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アルシオン通信

Alcyon Blog

映画 タグへの投稿
2023年04月09日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年23本目】映画「シン仮面ライダー」観ました。

【解説・あらすじ】

1971年から1973年にかけて放送された石ノ森章太郎原作の「仮面ライダー」50周年プロジェクトとして、
庵野秀明が監督を務めた特撮アクション。
仮面ライダーこと本郷猛を池松壮亮、ヒロインの緑川ルリ子を浜辺美波、
仮面ライダー第2号こと一文字隼人を柄本佑が演じ、西野七瀬や塚本晋也、森山未來などが共演する。

【感想】
「仮面ライダー・リテラシー」を厳しく問われる問題作!

まずストーリー。
これは原作に基づくオリジナル。
人間・本郷猛の葛藤を中心に、庵野監督特有の言語を絡めて、「シン」シリーズの文法通り展開。
監督ファンにはおなじみの構成です。

そして演出と俳優陣。
これもまた庵野イズム炸裂。
旧作へのオマージュを残しつつ、現代的に再構築。
ショッカーの有り様、その存在理由を際立たせながら、尺いっぱいに怪人をつぎ込む贅沢な演出。
俳優陣も池松さんを始め、きっちり演じきっています。

ただ、

・話の軸が人間性=やさしさと仮面ライダー=暴力の葛藤、からどんどん離れ、薄味になる。
・アクションが本当に見ずらい。。
・怪人のコンセプトがあやふや、、

と、正直しんどい面も多々あり、、、。

難しい語彙を使い、無理めにストーリーを難解化したものの、その緊張感を最後まで保てず、といった感想です。

もしかして僕にもっと仮面ライダーへの造詣があり、オマージュの部分をうまく汲み取れればもっと違う楽しみ方ができたのかもしれません。

やや消化不良な映画体験でした。

【価点・つけるとしたら】
☆3.4です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2023年04月01日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年22本目】映画「モリコーネ 映画が愛した音楽家」観ました。

【解説・あらすじ】

多くの映画やテレビ作品で音楽を手掛け、2020年に逝去したエンニオ・モリコーネ氏。
クエンティン・タランティーノ監督やクリント・イーストウッドらが彼に賛辞を贈る一方、
自身は映画音楽の芸術的価値が低かった当時の苦しい胸のうちを明かす。
『荒野の用心棒』での成功、『アンタッチャブル』で3度目のアカデミー賞ノミネートとなるも受賞を逃し、
落ち込む様子なども描かれる。

『荒野の用心棒』『アンタッチャブル』など多数の映画音楽を手掛けてきたエンニオ・モリコーネ氏が、自らの半生を回想するドキュメンタリー。
かつては芸術的地位が低かった映画音楽に携わり、何度もやめようと思いながら続けてきた日々を振り返る。
『ニュー・シネマ・パラダイス』などでモリコーネ氏と組んだ、ジュゼッペ・トルナトーレが監督を担当。
クエンティン・タランティーノ、クリント・イーストウッド、ウォン・カーウァイ、オリヴァー・ストーンらがインタビューに応じている。

【感想】
あの音が、あの旋律が。
溢れる思いがスクリーンを包み込む。映画史に確実に残る音楽映画の頂点!

まず、ストーリーなどについて。
存命中のモリコーネ氏への膨大かつ貴重すぎるインタビューと、
多くの映画監督、同業の音楽家達によるこれまた膨大なコメントをもとに、
モリコーネを浮き彫りにしていく、骨太な構成。
全編隙間なく、モリコーネの音楽で紡がれていきます。
引用される映画のあのシーン、このシーン。
モリコーネを知らずとも誰しもが思いを寄せることができます。

そして演出や登場人物。

モリコーネという映画音楽をBGMから芸術にまで高めきった巨大なアイコン。
本人のみならず、多くの関係者の膨大すぎるインタビューを丁寧に紡ぐことで
その栄光ばかりではなく、深い苦悩、挫折にまで強く迫りきった監督の執念。
本当に尊敬していなければできない仕事とはこういうことなのでしょう。

音楽の素晴らしさは言わずもがな。
彼の一生分の音楽を一つの作品に納めるなんて到底できませんが、
それでもここまで構成しきったのはこれもまたマエストロの手腕。
素晴らしい、ただただひたすらに素晴らしいです!

さて。
やはり心に残ったのは、巨大な存在としてのモリコーネではなく、
皆と同じように評価に苦しみ、仕事に悩む姿でした。

その結実としてのアカデミー。
その全てが詰まった「あのスピーチ」

ああ、そうだよ、そういうことだよ、、、。

僕も何時か。
胸を張った仕事ができるようになったときは同じことを言いたい。

そう強く決意させられたような貴重な映画体験でした。

【価点・つけるとしたら】
☆4.4です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年03月29日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年21本目】映画「ベネデッタ」観ました。

【解説・あらすじ】

17世紀、現在のイタリア・トスカーナ地方にあたるペシアの町。幼いころから聖母マリアと対話し、
奇跡を起こすとうわさされていたベネデッタは、6歳でテアティノ修道院に入る。
ある日、彼女は修道院に逃げてきた若い女性バルトロメアを助け、
やがて二人は秘密の関係を結ぶようになるが、
ベネデッタが新しい修道院長に就任したことで波紋が広がっていく。

「ルネサンス修道女物語 聖と性のミクロストリア」を原案に、17世紀に実在した修道女ベネデッタ・カルリーニを描くサスペンス。
幼くしてカトリック教会の修道女となった女性が、聖痕や奇跡によって人々にあがめられる一方、同性愛の罪で裁判にかけられる。
監督などを務めるのはポール・ヴァーホーヴェン。
ヴィルジニー・エフィラ、ダフネ・パタキアのほか、シャーロット・ランプリング、ランベール・ウィルソンらが出演する。

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【感想】
信仰の奇跡と悪の病理が交錯する、意欲作かつ問題作!

まずストーリー。
宗教の持つ神秘性と欺瞞、現在も過去も変わらぬ自然の驚異への畏怖、科学の限界。
これらを絶妙にブレンドし、監督の作家性というスパイスでじっくり煮込み。
切れ味抜群、推進力の強い、脚本です。
グイグイ引き込まれ、17世紀の世界観が実像を持って感じられます。

そして演出だったり演技だったり。
映像は極めて絵画的。
重厚な宗教画を実写化して動かすときっとこんな感じ。
演出は信仰する「人」、人間に焦点をビシッとあわせ。
生々しく欲望や性、信仰心の純粋さと嘘くささをこれでもかっ!と観客の前にさらけ出す。
俳優陣の的確な演技も含め、渾身の出来栄えです。

ただ、ところどころ、
「あれ、ちょっと無駄じゃないこのシーン?」
「え、そこ省略するの?」
といった、わかりやすさとわかりずらさが混在し、結果映画自体が長く感じたのは否めませんでした。

さて。
何かを信じること。
誰かを信じること。
が宗教であれ、人、例えば親族友人であれ、その事自体は美しいこと。
そこに欲望や恐怖が介入すると一気に「人間臭く」なる。
当作品ではペスト(黒死病)をモチーフにしていますが、流行病に翻弄されるのは今も変わらず。
果たして人間らしさは「救い」の手段足りうるのか。
非常に示唆に富んだ作品だったと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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☆4・・・・是非オススメ!
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by alcyon | 映画観た
2023年03月19日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年18本目】映画「愛なのに」観ました。

【解説・あらすじ】

古本屋の店主・多田(瀬戸康史)は店に通う女子高生の岬(河合優実)からプロポーズされるが、
多田はかつてのアルバイト仲間である一花(さとうほなみ)という女性を忘れられずにいた。
一方、一花は自身の結婚式の準備に追われ多忙な毎日を送っていたが、
婚約者の亮介(中島歩)はウェディングプランナーの美樹(向里祐香)と浮気しており、
彼女はその裏切りを知らずにいた。

とある古本屋の店主をめぐり、一方通行の恋が交錯するラブコメディー。
城定秀夫監督と今泉力哉監督が、互いに脚本を提供しR15+指定のラブストーリーを製作する企画の一作。
本作では城定が監督を務める。
古本屋店主を瀬戸康史、その憧れの女性をさとうほなみ、店主に求婚する女子高生を河合優実が演じるほか、
中島歩、向里祐香、丈太郎らが共演。

【感想】
真っ直ぐな、正直すぎる愛をこれまたド直球で描く、豪速球ラブストーリー!

まずストーリー、脚本。
今作では今泉力哉氏が脚本なのですが、絶妙なストーリーテリングぶり。
セリフの一つ一つがくっきりしているし、それでいてそんなに饒舌ではなく。
小説でもなければ演劇の脚本でも、テレビのシナリオとも当然違う、「映画」の脚本です。
お話の構成もわかりやすさに徹していて、
細かなプロットの回収こそあれ、無理やり小難しくするような、
よくある「作家性主張」のようなものは殆どありません。
没入しやすい設計です。

一方の演出、演技。
これはさすが映画職人城定監督。
脚本をしっかり咀嚼し、自らの方程式にきっちり載せ、豪快に投げ放つ。
スケール感の構築の上手さが光る、こちらは存分に「作家性」が発揮されていて。
脚本との対比の構造が見事でした。
俳優陣、見事な奮闘ぶり。
今後の日本映画界を支えていくであろうキャスト陣が、脚本に食らいつき、演出を超えていく。
全員、肉体表現の生身っぷりは、役なのか自身そのものなのか錯覚するくらいの憑依感。
演技合戦としてもかなり見どころがあります。

強いて言うならところどころ共感のできない心理描写があり、
そこはもうちょっと尺を使ってもいいのではと思わなくはないですがこれは個人差のある部分でしょう。

さてさて。
今作を通じて考えさせられたこはやはり結婚とはなんなのかということです。

それは恋の結実なのか。
それとも愛の始まりなのか。

少なくとも生活の手段とはかんがえたくないなあ、、と想いをはせる映画体験でした。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2023年03月15日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年17本目】映画「別れる決心」観ました。

【解説・あらすじ】

生真面目な刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、ある男性が山で転落死した事件を捜査することになる。
取り調べを進める中、彼は被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)に疑念を抱くようになるが、謎めいた彼女に惹かれる気持ちを抑えることができずにいた。
一方のソレもまた、ヘジュンに特別な感情を抱く。

パク・チャヌク監督によるサスペンス。
ある滑落事故をきっかけに刑事と被疑者として出会った男女が、疑念を抱きながらも惹かれ合う。
チョン・ソギョンが同監督と共同で脚本を担当。
パク・ヘイルとタン・ウェイが主演を務め、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョらが共演。
第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞した。

【感想】
美しいすぎる映像、そのすべてが人の心を精密にあぶり出す。
これぞパク・チャヌク!!!

まずストーリーだったり脚本だったり。
夫婦の有り様は本当に数限りなく、もはや語り尽くされてるはずのテーマのはずなんですが。
ギリギリまで鍛えられた刀と焼き時間を数秒単位で見極められた陶芸、句読点の一つにまでこだわった文学。
パク・チャヌクとチョン・ソギョンの手にかかるとそれは魔法のように溶け合い。。。
ギリギリを見極める職人の凄みが感じられます。
もちろん細かなギミックやプロットの設計も見事。
尺長めの作品でも最後まで加速していく推進力は圧巻です。

そして演出、演技。
一つ一つのシーンにきっちり意味をもたせ、細かなセリフ、繰り返しの表現も少しづつニュアンスを変える。
かなり俳優陣には負荷の大きい演出のはずなのですが、そこはさすがの韓国クオリティ。
全俳優、監督の演出に食らいつくどころか食ってやるぐらいの野心的な演技。
とりわけヘジュン役のパク・ヘイル、ソレ役のタンレイは圧巻。
なりきり?憑依?
言葉が足りないくらい映画の中で「生きている」。
スクリーンが一回り大きく見えるような印象すらありました。

しいて苦手なところがあるとすれば風景描写が美しすぎる、この一点。
絵画的すぎて気持ちがストーリーから離れてしまう。
全シーン印象が強すぎるので少し焦点を絞ってもらったほうが作品の主題に近づけた感はありました。

さてさて。
以前にこんな言葉を教えてもらったことがあります。
「人は二種類しかいない。ルールを守りたくて守れない人。破りたくて破れない人」

自分は果たしてどちらのタイプなのだろうか。
同じ状況になったらどんな行動をしてしまうのだろうか。
思いとどまるのか、踏み外すのか。。。

恋愛。
その深淵を強く感じさせてくれる作品だったと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.1です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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☆3 ・・・劇場で観る価値有り
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by alcyon | 映画観た
2023年03月06日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年16本目】映画「BLUE GIANT」観ました。

【解説・あらすじ】
仙台に暮らす高校生・宮本大。
ジャズに魅せられてテナーサックスを始めた彼は、来る日も来る日も河原でテナーサックスを吹き続ける。
卒業を機に上京した彼は、ライブハウスで同世代のピアニスト・沢辺雪祈の卓越した演奏を聴いてバンド結成を持ち掛ける。
取り合わない沢辺だが、聴く者を圧倒する宮本のサックスに胸を打たれて話に乗り、
さらに宮本の熱意に感化されてドラムを始めた高校の同級生・玉田俊二も加わって“JASS”が結成される。
日本のジャズシーンを変えようと、彼らは邁進していく。

雑誌「ビッグコミック」で連載されていた石塚真一の漫画「BLUE GIANT」を原作にしたアニメ。
ジャズに魅了されてテナーサックスを始めた青年が、バンドを結成して日本のジャズシーンを変えようとする。
監督は立川譲。
ピアニストの上原ひろみが音楽を担当している。

【感想】
スクリーンから飛び散る音が、汗が、胸を穿ち、頬を濡らす。
音楽アニメ、いや、音楽映画の一つの確かな到達点!!!

まずストーリー。
原作コミックは未読なのですが基本的な青春モノなのでそれほど苦もなくストーリーは理解できます。
舞台設定は実にシンプル。
キャラクター設定もはっきりしている。
その一方、ディテールの表現、心情描写がとても緻密。
誰しもが十二分に感情移入できる間口の広い脚本です。

そして演出、なにより音楽。
「新曲を原作ファンを納得させるだけのクオリティで鳴らす」という高難易度な演出が強いられている本作。
その大きく高い壁を匠な映像表現と、当代きっての音楽家のセッションで切り裂く、まさにJAZZ的な解決法でクリア。
特にラストにかけてのLIVEシーンは本当に伝説的。
すごいものを観てしまった。
凄まじいものを感じてしまった。
劇場ですから立ち上がれないのですが、脳内では完全にスタンディングオベーション。
音楽の素晴らしさを全身で受け取る多幸感に包まれました。

さて。
劇場をでて振り返って、この上なく興奮した気持ちを少しづつさましたとき残ったもの。
実は音楽ではありませんでした。
正確な目標。
厭わなき努力。
成功を疑わない強靭な精神。
この掛け合わせの最大値が才能で、その先にこそ夢がある。
シンプルな方程式が徹頭徹尾貫かれた、純度の高い意志。
この、赤よりも熱い青い炎。
「BLUE GIANT」に僕は焼かれてしまった。

結構いい歳になり、「希望」「夢」は口にするのは恥ずかしいけれど。
でもまだ行ける。
そんな気持ちにさせてくれた、何かを取り戻せたような貴重な時間だったと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.5です。
これは是非劇場、できれば音の良い環境でご覧いただきたい!!

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年03月05日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年15本目】映画「ちひろさん」観ました。

【解説・あらすじ】

あてもなく海辺の町にたどりついた、元風俗嬢のちひろ(有村架純)。
ある弁当屋の味に魅せられた彼女はそこで働き始め、
風俗で働いた過去を隠そうとしないあっけらかんとした性格、
屈託のない笑顔、
気取らないおしゃべりで人気を集める。
やがて、家族や周囲との関係をうまく築けない女子高生、
伝えたいことを伝えられずもどかしさを抱える少年、
父親との過去に悩むあまりに暴力的な衝動に駆られそうになる青年など、
生きづらさを抱えた者たちが、彼女を慕うようになっていく。

安田弘之の漫画「ちひろさん」を実写化したドラマ。
立ち寄った海辺の町にある弁当屋で働く元風俗嬢が、飾り気のない言動で生きづらさを抱えた人々を癒やしていく。
メガホンを取るのは今泉力哉。
ヒロインを演じるのは有村架純。
脚本は澤井香織と、今泉監督が共同で担当する。

【感想】
日常が、平凡が、貴重で愛おしい。孤独の意味を再設計するヒューマンストーリー。

まずストーリーなど。
これは本当に「日常的」。
誰もが思い当たるよくある話を丁寧に積み重ね、
誰もが抱える苦しみや孤独感をあぶり出すことに徹底。
その目論見は計算通り、あたりと言えるでしょう。

次に演出や演技など。
主演の有村架純さんを筆頭に、リリー・フランキー、平田満、風吹ジュンに若葉竜也・・・。
一言で言って豪華。
配役のバランス的にも的確だったとは思います。
海辺の町の雰囲気も、街の弁当屋も本当に的確。

ただ、、、。

善人役が多すぎ、どのキャラクターも一面的。掘り下げが足りない。
孤独がテーマなのはわかるが、これもまた出来事が説明的かつテンプレ感強め。
主人公、ちひろの存在感がふわふわしていてとらえどころがない。
なにより有村さんがどうしても元風俗嬢にはみえない。

原作ありきなのでしょうが、全体的にストーリーを絞ってでも役に深みをもたせたほうが作品に入り込めたように感じます。

さて。
主人公ちひろはまるで空想上のキャラ。

接客的にアドバイスをしたり、決定的に影響を与えたりするわけではないけれど、
あの人と触れ合ったことで少しづつ変わった自分、動き出した日々。

空想上のキャラなのだけれども、自分のこれまでを振り返れば確かに「いた」人のようにも思えます。
あるあるの映画ではありますが、会いたい人の顔をたしかに思い出した瞬間はやはり愛おしかった。
会えない孤独もまた然り、愛おしいと知った瞬間でした。

【価点・つけるとしたら】
☆3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2023年02月12日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年11本目】映画「RRR」観ました。

【解説・あらすじ】

1920年、イギリスの植民地政策下にあるインド。野性を秘めた男・ビーム(N・T・ラーマ・ラオ・Jr)はイギリス軍に連れ去られた村の少女を救うため、仲間と共にデリーへ向かう。
そこで、ある出来事をきっかけに内なる怒りを燃やす男・ラーマ(ラーム・チャラン)と出会い、互いの身分を知らないまま親友となる。
しかしラーマはイギリス軍の警察官であり、ビームの本当の目的を知った彼は友を投獄する。

S・S・ラージャマウリ監督によるアクション。
イギリス植民地時代のインドを舞台に、イギリス軍に捕らえられた少女を救う使命を帯びた男と、イギリスの警察官が育む友情と闘いを描く。
互いの事情を知らないまま親友となる男たちをN・T・ラーマ・ラオ・Jrとラーム・チャランが演じる。

【感想】
3時間の尺がせいぜい体感20分!徹底的に心が燃える、インド映画の底力!

まずストーリー。
正義と友情。この鉄板!が大きな軸。
ここに、
恋心、家族愛といった様々な愛の形。
植民地支配の横暴や独立へのうねり。
これらを縦横無尽に走らせ、細かな伏線、大きな伏線ともに用意し、
大胆に回収していく。
エンタメ感の強い、ハリウッドヒーロー物を観ているような。
山場のシーンもてんこ盛りで、終わりの見えないジェットコースターのようでもありました。

演出はシンプルにしてベスト。
ヒーロー二人を軸に、これでもかっ!と勧善懲悪。
ノンストレスで観ることができます。
もちろんボリウッドならではのど派手なダンスと歌。
ラージャマウリ監督独特のインドらしさを全面に押し出したアクション。
ともにお腹いっぱいになるまで堪能できました。

しいていうなら

・イギリス側の描写、そのまんまなので単調に感じる。
・主人公二人が不死身すぎ、、。
・インド史に詳しくないのでエンドロールの意味がわからない。国際市場を視野に入れるならもっと簡潔で良かったのでは。

と言った点。

いずれにしてもヒーロー物はかっこよいし、心躍る!
映画とはつくづくエンターテインメントだととよく感じる一本でした(^o^)

【価点・つけるとしたら】
☆4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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2023年02月10日

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【観た/2023年10本目】映画「そして僕は途方に暮れる」観ました。

【解説・あらすじ】

自堕落な生活を送るフリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、長年共に暮らしている恋人・鈴木里美(前田敦子)とふとしたことで口論になり、話し合うこともせず家を飛び出してしまう。
それ以来親友、学生時代の先輩や後輩、姉、母のもとを渡り歩く彼は、気まずくなるとそこから逃げ出し、あらゆる人間関係から逃げ続けていく。
行き場をなくして途方に暮れる裕一は、かつて家族から逃げた父・浩二(豊川悦司)と10年ぶりに再会する

三浦大輔が作・演出、藤ヶ谷太輔主演により2018年に上演された舞台を、三浦自身が映画化。
ささいなきっかけから恋人や親友、家族などあらゆる人間関係を断ち切ろうとする青年の逃避行を描く。
主演の藤ヶ谷をはじめ、前田敦子と中尾明慶が舞台版から続投し、
映画版新キャストとして毎熊克哉と野村周平、香里奈、原田美枝子、豊川悦司らが出演する。

【感想】
逃げて逃げて逃げ続ける。果たしてそれは本当に悪いことなのか。鬱屈した社会に波紋を呼ぶ怪作!

まずストーリー、脚本について。
舞台が原作、これは観れてはいないのですが、映画らしい設定に難なくチューニングされています。
このあたりは数々の自作舞台の映画化を手掛けた三浦監督の手腕が光ります。
人物の描写の書き込みはやや細かめ。
キャラははっきりくっきりしていてわかりやすい設計。
展開も無理がなストーリーに没入しやすい、間口の広い脚本でした。
細かな伏線も結構あり!

そして演出、演技。
小道具の一つ一つにまでこだわり、細かな動きでストーリーの闇を演出。
俳優陣もセリフだけに頼らず、表情や仕草、歩くスピードやちょっとした視線も駆使した演技。
キャスティングも絶妙、これはエンジェルフィットと行って良いレベル。
舞台版からの続投がハマっていのではないでしょうか。
特筆すべきはやはり藤ヶ谷さん。
徐々に顔色すら変わっていく。
役作りに対するちょっとした狂気も感じました。

ちょっとここは、、、と感じたのは以下の点。

・全く回収してないプロットがある。わざと放置したのか、だとしても雑。
・最後のオチ、ちょっとミエミエ。
・そもそもタイトル、「途方に暮れる」がストーリーに合ってない。

といったところでしょうか。

さてさて。
逃げることはやはりネガティブなイメージ。
成長こそが価値、とするならば唾棄すべき行為なのかもしれません。
しかしながら自分を守る、その一点においては必要な技術とも感じます。
心の闇は誰しも持っている。
その先には社会の闇がある。
消極的逃避が積極的逃避に変わるとき、ちょっとは光が見えるかも。
面白くなってきたぜと言えるくらいがちょうどよいのかなと感じさせてくれる作品でした。

【価点・つけるとしたら】
☆3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
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2023年02月07日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
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【観た/2023年8本目】映画「成れの果て」観ました。

【解説・あらすじ】
ファッションデザイナーの卵として東京で生活している小夜(萩原みのり)は、故郷にいる姉あすみ(柊瑠美)から、
8年前に小夜が遭遇した事件を起こした人物・布施野(木口健太)と結婚すると聞かされる。
友人のエイゴ(後藤剛範)を連れて実家に戻った小夜は、地元企業に就職し不自由なく暮らす布施野に怒りを覚える。
そこに、あすみに思いを寄せる幼なじみ、事件の現場に居合わせた布施野の友人らも現れて事態は一層複雑に。
そして布施野への憎しみを募らせた小夜が思わぬ行動に出る。

解説: 脚本家、映像ディレクターのマキタカズオミが主宰する劇団elePHANTMoonが2009年に上演した戯曲を原作にしたドラマ。
過去に遭遇した事件を起こした人物が姉の結婚相手になったと知った女性が、激しい葛藤や怒りを抱える。
監督は宮岡太郎。
萩原みのり、柊瑠美、木口健太のほか、秋山ゆずき、後藤剛範らが出演する。

【感想】
心の傷を抉って、掘り起こし、さらに傷つけていく。心の闇をそのまま映し出したヒューマンホラー!

まず脚本、ストーリー。
舞台が原作でこれは見ていないのですが、まずもって設定がエグい、、。
登場人物全員の心の闇を全面に押し出していて、キツイ台詞回し。
イヤーな感じを出すことには成功。

そして演出、演技。
一人ひとりの演技のキャラ設定がくっきりしていてわかりやすい。
ラストにかけての畳み込み方や起伏の付け方も良く言えば演劇的で馴染み深さを感じました。
なにしろ萩原みのりさんの怒りを滴らせる演技は圧巻でした。

難点を言えば

・「ある事件」が起点となっていて、意味深にストーリーが続くのですが、容易に想像できてしまう。
・カメラワークというか、画の追い方が其処此処、雑。。
・ストーリーも想像の範囲を超えない、、
・音楽も今ひとつ、、

とちょっと多かったかもしれません。
80分台の短い映画だったのに少し長く感じたのはそのせいかもと思います。

さてさて。
負の感情、特に怒りはその絶対値が高く。
燃え盛り、広がらせてしまうと鎮火が厄介。
これは誰しもが経験していること。
怒らないことに越したことはないですが、
それでも喜怒哀楽あってこそ人間らしさだとも感じますので、
それぞれのボリュームだったりミキシングだったりがやはり重要なのだと痛感させられる作品でした。

【価点・つけるとしたら】
☆3.6です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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