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アルシオン通信

Alcyon Blog

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2022年10月26日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年63本目】映画「女子高生に殺されたい」観ました。

【解説・あらすじ】

女子高生に殺されたいという願いをかなえるため、高校教師になった男・東山春人(田中圭)。
赴任先の学校で人気教師として日々過ごす一方で、これまで9年間をかけて理想的な殺され方のための完璧な計画を練り上げてきた。
理想とする「完全犯罪であること」「全力で殺されること」を目標に、平穏な学園内で彼の自分殺害計画は進行していく。

古屋兎丸のコミックを実写映画化。
女子高生に殺されたいという願望を持つ高校教師による、理想的な殺され方のための9年をかけた犯罪計画を描く。
監督・脚本は城定秀夫、企画・プロデュースは谷戸豊が担当。
自らのゆがんだ欲望をかなえるための計画に突き進む主人公を田中圭が演じる。

【感想】
完璧に構築された筋書きによる、ひねりの効いたサイコスリラー!

まず脚本。
オートアサシノフィア(殺されたいという欲求を持つ異常性癖者)という、かなりパンチの効いた設定。
更にただ殺されるだけではダメで、5つの条件をクリアせねばならないという複雑系。
その上一体「誰が殺す」のかという謎解き要素を加えた立体的で難易度マックスのはずなんですが。
そこはさすがの城定クオリティ、あっさりと諸条件をクリアしています。

そして演出、演技。
田中圭はこの手のサイコな演技、よくハマることが再確認。狂気と凡庸、完璧と破錠のバランスに上手い。
南沙良、河合優実といった若手成長株、細田佳央太といったこれまた若き実力俳優も高校生役をやる、ギリギリの旬。
きっちり17歳に見えてくるあたりも演技演出共にさすがです。

難点は、

・脚本がスッキリしすぎていて起伏が感じられず、かえって頭に入ってこない。いつの間にかお話が通り過ぎた感じ。
・劇中劇の扱いが雑。この手の作品はこういったディテールが品質を変えると感じます。
・やたら録音の質が変わる。よくとれてるところとそうでもないところが散在し、ちょっと集中しづらい。

といったところです。

それにつけても城定監督のケレン味のない演出と若手有望株のアンサンブルは眼福。
それほど怖いシーンもないのでサスペンス入門としても良いのではないのでしょうか。

【価点・つけるとしたら】
☆3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2022年10月24日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年60本目】映画「渇きと偽り」観ました。

【解説・あらすじ】

自殺した旧友ルークの葬儀に参列するため、20年ぶりに帰郷した連邦警察官のアーロン・フォーク(エリック・バナ)。
命を断つ前に妻と子供を殺したとされるルークの行動を調べるフォークは、
数十年前に起きた当時17歳の少女エリー・ディーコンの死亡事件との関連を疑う。
フォークは、亡きルークに掛けられた妻子殺しの疑惑と、自身の過去と絡むうえに未解決のままであったエリー死亡の真相を追う。

ジェイン・ハーパーの小説を実写化したサスペンスミステリー。
旧友の葬儀に出ようと故郷に戻った警察官が、そこで起きた過去と現在の事件を調べていく。
監督はロバート・コノリー。
エリック・バナ、ジュネヴィーヴ・オライリー、キーア・オドネルのほか、ジョン・ポルソンらが出演する。

【感想】
質実剛健、プロットの回収もダイナミック。
トリッキーさを廃した見応え十分なサスペンス。

まずストーリー。
2つの時系列、2つの事件を同時に扱っていますが、情報が混雑することのないスッキリ設計。
またストーリーの「混ぜ方」を面ではなく点、
交差させる程度に抑えているので観客の視点がいい塩梅にミスリードされていくのもこれまた「いい感じ」。
自然環境の活かし方、乾いた大地の意味も含めよく練り込まれた脚本です。

次に演出や演技。
20年の年月、その中で変わるもの、変わらないものをしっかり演じ分ける演出、演技。
特に「大人としての振る舞い」と「若者の無邪気さ」のバランスを、若者編、大人編にも取り込んだのはちょっとした発明。
結構厳しい演技プランのはずですが、しっかりと演じきっているのは皆様お見事です。
最後の最後、その結末には正直ブルブルと震えました。比喩ではなく震えました。。

敷いて難点を上げるとすれば、

・1つ目の事件のフラッグの立ち方がありがち。
・自然環境の変化と人々の変容の描写がゆるい。もっとコントラストを付けても良かった。
・事件そのものがなんとも酷く、観れない人が続出しそう。そこはアレンジでもよかったのでは、、。

といったところです。

さて。

他所のための嘘。
保身のための嘘。
その交わりが生み出してしまった2つの事件。
そもそも嘘をつく事自体悪いことなのか。
正直は絶対的な正義なのか。
嘘をつくから人間とさえ言えるのか。

そういった人としての根幹、基礎的な倫理に踏み込む本作。
サスペンス要素を全部取っ払っても観客に残す、えぐ味のような思考。

どうやら僕は作品の術中に嵌まったようです。。

もちろんおすすめです!

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。
事前に「オーストラリア 大干ばつ」とかを調べておくと理解が早いと思います。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2022年10月10日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年59本目】映画「声もなく」観ました。

【解説・あらすじ】

鶏卵販売をしながら犯罪組織からの下請け仕事で生計を立てる、
口の利けない青年テイン(ユ・アイン)と相棒のチャンボク(ユ・ジェミョン)。
ある日、組織のヨンソクに依頼され、身代金目当てで誘拐された11歳の少女チョヒ(ムン・スンア)を1日だけ預かることになる。
しかしヨンソクが組織に殺害されたことで、二人は図らずも誘拐事件に巻き込まれてしまう。
そしてテインとチャンボク、チョヒによる疑似家族のような生活が始まるが、
チョヒの両親から身代金が支払われる気配はなかった。

貧しさゆえ闇の仕事を請け負う二人の男が、誘拐された少女を預かったことで予期せぬ事態に巻き込まれるクライムサスペンス。
裏稼業に手を染める男たちと、裕福な家庭に育ちながらも家族に冷遇される少女が織り成すドラマは、
韓国の青龍賞で主演男優賞と新人監督賞を受賞するなど数々の映画賞で高い評価を得た。
監督・脚本はホン・ウィジョン。
口の利けない青年をユ・アイン、彼の相棒をユ・ジェミョンが演じる。

【感想】

ありがちな設定。
なのに、こんなにもエモーショナル、これほどにも胸を貫く。
「家族映画」の水準をぐっと引き上げた新しきベンチマークです!

まずストーリー、脚本。
入り口の描写、取り扱う題材等々は韓国ノワールの伝統をきっちり重んじ。
誘拐された少女の家庭内での立場をちりばめる、
バックストーリーを想起させる台詞回し、相当の技術。

その上でのサスペンスということがしっかり構築されていて。

後戻りできない崩落感、
まるで5mの高さのあるブロック塀の上を歩くような不安感を、

濃いめしっかり目にストーリーに盛り込んいます。

そして演出,演技。
特徴的に感じたのはやはり「日常感」。
あからさまに「私、悪者でございます」といった、視覚ではっきり解る演出は最小限。
普通の人、生活者、市民が強欲と切って捨てがたい職業犯罪に染まっている様子は暗澹たる気持ちになりました。
子どもたちが魅せる笑顔、
死んだ魚のような無気力感の対比も含めた
「家族」という単位に対する描写には社会に対する強いアイロニーも感じさせられます。

俳優陣も素晴らしい。

セリフがない、表情と動きだけ。
難役なのは間違いない、それでなおあの豊かさ、言葉以上に伝わる表情の饒舌さ。
ユ・アイン。
彼は別な作品でも拝見していますが、今後も十分にキャリアが楽しみ。

子役陣のプロを感じさせるケレン味のなさ、
脇をしっかり固めたユ・ジョンミンのおおらかな存在感も含め、
キャスティングの成功、その目利きがこの映画の肝であたっと感じます。

強いて言うなら、

・題材的にはもうお腹いっぱいなくらい過去作で見受けられる。
・サスペンスに不可欠な追う・追われるのやり取りがゆるい。

ことが気になりました。

サスペンスベースのお話なので、観ていられない、心苦しいシーンやエピソードもたしかに有り。
しかしながらそれば現実の世界でも確かにあるのです。

あくまでも商業映画ではありますが、
社会構造の歪みは誰が引き受けているのかを可視化した価値は非常に高いと思いました。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2022年10月05日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年58本目】映画「人質 韓国トップスター誘拐事件」観ました。

【解説・あらすじ】

あらすじ・解説
韓国、ソウル。
記者会見を終えて家に帰る途中だった俳優のファン・ジョンミン(ファン・ジョンミン)は、何者かに拉致されてしまう。
パイプ椅子に縛りつけられた状態で目を覚ましたジョンミンは、自身が巨額の身代金を目当てに誘拐されたことを知り、
さらに犯行に及んだ若者たちがソウルを震撼させている猟奇殺人事件の犯人であることにがく然とする。
身動きの取れない彼は、演技力を武器に犯人グループを翻弄、脱出のチャンスをうがかう。

ファン・ジョンミンが本人を演じたサスペンスアクション。
身代金目的で誘拐されてしまった彼が、演技力を駆使して犯人グループから逃れようとする。
監督はピル・カムソン。
イ・ユミ、リュ・ギョンスらが出演する。

【感想】
この役を誰がやるのか。そりゃあファン・ジョンミンしかありえない!
武器は演技力のみ。そりゃあファン・ジョンミンでしょう!!

まずストーリー。
これは韓国映画の方程式通り。
前半にプロットを仕込み、後半アクションを交えつつ、最後に回収し、示唆的に終わる。
まあ、よく見るパーターンではあるのですが一つ一つのギミックに工夫がされていて、全く見飽きない。
武器は「演技」に絞った点も実にうまい設定。
軸がしっかりしているのでストーリーにしっかり奥行きが出ているように感じる。

次に演出、俳優陣。
まずはファンジョンミンありき。
彼のキャリア、演技派としての突出した名声を巧みに悪用!(褒めてます!)
観客をうまくミスリードしながら、
時に彼らしい、時にはらしくない台詞回しで犯人と観客をきっちり巻き込んでいく。
脇を固める若手俳優陣も、ファン・ジョンミンとの共演に臆した様子は微塵もない。
従来的な演出への皮肉とも取れるシーンなども挟み込むあたり、監督の悪意も感じました。(褒めてますってば!!)

強いて言うなら

・アクションシーンが長く感じる。バリエも少ない。
・そりゃあ無理だろというほどのファン・ジョンミンの強靭さ。

あたりは一癖つけたいところ。

さてさて。
これが例えば「社長誘拐」とか「政治家誘拐」だったら。
ファン・ジョンミンが主役でも数段劣る作品になったでしょう。
あえての俳優、あえての本人役にすることで、
本人のパブリックイメージ、映画の中での実像、
さらには映画の外での姿を想像させるのは上手いし新しい。
これ、キャストを変えてもう一回やれるかと言ったら多分やれない。
ハリウッドリメイク?
できるとしたら、、もう20歳若いイーストウッド?
ともかく無理筋。

僕は告白すれば、ファン・ジョンミンファンなので、もう大満足でした。

演技派とはなんぞや?
役へのアプローチ、その基礎中の基礎である「体を借りて他人を演じる」ことの最適解。

このあたりを注目してご鑑賞いただければなかなかに興味深いのではと感じます。

もちろんおすすめです!

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2022年10月01日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年57本目】映画「ヘルドッグス」観ました。

【解説・あらすじ】

警官時代に殺人事件を止めることができず、その苦悩を抱えながら生きる元警官の兼高昭吾(岡田准一)。
警察は関東最大のヤクザ組織「東鞘会」への潜入捜査を彼に強要し、
データ分析で相性98パーセントと判定された無軌道なヤクザ・室岡秀喜(坂口健太郎)とコンビを組ませる。
東鞘会最高幹部の一人でもある土岐勉(北村一輝)が率いる東鞘会・神津組に潜り込むことに成功し、抜群のコンビネーションを発揮。
連絡係の衣笠典子(大竹しのぶ)の協力を得ながら、組織内でのし上がる。

深町秋生の小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」を映画化したアクション。
暴力団に潜入した元警官と無軌道なヤクザのコンビが、組織内でのし上がっていく姿を描く。
監督は原田眞人。
過去にも原田監督と組んだ岡田准一が主演を務める。
坂口健太郎、松岡茉優のほか、北村一輝、大竹しのぶらが出演する。

【感想】
これでもか!まさに豪華キャスト!!。
ヤクザ映画、その定型文の大外をあえてゆく、チャレンジングな作品!

まず脚本だったりストーリーだったり。
実在した事件をモチーフに、全体のトーンというか色彩というのか、
ベタベタと塗り重ねていく作風は原田監督のいつも通り。
セリフ量の多さなども過去作に比べても通常運転感はあります。

次に演出、演技なんですが。
まず驚いたのがキャスティングの振り幅。
本職の演技派俳優を要所に配置し、重要な役をあえてでしょう、ミュージシャンやコメディアン、
若手の気鋭に振っていく、それでいて誰も「浮かない」。
そのあたりのベンチマークの取り方はさすがベテラン監督です。
格闘シーンもバリエが豊富で一つ一つのスペックが高い。
見応え十二分でした。

ただやはり。

特有の台詞回しは表裏一体。シンプルに聴き取れない箇所が多発。
ストーリーも途中から合理性がぶっ飛び、話の最終地点がモヤっとする。
潜入捜査の動機づけもありきたり。
ラストシーンも軽薄に感じる。

等々、到底看過できない部分も散見。

アクション映画としては上々だが、骨太ではない。
俳優陣は凄まじいが、演出的には不満。

矛盾と言うか二律背反的な要素がふんだんに含まれる本作。
もしかすると「現実社会もそういったものだよね」というメタ構造になっているとしたら、、、。

いやいや、それは考え過ぎな感じがする。。。

ので

岡田くんのキレキレのアクション。
坂口くんのキレキレの狂気。
松岡さんのキレキレの綺麗さ。

などをご堪能したい方に、
ぜひおすすめです!

【価点・つけるとしたら】
☆3.8です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2022年09月28日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年56本目】映画「ファイナル アカウント・第三帝国最後の証言」観ました。

【解説・あらすじ】

第2次世界大戦中、ナチスはホロコーストを行った。ナチスが支配するドイツ・第三帝国でホロコーストを実際に目撃した人々は、戦後長い間沈黙を守ってきた。
そして今、当時を知る最後の世代となった彼らはようやく口を開きさまざまな証言を語る。
そこにはナチスに加担した後悔や、自分は加害者ではないという言い逃れ、
自己弁護、アドルフ・ヒトラーへの支持など多様な思いがあった。

ナチス支配下のドイツ・第三帝国を知る高齢者たちにインタビューしたドキュメンタリー。
アドルフ・ヒトラー率いるナチス政権下のドイツで幼少期を過ごし、ホロコーストを実際に知る最後の世代である彼らの証言を映し出す。
監督などを手掛けるのはルーク・ホランド。元ナチス親衛隊のカール・H・ L・ホランダー氏、ハンス・ヴェルク氏らをはじめ、
ドイツ女子青年団に所属していたマリアンネ・シャントロー氏や、
ナチス親衛隊員宅のベビーシッターだったマルガレーテ・シュヴァルツ氏らが出演する。

【感想】
おそらく、ほぼほぼ最後になるであろう、「虐殺当事者」を直撃するドキュメンタリー。

まず構造。
過去の蛮行を現代的視点で振り返る。
過去の若者を現代の若者が斬る。
この2つにはっきりと絞りきった、ピンと強めの作画。

次にその焦点、内容ですが。
これは過去の蛮行、心の本音を暴き出すことだけに徹底。
周辺事情や被害者視点はみんな知ってるよね、といったところに据え置き、
対比構造は意図的に避けている。

さてさて。
「直接手を下していない」
「知らなかった」
「いやいやヒトラー、政権運用は良かった」
「命令だったから仕方ない」
といった、ギリギリの建前までは迫っていると思うのですが、いかんせん尺が短い。
監督の作画のきっかけ、その強い動機であったり、ユダヤ人迫害に至るストーリーは全然追えておらず、
結果「彼ら」の「本音」に迫るまでには至っていないと感じました。

ただ。
この言い訳の方程式は現在性、再現性、敷いては普遍性が高く。
どれもこれも、時代を超え、場所を替え、言語を変えて見聞きしてきたものばかり。
背筋が寒くなったこともまた事実です。

狂気。
それはいつも平時の中にこそある。
強く心に刻みたいと感じる作品でもありました。

【価点・つけるとしたら】
☆3.5です。

ちなみに
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2022年09月25日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年55本目】映画「NOPE/ノープ」観ました。

【解説・あらすじ】

田舎町に暮らし、広大な牧場を経営する一家。
家業を放って町に繰り出す妹にあきれる長男が父親と会話をしていると、
突然空から異物が降り注ぎ、止んだときには父親は亡くなっていた。
死の直前、父親が雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目にしていたと兄は妹に話し、
彼らはその飛行物体の動画を公開しようと思いつく。
撮影技術者に声を掛けてカメラに収めようとするが、
想像もしていなかった事態が彼らに降りかかる。

ジョーダン・ピールが監督、脚本、製作を務めたサスペンススリラー。
田舎町の上空に現れた謎の飛行物体をカメラに収めようと挑む兄妹が、思わぬ事態に直面する。
ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、スティーヴン・ユァンのほか、
マイケル・ウィンコット、ブランドン・ペレアらが出演する。

【感想】
「スリラー、ホラーは観ない」。
なぜなら怖いから、という僕の不問律をあっさり破る理由の最適解!

まあ、何はともあれ脚本、ストーリーです。
「ネタバレしない」もう一つの禁を思わず破りたくなる、面白さ。
骨格のしっかりしたストーリーに、精密な仕掛けをちょっと必要以上に詰め込みまくり。
徐々に話の主軸が変わっていくのも新鮮でしたし、
実質的なネタバレ後にももう一段階「話を盛り上げていく」のも凄まじい。
プロットの回収が映画の時間ではなく、帰りの車の中ではっと気付かされるものも。
しまった、パンフレット買いそこねた感半端ないです。

そして演出。
やっぱりスリラー、ホラー?なのでそれなりに怖い、グロい、ゴアゴアもりもり。
ではあるのですが、お話の主軸がしっかりしているので僕程度の耐性でも十分鑑賞可能な安心?設計。
抑えめの前半、加速していく中盤、全開の後半は、まるで競馬の大きなレース、クラシックさながら。
「馬」はこの映画の大きなガジェット、キーワードでしたので意識してないわけがない。

強いて言えば、

・スピード感が有りすぎてプロットすべてを劇場内で拾いきれない。
・現象に対する動機づけが途中で変容するが説明が足りてない。
・ラストのラストがちょっと長い、くどい。

ぐらいがちょっときになるところでした。

僕は比較的普通の大きさのスクリーンで鑑賞したのですが、
噂によると、「画面のサイズで視えるモノが変わる」らしく。
確かにもう一回観たら、IMAXで見たらどうだろうとか考えてしまいました。
リピーター続出も全くもって頷ける、快作、力作。
同じ監督の過去作、お恥ずかしながらノーマークだったのでちょっと急ぎで掘り返したいと思います。

ホラー好きも、そうじゃない方も。
もちろんおすすめです!

【価点・つけるとしたら】
☆4.2です。

ちなみに
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2022年09月22日

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kazu_R

【観た/2022年54本目】映画「シング・ネクストステージ」観ました。

【解説・あらすじ】
コアラのバスター・ムーンが運営するニュー・ムーン・シアターは連日満席で、
ブタのロジータとグンター、ヤマアラシのアッシュ、ゾウのミーナら出演者は大人気。
地元で成功を収めながらも、バスターには聖地クリスタル・タワー・シアターで新しいショーを披露するという夢があった。
そのためにはクリスタル・エンターテイメント社のジミーのオーディションに合格しなければならなかった。

ミュージカルアニメ『SING/シング』の続編。
新たなショーを披露したいという、コアラの支配人バスター・ムーンの夢をかなえるために仲間たちが協力する。
ガース・ジェニングスが続投。
マシュー・マコノヒーやリース・ウィザースプーンら前作のメンバーに加え、
U2のボノらもボイスキャストで参加する。

【感想】
圧巻の前作超え!
楽曲へのリスペクト、ステージへの情熱が僕の琴線に触れまくり!

まずは脚本、ストーリーについて。
これは前作がオーディションが主眼だったのに対し、
今回はバックステージの割と細かなところ、いわゆる裏方仕事にかなり重心を置き、
舞台とは「人が作る」ことを強く主張。
そこからの実際の舞台を見せる、魅せる構成は絶妙なバランスでした。

次にキャストだったり演出だったり。
まず、何と言っても選曲が素晴らしい!
原曲のアーティスト同士の関係性さえ視えてくるような、
リスペクト、リスペクト、リスペクト!
どこに目を向けても尊敬しか感じられない多幸感。
歌唱を担ったボイスキャストの中には、ああああああ、ボノまでもぉぉぉおおお!
これでグッと来ない訳がない。
正直、ずるい。
ズルすぎる演出!

強いて言えば、

・まあバジェットの問題もあるのでしょう、どれもこれももっと聴きたい、より短めの歌唱。
・ストーリー的に動機が軽薄に感じたり、舞台設定が場当たり的だったり。
・ボノ、あああ、もう一曲、できれば「あの曲」を歌ってほしかった!!

ぐらいが不満点。

さてさて。
学生時代ま遡れば、僕も「あの頃の演劇青年」。
舞台に掛ける情熱も、失った喪失感も、両方忘れていたように思います。

ラストに至る熱気。
客席との一体感。
帰りの電車、火照った気持ち。

何もかもを思い出すには短すぎる2時間あまり。
琴線は触れるどころか、しっかりかき鳴らされました。

よい時間、良い体験だったと思います。

**あの曲**

【価点・つけるとしたら】
☆4.2です。

ちなみに
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2022年09月15日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年53本目】映画「さかなのこ」観ました。

【解説・あらすじ】
毎日魚を見つめ、その絵を描き、食べ続けても飽きないほど魚が大好きな小学生の“ミー坊”。
わが子が少々変わっていることを父親が心配する一方で、母親は彼を温かく見守り応援している。
高校生になっても相変わらず魚に夢中なミー坊は、町の不良とも仲が良く、いつの間にか周囲の人々の中心にいる。
やがて、一人暮らしを始めたミー坊はさまざまな出会いを経験し、
自分だけが進むことのできるただ一つの道を突き進んでいく。

魚類学者でタレントのさかなクンが、幼いころから魚に夢中だった自身の半生をつづった著書を映画化。
魚が大好きな少年がさまざまな出会いを経ながら、好きなことを究めようとまい進していく。
沖田修一が監督・脚本を務め、前田司郎が共同で脚本を担当。
子供のように真っすぐに大好きな魚を追い続ける主人公をのんが演じる。

【感想】
奇人、さかなくんを演じれるのは本人かのんさんだけ。
ならば必然的にのんさんだけなのです。
アカデミーは今すぐ女優賞、男優賞を統合し、
俳優賞として「のん」をノミネートするべき!!!!

さて、脚本的な部分。
さかなクンの自伝が元になっているが、さかなクンの話ではない。
単純になぞるだけでも十分面白いはずなのに。
沖田修一監督と前田司郎さんはそんなところで立ち止まらなかった。
あくまで自伝をモチーフにとどめ、
誰しもが「感じる」、「刺さる」、あるいはささくれを触られるようなひりひり感までをもインストール。
夢、あるいは希望を、極めて多角的に主役に据えることに成功している。

それもこれも演出、俳優陣。
のんにしか演じられない、のびのびとした狂気。
柳楽優弥の深みのある眼差し。
夏帆のセリフを削って存在感で勝負する、凄まじいむき出し感。
俳優陣を心から信頼し、全振りでベットした監督やプロデューサーの目利き、度量にも感服しかないです。

強いて言うなら、本当に強いて腐すなら、、。

・最初の題字はいらない。のんならいらない。やり遂げる。
・さかなクン本人の演技はやっぱりあれよね、、。
・ホテルで会食のシーン、ちょっとちぐはぐ。怒るのは柳楽くんの方で、思い切って店を替えるとか、大きく見せても良かった。

ぐらいでしょうか。

夢。
本当に甘美な言葉。
ただ貫くには犠牲も、狂気も必要。

それでもです。
この言葉の強さ、蠱惑的な中毒性がこの世の中を前に進めてきた。
誰かの夢の果てに今僕らは立っている。

夢を貫く。
夢を応援する。
夢に刺激され、新たに夢を持つ。

どれでも良い、どれもできなければ、
今やっていることを夢にする、好きになるでもいいじゃないか。

誰かの夢を、希望を踏みにじるような大人には今からだってなりたくない。
そのように強く感じさせてくれる映画でした。

傑作です!

【価点・つけるとしたら】
☆4.4です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン

by alcyon | 映画観た
2022年09月13日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年52本目】映画「サバカン SABAKAN」観ました。

【解説・あらすじ】
1986年、長崎。
小学5年生の久田(番家一路)は、愛情深い両親(尾野真千子、竹原ピストル)と弟と共に時にはけんかもしながら暮らしていた。
彼はあることを機に、家が貧しいためにクラスメートから避けられている竹本(原田琥之佑)とイルカを見るためにブーメラン島に行くことになる。
この冒険をきっかけに二人の絆は深まっていくが、ある事件が起きる。

1980年代の長崎を舞台に、二人の少年の友情と、それぞれの家族との日々を描く青春ドラマ。
クラスで人気者の少年と嫌われ者の少年が、ある冒険を共有することによって親しくなっていく。
監督を務めるのは金沢知樹。子役の番家一路と原田琥之佑をはじめ、
尾野真千子、竹原ピストル、貫地谷しほり、草なぎ剛、岩松了らが出演する。

【感想】
脚本は反則だらけ、演出も穴だらけ、台詞回しは予定調和の連続。
それでも心を穿つ確かな物語。
「夏、少年、旅。」
これぞジュブナイルの新しき名作!

まず、脚本だったりストーリーだったり。
これは果たして褒めてよいのかちょっとわからないです。
設定はありきたり。
夏で少年で旅して、大人が優しくて。
うーん、聴いたことある、見たことある。
台詞回しも予定調和的というか、だいたい次どんなセリフか予測がつく。
正直、島に渡る設定とか、山の件は無理がありすぎ。
年上お姉さんへの淡い憧憬とか、
土地柄からくる微妙な時代背景とか、
このあたりのシーンはバッサリいらなく感じました。

ところがです。
これらのちょっといただけない、いいかえれば反則的というか、小狡い感じの脚本を
演出とキャストの演技がぐっと超えてくるのです。
子役二人の無邪気さ、その徹底ぶり。
父母に竹原ピストル、尾野真千子を据えるこれ以上のない正解です。
シングルマザー役の貫地谷しおりの母性を感じる演技は、なんと尾野真千子に引けを取らない。
岩松了の眼差し。
草なぎ剛の全体を締める、ソリッド感のある佇まい。

ラストシーン近く、竹原ピストルに「あれ」をやらすのは伝家の宝刀過ぎてこれまた反則なんですが、
サービス精神の極みとして受け止めるとします。

さてさてなんですが。
おそらく本作はジュブナイル映画の基本に忠実。
ただ、過去の名作、たとえば「スタンド・バイ・ミー」などに比べても、
その情景でけして引けをとらず。
ラストのラスト、少年二人の結末にもぐっと来ました。

正直に言えば
途中2か所、そして最後、合計3回涙がこぼれました。

子供だったあの頃。
確かにあった夏。

思い出すには十分な、存分にずるい作品。

もちろんおすすめです!

【価点・つけるとしたら】
☆4.1 です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

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