技。
とにもかくにも瑞瑞しい!
シークエンスとシークエンスのつながりをしっかり確保しつつ。
みずみずしさ、初々しさ。
甘酸っぱさ、成長痛の苦み。
といった要素をしっかりつなげていく演出は好感度高めでした。

俳優陣も率直に言って好き、好きしかない!
主軸の青木さん、中村さんの明暗もしっかり入れ込んだ演技。
オラキヲさんをはじめ脇を固める俳優陣の気持ちの入り方。
伊藤さん、今後の日本映画界をしょっていくだろう新鋭のきらめき。
好き。好きしかなかったです!!

ラストにかけての展開は若干既視感があり、オマージュ的ではあるものの、
エンドロールでのあの「一言」はもう反則。。。
うわっと感情が溢れ、目汗が止まらず、、、。

さて。
いつの間にか年齢を重ね、いつのまにか若者ではなくなった今。
振り返ればどこかで青春は始まっていたはずで、必ず終わりがあったはず。
それは恋で語る人もいれば、夢で話す人もいるでしょう。
あるいは友情の人も。

僕はどちらだったろうか。

ついつい、
好きだった人を、
叶わなかった夢を、
会っていない友人を。

思い出させてくれたこの映画、
感謝の言葉を探したいと思いました。

【評価・つけるとすれば】
4.2です。

ちなみに
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2023年11月06日

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【観た/2023年72本目】映画「福田村事件」観ました。

【解説・あらすじ】

関東大震災直後に千葉県福田村で起きた実際の虐殺事件を題材に森達也が監督を務めたドラマ。
地震後の混乱の中、9人の行商団員が殺害された悲劇に至る過程を描く。
脚本は佐伯俊道、井上淳一、荒井晴彦が担当。
井浦新、田中麗奈のほか、永山瑛太、東出昌大、豊原功補、柄本明らが出演する。

1923年春、澤田智一(井浦新)は妻の静子(田中麗奈)と共に、日本統治下の朝鮮・京城から千葉県福田村に帰郷する。
彼は日本軍が同地で犯した蛮行を目撃していたが、静子にはそのことを話さずにいた。
そのころ、ある行商団一行15人が香川から関東を目指して出発していた。
行商団が利根川の渡し場に向かっていた9月6日、地元の人とのささいな口論が、
その5日前に発生した関東大震災で大混乱に陥っていた村民たちを刺激し、さまざまなデマが飛び交う中で悲劇へと発展していく。

【感想】
監督・森達也の確信犯的作家性が「歴史」を借りて「今」を断罪!

まず、ストーリー、脚本など。
前半、決して少なくはないキャストの背景を時間をかけてしっかり書き込み。
キャラクターの書き分けは意図的にクッキリさせているのがよくわかります。
一転して後半、怒濤の回収。
スピード感もトルクも十二分。
フリもタメも効いた練り込まれた脚本でした。

そして演出、演技。
史実をフォーマットに要所要所あえて見やすく、理解しやすいく、がおそらくは演出方針。
登場人物は皆愚かで、それでいて一様ではないのに、そろってしまうと結局は衆愚と化す。
設計通りにダイレクトに伝わることを最優先したことはこの作品のメッセージ性を保つ上で殊更重要な要素。
いろんなことをしたくなる、たとえば愚かさ、こざかしさ、優しさなどをキャラクター一人一人に混在させる方法もあったはず。
よく我慢した、覚悟を感じます。

俳優陣も控えめに言っても大熱演。
瑛太さんはもはや日本映画には欠かせない。
井浦新さんはこの役、ほかに誰がやるというのだろう。
田中麗奈さんの佇まい、コムアイさんのか細さ、、。
ちょっとこれは、、と思う方がいないわけではありませんが、フィット感抜群のキャスティング。
またそれぞれが演出を超えてやる、監督の期待以上にやりきるという気概を感じる演技。
この映画に出る意味をかみしめているのがよくわかる。
凄みを感じざる得ない演技合戦が堪能できます。

さて。
この映画を見終わった後、当時のことを調べたり、水平社宣言を読み直したりしたのですが、、。
どうしても考えてしまうのは「今」のことでした。

今でもなくならないヘイトスピーチ。
移民政策の不寛容。
難民への無理解。
ひとたび戦争が起こっても、やはりどこかで他人事、
失われる人の命への薄い感情。。

昔のこと、村社会のこと、あの頃の「空気」のせいにしてしまえるほど、
僕は、社会は正しく成熟してきたのか。

「断罪されている。」

そう感じたのは、監督の意図通りだったのだと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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☆5・・・・生涯の名作!です

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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン

by alcyon | 映画観た
2023年11月01日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年71本目】映画「ダンサーインPARIS」観ました。

【解説・あらすじ】
セドリック・クラピッシュ監督が、けがで夢を絶たれたダンサーの再起を描く人間ドラマ。
バレエ一筋の日々を送ってきたダンサーがコンテンポラリーダンスとの出会いを通じ、新たな人生を切り開こうとする。
パリ・オペラ座のバレエダンサー、マリオン・バルボーが主人公を演じ、
振付家など幅広く活動するホフェッシュ・シェクターが本人役で出演するほか、
ダンサーのメディ・バキ、ドゥニ・ポダリデス、ミュリエル・ロバン、ピオ・マルマイらが共演する。

幼いころからバレエ一筋で、パリ・オペラ座バレエでエトワールを目指すエリーズ(マリオン・バルボー)。
しかし夢の実現を目前に、恋人の裏切りに動揺した彼女はステージで足首を負傷し、医師に踊れなくなる可能性もあることを告げられる。
失意の中、新たな生き方を模索する彼女はアルバイトで訪れたブルターニュで、あるダンスカンパニーと出会う。
従来のバレエと異なる独創的なコンテンポラリーダンスが生まれる過程を目の当たりにし、
誘われて練習に参加したエリーズは、未知のダンスを踊る喜びと新たな自分を見いだす。

【感想】
リアリティにこだわり抜いた圧巻のダンス!

まずストーリー。

アーティストでありアスリートとしてのダンサー。
肉体的な優美さと力強さ、
精神的な自身と葛藤、
若さの持つ危うさ、
ダンサーとしてはベテランの成熟感、
といった要素をバランスよく配置。
そこに恋愛要素や家族の愛情といったものをきっちりと織り込む、
実にウェルメイドなストーリー展開です。

次に演出、演技。
パリとブルターニュという都市と田園の情景を活かし切るロケーションの巧みさ。
なにげに天候の変化も上手に活用。このあたりは本当にうまいです。
ダンスシーンのリアリティは圧倒的。
こだわり抜いたことがダイレクトに伝わり、それだけでも眼福。
役者陣も研ぎ澄まされた演技。
台詞回しもスムーズで、ダンサー感と俳優感を両立。
全体的に隙のない、きっちりした作風です。

さて。
かくも美しいダンスの連続で感じたことはやはり「才能」についてでした。
もちろん天賦の何かがなければ始まらないのでしょうけれど、それだけではきっと足りない。

例えば情熱。
もちろん努力。

そのいずれもが狂気的な領域で掛け合わされたとき「何か」がはじける。

これは若さの特権ではない。
誰でもいつでもどこででもなのではなかろうか。

そんなことを強く感じさせてくれる作品でした。

【評価・つけるとすれば】
3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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