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アルシオン通信

Alcyon Blog

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2023年02月10日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年10本目】映画「そして僕は途方に暮れる」観ました。

【解説・あらすじ】

自堕落な生活を送るフリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、長年共に暮らしている恋人・鈴木里美(前田敦子)とふとしたことで口論になり、話し合うこともせず家を飛び出してしまう。
それ以来親友、学生時代の先輩や後輩、姉、母のもとを渡り歩く彼は、気まずくなるとそこから逃げ出し、あらゆる人間関係から逃げ続けていく。
行き場をなくして途方に暮れる裕一は、かつて家族から逃げた父・浩二(豊川悦司)と10年ぶりに再会する

三浦大輔が作・演出、藤ヶ谷太輔主演により2018年に上演された舞台を、三浦自身が映画化。
ささいなきっかけから恋人や親友、家族などあらゆる人間関係を断ち切ろうとする青年の逃避行を描く。
主演の藤ヶ谷をはじめ、前田敦子と中尾明慶が舞台版から続投し、
映画版新キャストとして毎熊克哉と野村周平、香里奈、原田美枝子、豊川悦司らが出演する。

【感想】
逃げて逃げて逃げ続ける。果たしてそれは本当に悪いことなのか。鬱屈した社会に波紋を呼ぶ怪作!

まずストーリー、脚本について。
舞台が原作、これは観れてはいないのですが、映画らしい設定に難なくチューニングされています。
このあたりは数々の自作舞台の映画化を手掛けた三浦監督の手腕が光ります。
人物の描写の書き込みはやや細かめ。
キャラははっきりくっきりしていてわかりやすい設計。
展開も無理がなストーリーに没入しやすい、間口の広い脚本でした。
細かな伏線も結構あり!

そして演出、演技。
小道具の一つ一つにまでこだわり、細かな動きでストーリーの闇を演出。
俳優陣もセリフだけに頼らず、表情や仕草、歩くスピードやちょっとした視線も駆使した演技。
キャスティングも絶妙、これはエンジェルフィットと行って良いレベル。
舞台版からの続投がハマっていのではないでしょうか。
特筆すべきはやはり藤ヶ谷さん。
徐々に顔色すら変わっていく。
役作りに対するちょっとした狂気も感じました。

ちょっとここは、、、と感じたのは以下の点。

・全く回収してないプロットがある。わざと放置したのか、だとしても雑。
・最後のオチ、ちょっとミエミエ。
・そもそもタイトル、「途方に暮れる」がストーリーに合ってない。

といったところでしょうか。

さてさて。
逃げることはやはりネガティブなイメージ。
成長こそが価値、とするならば唾棄すべき行為なのかもしれません。
しかしながら自分を守る、その一点においては必要な技術とも感じます。
心の闇は誰しも持っている。
その先には社会の闇がある。
消極的逃避が積極的逃避に変わるとき、ちょっとは光が見えるかも。
面白くなってきたぜと言えるくらいがちょうどよいのかなと感じさせてくれる作品でした。

【価点・つけるとしたら】
☆3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2023年02月07日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年8本目】映画「成れの果て」観ました。

【解説・あらすじ】
ファッションデザイナーの卵として東京で生活している小夜(萩原みのり)は、故郷にいる姉あすみ(柊瑠美)から、
8年前に小夜が遭遇した事件を起こした人物・布施野(木口健太)と結婚すると聞かされる。
友人のエイゴ(後藤剛範)を連れて実家に戻った小夜は、地元企業に就職し不自由なく暮らす布施野に怒りを覚える。
そこに、あすみに思いを寄せる幼なじみ、事件の現場に居合わせた布施野の友人らも現れて事態は一層複雑に。
そして布施野への憎しみを募らせた小夜が思わぬ行動に出る。

解説: 脚本家、映像ディレクターのマキタカズオミが主宰する劇団elePHANTMoonが2009年に上演した戯曲を原作にしたドラマ。
過去に遭遇した事件を起こした人物が姉の結婚相手になったと知った女性が、激しい葛藤や怒りを抱える。
監督は宮岡太郎。
萩原みのり、柊瑠美、木口健太のほか、秋山ゆずき、後藤剛範らが出演する。

【感想】
心の傷を抉って、掘り起こし、さらに傷つけていく。心の闇をそのまま映し出したヒューマンホラー!

まず脚本、ストーリー。
舞台が原作でこれは見ていないのですが、まずもって設定がエグい、、。
登場人物全員の心の闇を全面に押し出していて、キツイ台詞回し。
イヤーな感じを出すことには成功。

そして演出、演技。
一人ひとりの演技のキャラ設定がくっきりしていてわかりやすい。
ラストにかけての畳み込み方や起伏の付け方も良く言えば演劇的で馴染み深さを感じました。
なにしろ萩原みのりさんの怒りを滴らせる演技は圧巻でした。

難点を言えば

・「ある事件」が起点となっていて、意味深にストーリーが続くのですが、容易に想像できてしまう。
・カメラワークというか、画の追い方が其処此処、雑。。
・ストーリーも想像の範囲を超えない、、
・音楽も今ひとつ、、

とちょっと多かったかもしれません。
80分台の短い映画だったのに少し長く感じたのはそのせいかもと思います。

さてさて。
負の感情、特に怒りはその絶対値が高く。
燃え盛り、広がらせてしまうと鎮火が厄介。
これは誰しもが経験していること。
怒らないことに越したことはないですが、
それでも喜怒哀楽あってこそ人間らしさだとも感じますので、
それぞれのボリュームだったりミキシングだったりがやはり重要なのだと痛感させられる作品でした。

【価点・つけるとしたら】
☆3.6です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年02月05日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年7本目】映画「キングメーカー・大統領を作った男」観ました。

【解説・あらすじ】

1961年、韓国。独裁政権を倒し世の中を変えたいと願うソ・チャンデ(イ・ソンギュン)は、
野党・新民党のキム・ウンボム(ソル・ギョング)の選挙事務所を訪ね、選挙に勝つための戦略を提案する。
その結果ウンボムは補欠選挙で初当選を果たし、1963年の国会議員選挙では対立候補を破り、気鋭の議員として注目を浴びるようになる。
その裏でチャンデは影の参謀として奔走するが、勝つためには手段を選ばない彼のやり方に、理想を追い求めるウンボムは違和感を抱き二人の間に溝が生じていく。

ソル・ギョングと、イ・ソンギュンが共演したポリティカルサスペンス。
さまざまな思惑が入り乱れる韓国大統領選挙の裏側を描き、百想芸術大賞で最優秀男性演技賞など3冠に輝いた。
監督はピョン・ソンヒョン。
のユ・ジェミョン、チョ・ウジンらが出演する。

【感想】
見応え十分!
光と影、明と暗のコントラストを見事に捉えた重量級ポリティカルムービー!

まずストーリー。
実際の金大中(=劇中ではウンボム)と、当時の選挙参謀であった厳昌録(=劇中ではチャンデ)をモデルとした物語。
選挙という社会を変える唯一のブレイクスルーをベースに進むストーリーは綿密かつダイナミック。
要所要所に実際に起きた事件や経緯、当時の社会情勢なども細やかに描かれており、知見がなくともしっかり理解できる丁寧な設計に好感が持てました。

次に演出や演技。
これはまさに韓国を代表する名優たちにおける演技の真剣勝負。
互いの感情を引き出し、高めていくような台詞回し。
セリフのないところでの表情の作り方。
ここぞというところでの目線の外し方、、、。
どれもこれも最上級。
演じることは役に生きること、その原点に確実に触れることのできる仕上がり。
味わい深く堪能できました。

無理めにいちゃもんを付けるとすれば、、

・当時の社会状況、例えば他の国との比較なんかを入れると、民主主義の重要度がもっと浮き彫りになったのでは?
・ストーリー的にはやはり既視感がありありで、過去作でもあったよね、こういうの、は否めず。

といったところでしょうか。

さてさて。
我々の身の回りは競争と戦いで満ち溢れていて、避けて通ることは難易度が高く。
それが政治、選挙ともなれば凝縮感が高いのは必然。

理想と現実。
理念と合理。
しいては美しく負けるか汚くも勝つか。
正義とはなにか、政治とは誰のためのものか。

答えなんか特にでているのに、ちっとも近づけない。
これは過去の歴史を振り返る映画ではなく、
成長できない僕たち、現代社会への痛烈な提言。

心に刺さる一作だったと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年02月03日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年6本目】映画「ナワリヌイ」観ました。

【解説・あらすじ】

2020年8月、反体制派の活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏が飛行機の中で突然体調不良に陥ったため、シベリアからモスクワに向かっていた飛行機が緊急着陸する。
彼は当初シベリアの病院に搬送されるが、その後ベルリンの病院に運ばれ一命を取り留める。
ベルリンで治療にあたった医師らによって、「ノビチョク」という毒物がナワリヌイ氏の飲み物に混入されていたことが判明する。

ロシアの弁護士で政治活動家でもある、アレクセイ・ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件に迫るドキュメンタリー。
反体制派の活動家として注目を浴び、モスクワ市長選でも善戦したナワリヌイ氏が、自らの命を狙う者の正体を暴くために調査チームを立ち上げる。
監督を務めるのはダニエル・ロアー。
アレクセイ・ナワリヌイ氏のほか、妻のユリヤ・ナワリヌイ氏らが出演する。

【感想】
フィクション?いやこれこそノンフィクション!
闇を闇のままで留めておけない人々の勇気の結晶!

まず事実確認。
ロシアにおける反体制派、アレクセイ・ナワリヌイ氏。
その民主主義への渇望とプーチン政権打倒への執念を語り尽くしています。
彼はあわや暗殺、、だったのですが一命をとりとめ、その後自らの暗殺犯を追うのですが、その手法がほんとにアグレッシブ。
ハラハラ・ドキドキ、どころじゃない、危険と隣り合わせじゃない、完全に危険!

撮影、演出もこれまたスリリング。
常に同行し、ギリギリの情報線の中、かいくぐって撮影。
衝撃的な映像をその衝撃のままに撮りきっているのは、制作側の強い覚悟を感じずに入られません。

ちょっと難しく感じたのは

・ナワリヌイ氏が実に俳優的で、インタビューもまるで演じているように見えてしまう。
・構成も巧みすぎて、ポリティカルサスペンスを題材にしたフィクション?とすら見える。

と言った点。
そのくらいドラマティックな事件であったとも言えるのですが、
もうちょっと淡々と撮ったほうが問題点がくっきりしたのでは?
またナワリヌイ氏の人物像ももうちょっと追っても良かったのでは?
とは感じました。

さてさて。
民主主義は平和の礎、自由こそが人類最大の価値、
もっと言えば愛こそすべてと信じて疑わず今日まで過ごしてきたわけです。
ところが支配者が生まれ、組織が腐敗し、暴力が社会を蹂躙すると、本当に脆く崩れていく。
ただそれでも世界は地獄でもなければ終わりでもないはず。
不幸にもナワリヌイ氏は投獄されてしまいましたが、市民社会は看過しない。
それはロシアに限らず、この世のどこであろうとも。
勇気の尊さを教えてくれる作品であったとも思いました。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年02月02日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年5本目】映画「私はいったい、何と闘っているのか」観ました。

【解説・あらすじ】

45歳のしがない中年男・伊澤春男(安田顕)は、地元で愛されるスーパー“ウメヤ”に勤めて25年になる万年主任。
たまの休日は愛する妻子のために駆け回り、仕事では念願の店長昇進を夢見て一喜一憂していた。
ある日、店で誤発注トラブルが発生し、大混乱に陥った事態を乗り切るため春男が呼び出される。

俳優や作家としても活動する芸人・つぶやきシローによる小説を映画化。
地元密着型スーパーに勤める万年主任が、仕事や家族のために悪戦苦闘する日常と店長昇格を懸けた闘いの行方を描く。
監督・李闘士男と脚本家・坪田文が再び組んだ。
安田顕が主人公を演じ、小池栄子、岡田結実のほか、ファーストサマーウイカ、SWAY、伊集院光らが共演。

【感想】

シュールとハートウォーミングを絶妙なさじ加減で混ぜ合わせた正統派お仕事系家族ムービー!

まずストーリーとか脚本とか。
典型的なお仕事のドタバタ、そこからの家族物語、といった基本の方程式は踏襲しているものの。やっぱりあります一捻り。
職場で起こる事件のバリエーションの豊富さもさることながら、関連キャラクターの書き込みが実に細かい。
映画の最後の方ではひとりひとりの名前が覚えられるんじゃないかというくらい、のしっかり描写をしているのに散漫にならないのはさすが。
一方で家族側の描写は徐々に深める手法。
消して主人公だけに焦点を当てるのではなく、家族それぞれの「思い」をじっくりと、それでいてわりとテンポの良い台詞回しで見せています。

そして演出、演技。
前半のドタバタだけで引っ張っていっても上質なコメディになったはずなのに、
きっちり後半のしんみりに繋いでくるところ、これはグッと来ないわけがない。。。
しかもただのお父さん頑張れ映画に収まらず仕事の意味や家族のあり方にもきっちり踏み込んだ演出、
監督なりの答え、作家性を感じました。
さらに俳優陣。
安田顕さん、あれだけのモノローグと普通のセリフをこなしながら演技そのものがブレないのは本当にさすが。
小池栄子さんの豊かな母性と引きを十分に意識した表情の作り方はもはや名女優。今作のみならず何を観ても外れない。
ファーストサマーウイカさん、え、どこにいたの?というくらい普段のキャラを消して役に生きている!これは新鮮な発見でした。

しいていえばなんですが

・それでもモノローグが長く、多く、説明的すぎてしんどい。
・できちゃうからやらしちゃうのだろうけど、安田顕さんの感情の幅はもっと抑えてもらって良い。

ぐらいでしょうか。

さてさて。

生きていく。そのために働く。
家族を守りたい。だから働く。

ここに正解なんかなくて、もちろん不正解もない。
ただ、いずれにしても言えるのは、
優しさのスイッチが入ったとき、すべての物事に意味が生まれ、
世界は美しく色なす。
そんな当たり前を大事に大事に描いた映画。
とっても嫌いじゃないんだよな、こういうの(^o^)

【価点・つけるとしたら】
☆3.8です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年02月01日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年4本目】映画「ザ・メニュー」観ました。

【解説・あらすじ】

予約が取れないことで有名なシェフ(レイフ・ファインズ)が提供する極上メニューを目当てに、孤島のレストランを訪れたカップル(アニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト)。
素晴らしい料理の数々にカップルの男性が感激する一方で、女性は言いようのない違和感を抱く。
店内が不穏な様相を帯び始める中、シェフ自慢のメニューには、思いも寄らないサプライズが用意されていたのだった。

解説: 孤島の高級レストランで振る舞われる極上メニューに隠された秘密を描くサスペンス。
監督はマーク・マイロッド、製作にはアダム・マッケイらが参加。
シェフをレイフ・ファインズ、店を訪れたカップルをのアニャ・テイラー=ジョイとニコラス・ホルトが演じるほか、
ホン・チャウ、ジャネット・マクティア、ジョン・レグイザモらが共演する。

【感想】
情熱の向こう側の狂気、さらにその向こうに突っ走る、密室サイコスリラー!

まず脚本、ストーリー。
孤島(絶海とまでは言えない)での豪奢なレストラン、といった設定だけでもまずザワザワ、、。
そこにあからさまに現れるカリスマシェフと、無機質なスタッフたち。
もう何も起こらないわけがない、というフリをしっかりフリより大きくオトす。
サイコものとして必要十分な設計になっています。

そして演出。
緊迫感と狂気のバランスへの配慮はまるで一皿の料理のよう。
徐々に高まっていく恐怖への旅路はまるでコース(メニュー)のよう。
ラストシーン、それはまるで口の中でしずかに溶けていくデザートのよう。。
レストランという舞台設定を十二分に活かしています。

難点を上げるとすれば

・全体的に説明不足。特にラストにかけての選別の意味が伝わりにくい。
・ストーリー的にも最終局面がわりと早めに予測がつく。
・シェフのカリスマ演出の妥当感に疑問がある。

と、わりと大きな問題が有りました。

さてさて。

僕もあなたもやはり欲を持っていて、それは時に強欲と呼ばれ。
気づけば、他者から何かを奪い、傷つけることも。
意識的なのは大罪で、無意識なのはもっと大罪。
これらは人の持つ欠点だと言えるでしょう。

ただ、それらを断罪するのも、また同じ人であるのもまた皮肉なこと。
今作で狂気の向こう側に諦観を置いたのもまた示唆的だなと感じました。

【価点・つけるとしたら】
☆3.8です。
アーニャ・テイラー・ジョイの存在感でちょっとおまけです。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2023年01月31日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年3本目】映画「ボイリングポイント」観ました。

【解説・あらすじ】

一年で最も多忙なクリスマス前の金曜日、イギリス・ロンドンの人気レストラン。
妻子と別居し疲れ果てていたオーナーシェフのアンディ(スティーヴン・グレアム)は、多くの予約によってスタッフたちが多忙を極める中、
衛生管理検査で店の評価を下げられてしまうなど、次々にトラブルに見舞われる。
そこへ、ライバルシェフが著名なグルメ評論家を連れて予告なしに来店し、彼に脅迫同然の取引を持ち掛けてくる。

イギリス・ロンドンの人気レストランを舞台に、オーナーシェフの波乱に満ちた一夜を描く人間ドラマ。
クリスマス前の多忙な店内でさまざまなトラブルが巻き起こる様子を、ワンショットで映し出す。
監督・脚本などは俳優としても活動するフィリップ・バランティーニ。
主人公をスティーヴン・グレアムが演じ、ヴィネット・ロビンソン、ジェイソン・フレミングらが共演する。

【感想】
クリスマスの人気レストラン、成功と破滅が交差するワンシチュエーション・ノンストップ・サスペンス?

まず脚本、ストーリーについて。
キャパオーバーの予約、よりにもよってクリスマスの日に衛生検査。
スノッブな客層、ひどすぎる人手不足にえぐるような人種差別。
整理できてないオーダー形式とアレルギー情報共有。
さらにはライバルシェフと評論家の登場とタフなネゴシエーション。
密度の濃い要素をテンポよく、それこそ調理をするように捌き切ってます。
これはなかなか見応えありです。

そして話題の演出。
上記の要素をノーカット、長回しで撮り切る。
更に群像的な要素も加えているのは事前情報からの予想の斜め上。
一分一秒ごとに緊迫感が増していく、圧力感もきっちり。
俳優陣も演出のスピードに負けない、それこそスピード感のある演技で応えていたように観えました。

いただけないのは

・プロットの回収がいちいちミエミエでこれは予想の範囲を全然こえていかない。
・ラストの結論も全く共感できない。

ところ。
ちょっとお仕事ムービーとしては演出に走り過ぎのように感じました。

さてさて。
まあ僕も職業人なので、仕事の飽和点、経営者の孤独といったものには思うところがあり。
仕事はつきつめていくと「やる」と「やってもらう」、そこにはコミニケーション、つまり「話す」「聴く」が欠かせない。
ちょっとでもこの点を緩めるとあっという間に落ちていく、、のは職種、立場を替えても共通ではないでしょうか。
結論、ラストシーンこそ共感できないものの、やはり胸に詰まるシーンの数々、おそらくはまた思い返す一本になったと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2023年01月30日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
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【観た/2023年2本目】映画「死刑にいたる病」観ました。

【解説・あらすじ】

理想とはかけ離れた大学生活で悶々とした日々を過ごす筧井雅也(岡田健史)のもとに、ある日1通の手紙が届く。
それは大勢の若者を殺害し、そのうち9件の事件で死刑判決を受けている凶悪犯・榛村大和(阿部サダヲ)からのもので、
「罪は認めるが最後の事件は冤罪だ。犯人はほかにいることを証明してほしい」と記されていた。
かつて筧井の地元でパン屋を営んでいた旧知の榛村の願いに応えるべく、筧井は事件の真相を独自に調べ始める。

櫛木理宇のサスペンス小説を映画化。
世間を騒然とさせた連続殺人事件の犯人から、1件の冤罪の証明を依頼された大学生が事件を再調査する。
監督を白石和彌、脚本を高田亮が担う。
連続殺人鬼を阿部サダヲ、事件の真相を追う大学生を岡田健史が演じる。

【感想】
笑顔の奥に秘められた狂気に恐怖する、濃密なサイコスリラー!

まずストーリー、脚本について。
原作は未読なので差異はわかりませんが、サイコスリラーとしての文法をきっちり守った、練り込まれた展開。
家族の関係性や孤児問題といったところを下敷きに、社会の無関心や思い込みの怖さをあぶり出す手法は十分見応えがあります。

次に演出や演技について。
殺人鬼榛村は阿部サダヲしかできない役をしっかり持ってきた印象。
慈愛に満ちた笑顔、穏やかな物腰、からのエグい殺人マシーンへの変貌は監督の意図のおそらくは上を行く怪演。
見応えあり、というか、もう見応えしかなくて、後半は胸焼けするレベル!(褒めてます!)

難点を上げるとすれば、

・脇を固めるはずの俳優陣、家族役の二人やもう一人の主人公の青年はややインテンシティが落ちる印象。
・あえてなんでしょうが、回収していない伏線がいくつかあり、やや物足りない。
・残虐シーンが苛烈に気持ち悪いので観る人を選ぶ、とはいえ世界にはもっと振り切った作品もあり、中途半端に感じる。
・終始ヒリヒリする展開ではあるものの、もう一つ起伏だったり、もう一段階盛り上がりが欲しい。

と言った点。
総じてサイコサスペンスとしてはラストも含めよく出来てるんだけど、少し輪郭がぼやけていると感じました。

さて。

犯罪は社会病理である、と聞きかじりつつも、どうしたって他人事で関心の向こう側。
これがもし、身近な、例えば隣の家での出来事だったら、恐ろしさは加速していく。
普通の人なんて世の中に果たして存在するのか。
シリアルキラーは果たして空想上の存在なのか。
僕は、あなたは本当に「榛村的要素ゼロ」で暮らしているのか。

いずれもなんとも言い切れない、苦い思い、ダークグレーな感情。
これらを提示した今作、一定の成功だったのではと感じます。

【価点・つけるとしたら】
☆3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
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2023年01月29日

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kazu_R

【観た/2023年1本目】映画「犬王」観ました。

【解説・あらすじ】

室町時代の京の都、猿楽一座に一人の子供が生まれ犬王と名付けられる。
その異様な風貌を隠すように面をかぶせられた犬王は、ある日、呪いにより盲目となった琵琶法師の少年・友魚と出会う。
壮絶な運命を生きてきた二人は、歌と舞を披露し合うことで、互いに名乗らずともたちまち意気投合する。
過酷な世を生き抜くため、相棒となった二人は互いの才能を刺激し合い、唯一無二の表現者として一時代を築いていく。

湯浅政明監督が、古川日出男の小説「平家物語 犬王の巻」をアニメ化。
室町時代に人々を魅了した実在の能楽師と、その相棒となった琵琶法師の友情を描く。
脚本を野木亜紀子、キャラクター原案を漫画家・松本大洋、音楽を大友良英が担当。
ボイスキャストは、犬王をアヴちゃん、相棒の友魚を森山未來が務める。

【感想】
猿楽の世界を圧倒的パフォーマンスで再設計する、鬼才「湯浅」ワールド!

まずストーリー。
なんですが、、、。
ほぼほぼ説明セリフをカットし、パフォーマンスで繋いでいく大胆な構成。
歴史的な背景、音楽の系譜も、あえて触れずに進みます。

そして演出。
アヴちゃん、森山未來。
まさに二人のために用意したような舞台設計は精密かつ大胆不敵。
スクリーンにとどまらず、まるで劇場全体を駆け巡るような感覚。
そして伝統芸能を現代的なアニメーションに昇華させるパワー。
テーマ的にもクィアに絞って挑む、強い意志と度胸。
制作陣の覚悟をわずか100分弱でまとめ上げています!

強いて言えば

・音楽が流石に突拍子なく感じたり、リピートが多かったり。
・湯浅ワールドなんですが、ヌルっとした映像表現は合うシーンと合わないシーンが混在する。

のは難点かもしれません。

さてさて。
やはり触れておきたいのはそれでも「物語」の現代性と普遍性。
いつの時代もあった異形への畏れを越えて力強く生きていく様。
その日々、営みを生活と呼び、更に溢れ出てくる感情こそが芸術。
それらを映画という芸術で回答してみせた今作、大きな拍手を贈りたいと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
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2023年01月14日

【あけましておめでとうございます】

新年あけましておめでとうございます。
アルシオン オーナーかずとマダムかずみです。

オーナー&マダム

2022年、2023年の年末年始は天候にも恵まれ、大変多くのお客様にご来館いただきました。
最高に幸せなスタートとなりました!

アルシオンのサービスポリシーは「お客様の笑顔に尽くす」です。
この言葉を胸に、今後も日々努力を重ねたいと思います。

新年

それでは皆様、今年もよろしくお願いいたします(^o^)

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by alcyon | アルシオンTOPICS

アルシオンのオフィシャルブログです

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こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
伊豆の四季やイベント、グルメ情報などを中心に、時々は好きな映画や本などのこともUPしていきます。
メールはこちらまで・・info@alcyon-izu.com
連絡先はこちらまで:0557-51-5600

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