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アルシオン通信

Alcyon Blog

オーベルジュ タグへの投稿
2024年05月24日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年34本目】映画「落下の解剖学」観ました。

解説・あらすじ
第76回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したサスペンス。
夫が不審な転落死を遂げ、彼を殺害した容疑で法廷に立たされた妻の言葉が、夫婦の秘密やうそを浮かび上がらせる。
メガホンを取るのはジュスティーヌ・トリエ。
ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルローのほか、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツらが出演する。

ベストセラー作家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)は、
夫と視覚障害のある11歳の息子(ミロ・マシャド・グラネール)と人里離れた雪山の山荘で過ごしていたが、
あるとき息子の悲鳴を聞く。
血を流して倒れる夫と取り乱す息子を発見したサンドラは救助を要請するが、夫は死亡。
ところが唯一現場にいたことや、前日に夫とけんかをしていたことなどから、
サンドラは夫殺害の容疑で法廷に立たされることとなり、証人として息子が召喚される。

【感想】
「真実」が「本当に起こったこと」とは限らない。。。
疑念の連鎖、たどり着く深淵に心ざわめく問題作。

まず脚本。

これは主人公が作家であるという設定をフルに使い切り、
伏線をこれでもかと張り巡らしたゴリゴリのサスペンスに仕上げています。
基本的には法廷とその外、現在進行の裁判と当時の家族の状況をパラレルに見せていくのですが、
台詞量がよく整理されていて混雑しないのもよくできてるなと感じました。

研ぎに演出演技。
物語の主軸になる息子役、ミロ・マシャール・グラネールの肝の据わった演技は素晴らしく、必見に値します。
法廷の様子や心理描写も細やかに演出されていて見逃しどころも少ない印象でした。

ただ、
・やっぱり尺がながく、集中していないと同じシーンに見えるシークエンスも散見されますし、
・作家性なんでしょうが、観客の心情を結構な割合で置き去りにするので、気持ちのついて行けないシーンも少しばかり多く感じました。

さて。
話の内容としては正直あまり共感できず。。
息子の台詞、
「何が真実がわからない時は、心で真実を決めるしかない」
とはいうものの、
そこには印象の大きさに埋もれてしまうことが多すぎるし、
正直結論ありきの打算も感じるし、、、。
特に主役の小説家・妻の佇まいにはおぞましさしか感じませんでした。

審美、真贋の重要性はわかっているつもりでしたが、
今一度、事実の確かめ方、偏りの排除をよくよく反省せねばと感じる作品ではありました。

【評価・つけるとすれば】
3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年04月25日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年19本目】映画「パストライブス/再会」観ました。

離れ離れになっていた幼なじみの男女が、24年間のすれ違いを経てニューヨークで再会を果たすドラマ。
監督はセリーヌ・ソン。
グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロらが出演する。
ベルリン国際映画祭やゴールデン・グローブ賞などにノミネートされた。

ソウルに暮らす12歳のノラとヘソンはお互いに惹かれ合っていたが、ノラが海外に移住したことで離れ離れになる。
12年後、ニューヨークとソウルでそれぞれの道を歩んでいた二人は、
オンライン上で再会してお互いへの思いが変わっていないことを確かめ合うが、すれ違いも起こしてしまう。
さらに12年が経ち、36歳になったノラ(グレタ・リー)は作家のアーサーと結婚していたが、
ヘソン(ユ・テオ)はそれを知りながらも彼女に会うためにニューヨークへ向かう。

【感想】
幾層にも重なった前世(パストライブス)の末、出会った二人。その行く末は運命なのか?

まずストーリー。
主要人物は3人。
幼なじみの男女と女性の旦那。
いつどこに地雷があるのかヒリヒリしそうなところをしっかり回避。
必要以上にしゃべらせない的確な台詞量だったり、
キーワード(「イリョン」)の際立たせ方だったり、
構成を練りに練ったことが十二分に伝わる。
素晴らしいストーリー、脚本です。

次に演出面。
まず目を引くのはニューヨークの情景の使い方、その巧みさ。
派手な画作り、しようと思えばいくらでもできたのに、
無機質さを廃し、人の温もりがしっかり伝わるような画作り。
韓国から遠く離れていること、違う生活を歩んでいることピタッと表す。
絶妙な心象描写。
ぐいぐい物語に引き込まれる映像表現です。
そして演技面。
これがまた実にいい!!
会話劇でありながら細かな手の動きなんかで、これまた細かな心情を伝えていく。
派手な感情表現はほとんどなし。
でもしっかり伝わる、深い気持ち。
三人三様、見事に自分の感情を表現しきっている。。
誰かしらに感情移入できる素晴らしいアンサンブルでした。

さて。
この映画のキーワード「イリョン」とは「運命」「摂理」と言う意味の様です。
人は運命によって導かれ出会う。

ただこの映画はそこで終わらない。

人には意志があり、自ら自分の人生を切り拓く。
摂理、運命の向こう側まで描ききったところにこの映画の意味がある。

今までいろんな人に出会い、それはたしかに運命で。
今までいろんな人と疎遠になり、それはしかし僕の意志で。
そしていろんな人とつながり合っている、これこそもまた「僕らの」意志。

甘いだけ、ほろ苦い人生じゃない。
案外、日常は豊かな味わいに満ちている。

これは名画だったんじゃないでしょうか。
おすすめして感想を語り合いたい映画でした。

【評価・つけるとすれば】
4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年04月18日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年18本目】映画「レッド・シューズ」観ました。

バレリーナとしても活動して生きたジュリエット・ドハティ主演のドラマ。
姉の死にショックを受けて踊れなくなったバレエダンサーが、かつてのライバルやダンスパートナーらとの再会を通じて再起する。
監督はジェシー・エイハーンと、俳優としても活動するジョアンヌ・サミュエル。
ローレン・エスポジート、キャロリン・ボックのほか、ジョエル・バーク、プリムローズ・カーンらが出演する。

有名なバレエ学校に通うサム(ジュリエット・ドハティ)は、自身がプリマを務める「赤い靴」の公演が間近に迫る中で、姉の訃報を知る。
憧れのバレエダンサーでもあった姉の死に打ちひしがれたサムは踊れなくなり、バレエ学校を辞めて荒んだ日々を過ごす。
思わず万引きをしたサムは、辞めたバレエ学校の清掃員として社会奉仕活動をすることを命じられ、そこでかつてのライバルや、
ひそかに思いを寄せていたダンスパートナー、恩師らと再会したことで、バレエへの情熱が再び湧き上がってくる。

【感想】
これぞ王道!もうそれでいい!!

まずストーリー。
これは確実にどこかで見たことのあるような、既視感たっぷりの進行。
悪く言えばありきたりですが、青春映画として考えれば無難な王道を目指したともいえる。
評価が分かれるでしょうが、僕は嫌いじゃない(*^_^*)

そして演出演技。
何しろバレエシーンの密度が濃い。
踊りっぷりのリアル感、床のきしみ音まで聞こえてくるかのよう。
これだけでも十二分に観る価値あり。
バレエ映画の本質、撮るべきところをしっかり捉えてています。

さて。

一つのことを大人数で完遂する事の難しさはバレエだけじゃなく。
感情の出し方や我慢のしどころはどんな事柄であろうと誰もが悩む。
リーダーは人気者なだけではその役割を完遂できない。
譲り合ってばかりいても何も起きない。

皆が皆を支えていく。
だからバレエは”company”,なのだと改めて認識することができました。
王道だから気づけた良さがあったと思います。

【評価・つけるとすれば】
3.8です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2024年04月10日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年17本目】映画「ゴールド・ボーイ」観ました。

中国の作家・紫金陳の小説を、沖縄に舞台を移して実写化したクライムサスペンス。
実業家の義父母をがけから突き落とした男と、その犯行をカメラで撮影したことから男を脅迫する少年たちの姿を描く。
メガホンを取るのは金子修介。岡田将生、羽村仁成、黒木華のほか、星乃あんな、松井玲奈、北村一輝、江口洋介らが出演する。

沖縄。実業家一家の婿養子である東昇(岡田将生)は、義父母を殺害して富と地位を奪おうと、綿密な計画を立てる。
計画通りに義父母をがけから突き落とした昇だが、その様子を13歳の安室朝陽(羽村仁成)らが偶然にもカメラで捉えていた。
朝陽は母子家庭で経済的な余裕がなく、仲間もさまざまな問題を抱えており、すべてを金で解決しようと、昇を脅迫する。
昇と朝陽らが駆け引きを繰り広げる一方で、両親の死に不審を抱く昇の妻・静(松井玲奈)は従兄弟の刑事・厳(江口洋介)に相談を持ちかける。

【感想】
サスペンスに必要なものを十二分に詰め込んで、さらに飽和。想像の上、確かに!!

まずストーリーだったり、脚本だったり。
原作は中国のサスペンス小説とのこと。
サスペンスの王道を行くスピード感、ヒントを与えすぎない絶妙な台詞の量。
伏線の貼り方、破綻のさせ方、ともに想像以上。
さらには沖縄の風土、社会性も織り交ぜる、深みの持たせ方。
超一級の脚本といえるでしょう!

さらに演出演技。
まずは岡田将生さん、もうこの役はまるで当て書きされたかのようにピタリ。
「いやな感じの色男」を演じさせたらまずは外さない、仕上がりの良さはすでに担保。
さらには子役三人、その中でも羽村仁成さん!
周りを主演級の俳優陣に囲まれながら、すべてを喰らい尽くす、台詞回しの巧みさ、表情の殺し。
完全なるライジングスター。
この発見だけでも鑑賞に意味を持たせています。

さて。
お話の本筋は語るも無粋なので避けますが、、。
気になるというか、完全に狙ったであろう冒頭の教室のシーンの音作り。
沖縄という、独特だが、間違いなく日本社会の縮図を見事にワンシーンに閉じ込めていました。
ストーリーの荒唐無稽さがまるで隣人の出来事まで引き寄せられ、畏怖を感じました。

サスペンスだけでなく、社会性も撮りきった。
血の味のするもまた考えさせるものがあった、今年を代表する傑作でした。

【評価・つけるとすれば】
4.4です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2024年04月04日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年16本目】映画「52ヘルツのクジラたち」観ました。

町田そのこの小説を成島出が監督を務め映画化したドラマ。
家族に虐待された過去を引きずる女性が、かつての自分と同じような環境にいる少年と交流する。
杉咲花、志尊淳、宮沢氷魚のほか、小野花梨、桑名桃李、余貴美子らが出演する。

東京から海辺の町の一軒家へ越した貴瑚(杉咲花)は、家族からの虐待を受けて声を出せなくなった、ムシ(桑名桃李)と呼ばれる少年と出会う。
自身も家族に虐待されていた過去を持つ貴瑚は、彼を放っておくことができずに一緒に暮らし始める。
貴瑚と平穏な日々を送るうちに、夢も未来もなかったムシにある願いが芽生えていく。
それをかなえようと動き出した貴瑚は、かつて虐待を受けていた自分が発していた、
声なきSOSを察知して救い出してくれた安吾(志尊淳)との日々を思い出す。

【感想】
ほろ苦さではまだ軽い、全然足りない足りない。砂をかむでも物足りないような厳しさが残る物語。

まずストーリー。

原作はしっかり読んでいて、この重くて綿密な物語をどのように作画していくのか不安があったのです。
でもそこはさすがの制作陣、重要なエッセンスをきっちりくみ取り、余分な説明を削ぎきり、成立させていく。
骨格のしっかりした、筋肉質の、物語の性質にふさわしい脚本に仕上がっています。
これは原作ファンも不安なく観てよいと感じます。

そして演出演技。

主演、杉咲花。
まずこれだけでこの作品の社会性、問題の深さ、行く末のベクトルは示される。
スクリーンの中で生活しているような凄み。
映画の外側、バックストーリーや日常感を表現させれば世代随一。
むしろ、もうはじけるような青春映画は難しく感じるほどの実存感は見応えあり、見応えしかない。。

そして、今回の再発見、志尊淳。
繊細で、か弱く、優しい演技、、。
原作のイメージとは違う、とはじめは感じたのですが、きっちりオリジナル越え。
彼にしか表現できない、強い説得力。
この役に賭けていたんだろうとはっきりわかる覚悟。
見応えあります、見応えしかないです、、。

演出もテンポよく。
台詞のつなぎによどみがなく、
主軸二人以外はキャラクター設定もシンプル。
観やすさも担保されていました。

強いて言えば何ですが、。
でもやっぱり、主軸以外のキャラ設定は平坦で深みに欠け。
行政とのやりとりもバッサリ説明で片付けるあたりは物足りなくも感じました。

さて。
珍しくネタバレですが。

ヤングケアラー、児童虐待、ネグレクト、トランスジェンダー。

どれをとっても重要な課題で、明日の自分で、人ごとでも何でもない。

それでも聞こえない。
だから救いの手が伸びず、実際救われない。

苦しくて、つらくて、一人じゃ解決できなくて、社会はいつも冷淡で。
本当は聞こえているのに、聞こえていないふりをすることで、孤平穏を守るかのような日々。

この物語の主題はクジラたち。
複数形の物語。

孤独の先にある共鳴を求める物語。

砂鉄を噛むような味、忘れずに、日常に還元したいと感じました。

【評価・つけるとすれば】
4.1です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
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by alcyon | 映画観た
2024年03月03日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年14本目】映画「夜明けのすべて」観ました。

瀬尾まいこの小説を映画化。
瀬尾自身のパニック障害の経験を基に、人には理解されにくい疾患を抱え、生きづらさを感じながら生きる男女の交流を描く。
三宅唱が監督・脚本、和田清人が三宅監督と共同で脚本を担当。
パニック障害を患う男性を松村北斗、PMS(月経前症候群)の影響でイライラしがちな女性を上白石萌音が演じる。

月に1度、PMS(月経前症候群)の影響で激しいイライラを感じてしまう藤沢美紗(上白石萌音)は、
転職してきたばかりの同僚・山添孝俊(松村北斗)のささいな行動をきっかけに、ストレスを爆発させてしまう。
その後美紗は、やる気がなさそうに見える孝俊が実はパニック障害を患っており、生きがいや気力も失っていることを知る。
互いの事情を知った二人は職場の人たちの理解に支えられながら、同志のような関係を築いていく。

【感想】
夜を越える苦しみを、純粋な優しさで解かしてゆく。
2024年を代表する日本映画の頂点的傑作ヒューマンドラマ!

まずストーりだったり脚本だったり。

台詞の一つ一つが粒立っていて、染み渡る。
ト書きの繊細さがひしひしと伝わる。
それでいてあくまでも日常の風景をきっちり描写、逸脱しない。
見事すぎるバランスの脚本でした。

そして演出だったり演技だったり。

なにしろ見逃していいシーンが一つもない。
部屋の風景、公園のトンネル、社内の給湯室。
小道具の配置、光の見せ方、雨にぬれたアスファルトの情景。
どれもこれもさりげないのだけど、きっちりと意味がある。
これほど心象描写にこだわった画作りも珍しく、貴重。

さらには俳優陣の演技。
松村さん、上白石さんをはじめ、全キャスト突き抜けた素晴らしさ。
ギリギリまで抑えた台詞回で生活感をきっちり演技。
顔のしわ一本まで意識した表情。
どこまで深く役作りしたのか、サイドストーリーを伝えきる、静かな熱量。
とりわけ脇を固める光石研さん、渋川清彦さんの悲しみをこらえきった微笑み。
どれほどの悲しみを押し込めたら、こんなに優しくなれるんだろうか。。。
これだけでもう映画の価値は十分すぎる。
奇跡のようなキャスティング、皆さんよくぞそれぞれの役を生きてくれたと感謝の気持ちがわきました。

さて。
きっと誰しもが、何らかの苦しみを抱えていて。
悲しみは深く、夜明けはいつだって遠い。

夜が、怖い。
そんな日々でも、誰かが必ず見ていてくれる。
僕があなたが互いに支え合う。
あなたを知りたいと思う気持ちが夜明けを連れてきてくれる。

ラストシーン、キャッチボール、少し乱れる、笑顔で拾いに行く。

僕もそんな人になりたい。
そんな仲間と共に過ごしたい。

心の中心にしっかりと置いておきたい、とても大切な映画になりました。

【評価・つけるとすれば】
4.5です。

ちなみに
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by alcyon | 映画観た
2024年03月02日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年13本目】映画「コヴェナント/約束の救出」観ました。

ガイ・リッチー監督によるサスペンス。
アフガニスタンから帰還したアメリカ軍兵士が、
自分の命を救ったアフガニスタン人の通訳とその家族がタリバンに追われていることを知って救出に向かう。
ジェイク・ギレンホール、ダール・サリム、アントニー・スターのほか、
アレクサンダー・ルドウィグ、ボビー・スコフィールドらが出演する。

2018年、アフガニスタン。アメリカ軍の曹長ジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)は、部隊を率いてタリバンの武器や弾薬の隠し場所を探していた。
部隊は爆発物製造工場を突き止めるが、そこに多数のタリバン兵が現れ、キンリーと彼が雇ったアフガン人通訳のアーメッド(ダール・サリム)以外が命を落とす。
腕と足に被弾して動けないキンリーだったが、アーメッドによってアメリカ軍のもとへ運ばれる。
その後回復し、家族のもとへ戻ったキンリーはアーメッドと彼の家族がタリバンに追われていることを知る。

【感想】
埃と煙幕に包まれた大地に一筋の光。勇気と友情がたぐり寄せる奇跡の軌跡。

まずストーリー。
緊迫するアフガン情勢と米軍、市民の関係性。
この難題に対し十二分にわかりやすい、
例えば当時の情勢を世界史的に知らなくとも理解できる脚本です。
人物描写とアクションの割り振り、
バランスも考慮されていて程よいルックに仕上がっているのは流石のガイリッチー。
きっちりとしたストーリーテリングを体感できます。

次に演出だったり演技だったり。
前半の弛緩と緊張を駆使したアクションシーンは圧巻。
特に先端技術のアメリカとローテクながらも物量に勝るタリバンの対比の構図の取り方が絶妙に上手い。
高低差をつけたカメラワークも流石の見応え。
撮影陣の力量の確かさを感じられます。
俳優陣も的確な配役かつ演技。
主軸の二人、ジェイク・ギレンホールさんとダール・サリムさんの感情のやりとり、緊張感の作り方と幅も深み。
コンマ何秒のタイミングで繰り広げられる場面転換も難なくこなしつつ、
これだけのアクションもこなす。
きっちりと本物の軍人に見える役作り、感服しました。

ちょっとだけ言うことがあるとすればですが、、。
帰還のシーン、ちょっと長く、同じようなシーン、見たことあるシーンの繰り返しに感じる。
一方で主人公帰国からアフガン再入国までの葛藤がやや薄い。
この二点はほんのわずかですがバランスを欠いていたように感じました。

さて。
911テロによるアメリカの報復的アフガン進駐、ウサマビンラディンの殺害成功。
この後、まさかアメリカが撤退するとか、タリバンが巻き返して政権を掌握するとか、想像もしてませんでした。
正義とは何かとは難しい命題だけれども、少なからず「正義のようなもの」をうっすら信奉していて、
でもそんなものが上手くいくとは限らない、感情が殺されていくような現実。
その中でいつも踏み潰されていくのは市井の人々、
そこに住まう市民であり、より弱きものから奪われていく。

この映画が語るのは単なる「美しき友情が、仲間を救う」ことじゃない。
沢山の同じような境遇の人々が「救われなかった」ことではないか。

21世紀版キリングフィールド、学ぶべきことが多かった。
心に強くとどめなければと感じる作品でした。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
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by alcyon | 映画観た
2024年03月01日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年12本目】映画「ネクスト・ゴール・ウィンズ」観ました。

『ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦』としてドキュメンタリー化もされた実話を基に描くヒューマンドラマ。
長い間公式戦未勝利だったアメリカ領サモアのサッカー代表チームが、FIFAワールドカップ・ブラジル大会予選で、新任コーチと共に初勝利を目指す。
監督などを務めるのはタイカ・ワイティティ。
マイケル・ファスベンダーのほか、オスカー・ナイトリー、エリザベス・モスらが出演する。

アメリカ領サモアのサッカー代表チームは、長きにわたりFIFAランキング最下位で、2001年には0対31という記録的大敗も喫していた。
チームに次の予選が迫る中、破天荒な性格でアメリカを追われたコーチのトーマス・ロンゲン(マイケル・ファスベンダー)が、新たに代表チームのコーチに就任。
彼は世界で最も弱いと言われてきたチームの立て直しを図ろうとする。

【感想】
現実版「あきらめたらそこで試合終了ですよ」!!

まずストーリー。
これは実話に基づいているのでまあ予想通り、、、と思いきや!!
ただのスポ根ものに終わらせない、監督の力量が炸裂。
夫婦や家族の難しさ、宗教や文化の違い、
スポーツマーケティングのあり方、さらには精査の問題まで、
実に多様な要素を散漫になることなく見事にパッケージング。
人物にしっかり焦点を当て深掘りすることで会話劇としての面白さを見いだせます。

次に演技だったり演出だったり。
凡百の演出であれば「弱いチームの技術がどんだけ未熟か」を沢山シーンに入れ込みたくなるところ。
これが絶妙に少ない。
そしてだんだん上手くなるシーンも少ない。
つまりはスポーツ映画としての文法的なものはあまり踏襲していないのに、この推進力。
あくまでも会話の軽妙さと人物描写の深掘りで勝負、潔し!です。
マイケルファスベンダー演じる監督は、
いるよね、こんな感じのマネージャー、行動、佇まいともに素晴らしい作り込み。
サッカーに詳しくない人でも面白みを受け止められる演技プラン、演出方針は好悪感度高かったです。

さて。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ。」
これは何もサッカーに、スポーツに限ったことではなく。
それこそ人間関係だったり、ビジネスだったり、
諦観の誘惑は世界に満ちあふれていて、
僕の心の中にも言わずもがなに存在しちゃってる。
それでも尚、
あきらめなかった、
あきらめきれなかったものだけがつかめる、
小さな勝利みたいなものも、
大きな魅力であることも確か。

努力はいつも細い糸をたぐり寄せるような、心細い行為。
それでも楽しんでとり組むメンタリティを示唆したこの映画。

南の島、情景の美しさだけでは語りきれない尊さを感じることができた作品でした。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2024年02月29日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年11本目】映画「哀れなるものたち」観ました。

ヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再び組み、スコットランドの作家アラスター・グレイによる小説を映画化。
天才外科医の手により不幸な死からよみがえった若い女性が、世界を知るための冒険の旅を通じて成長していく。
エマ演じるヒロインと共に旅する弁護士をマーク・ラファロ、外科医をウィレム・デフォーが演じる。
第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で金獅子賞を受賞。

若い女性ベラ(エマ・ストーン)は自ら命を絶つが、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)によって胎児の脳を移植され、奇跡的に生き返る。
「世界を自分の目で見たい」という思いに突き動かされた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)に誘われて大陸横断の旅に出る。
大人の体でありながら、新生児の目線で物事を見つめるベラは、貪欲に多くのことを学んでいく中で平等や自由を知り、時代の偏見から解放され成長していく。

【感想】
これぞランティモス!絶妙に不快な怪作!

まずストーリー。
ロードムービーのフォーマットを活かしながら、
女性の解放を縦軸、階級社会への皮肉を横軸に織りなしています。
構造やテーマ自体の難解さは控えめ。
それでいてランティモス監督特有の不快さ(褒めてます!!)は全開!
相変わらずギリギリのバランスを狙いきった脚本でした。

次に演出や演技など。
エマ・ストーンさんの振り切った、振り切りすぎた演技は圧巻。
色彩鮮やかな映像や、時代感を越えた衣装など、これもまたこだわりが炸裂。
ファンタジーと現実の間、ギリギリすぎるあたり、流石の手練れ。
見応えは十分でした。

ただ、
エマストーンさん以外の俳優陣が出遅れている。
彼女の演技を受け止め着れてない感があり。
不要なシークエンスやストーリーがあり、もっと整理できたのでは?
映画の尺が実際以上に長く感じる点は否めないと思いました。

さて。
学ぶことの大切さ、その純粋な思いは今も昔も変わらぬ重大なファクター。
それを担保する平等や自由も言わずもがな。
振り返って昔と比べ、よりよい社会になっていますかと問われると否としかいえない現実。
かなりガツンときましたし、自省せざる得ない。
変わらない未来なのか、変わっていく世界なのか、
個人の姿勢を強く問う映画であったかなとも感じました。

【評価・つけるとすれば】
3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン 宿泊プラン一覧
伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン
by alcyon | 映画観た
2024年02月25日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2024年10本目】映画「コット、はじまりの夏」観ました。

ドキュメンタリーを中心に活動してきたコルム・バレードが監督を務め、第72回ベルリン国際映画祭で上映されたドラマ。
大家族の中で居場所を見つけられずにいた9歳の少女が、親戚夫婦のもとで夏休みを過ごし、生きる喜びを実感する。
マイケル・パトリックのほか、キャリー・クロウリー、アンドリュー・ベネット、キャサリン・クリンチらが出演する。

1981年、アイルランドの田舎町。
大家族の中で寡黙に暮らす9歳のコット(キャサリン・クリンチ)は、夏休みを親戚夫婦のショーンとアイリンが営む農場で過ごす。
アイリンに髪をとかしてもらったり、ショーンと一緒に子牛の世話をしたりと、
緑豊かな環境で穏やかな日々を送りながら、二人からの惜しみない愛情を受けるコット。
ショーンたちとの時間を重ねていくうちに、コットは自分の居場所を見つける。

【感想】
美しい自然と、静かな感情の交感が豊かな情景を見事に導く、控えめにも大傑作!

まずストーリー。
まずなんと言っても素晴らしいのは台詞の数と研ぎ澄まされ方。
説明過多をギリギリまで抑え、それでいて必要な感情は染み出してくる、絶妙な言葉のセンス。
ト書きに書き込まれているだろう、例えばちょっとした手の動き一つ一つも非常に精密。
言語表現と非言語表現、どちらの良さも十分引き出された十分すぎる脚本です。

次に演出だったり演技だったり。
すべてのシーン、丁寧に、大切にカットしたのだと感じる誠実な演出。
あえてだと思う、スタンダードサイズでの撮影も素晴らしい。
光の描写、緑の濃さ、水の反射、建物にも映し出される家族の風景。。
すべてに意味のあるシークエンス、眼福でした。

演技は主演のキャサリン・クリンチさんが素晴らしすぎて、、、。

たたずむ、走る。
うつむく、前を見る。
ただこれだけでこれほど多彩で細やかな演技。
天才子役なんてありきたりな言葉では収まらない才気。
この発見だけでのこの映画を見る価値ありです。

もちろん、周りの大人たちの演技も素晴らしい。
母性や父性、家族の有り様の難しさを的確に演じ分けていく技術力。
引き算の演技が求められるなかでもなおこの作品にかける思いが伝わってくる、熱量の高さ。

本当にこの家族がそこにいるように見える。
監督と役者の見事なコンビネーション。
これもまた幸せな体験でした。

さてさて。

家族の風景はいつの時代も難しく、もどかしく。
経済的な現実の前にネグレクトは常に紙一重で。
それでも子供に優しさの光を求め、
それ故に大人は与える光の細さに悩み苦しむ。

スコットランドの情景を包んでいた光は、紛れもなく優しさ。
優しさを忘れなければ、きっと、どんなことが起きても、一緒にいられる。

親世代、とりわけ「父親」には厳しい問いが投げかけられるこの映画。

ラストのシーン。
走る少女の見た先の光景。
最後の台詞。

僕は希望と捉えたいと思います。

よい映画でした。
とてもよい映画でした。

【評価・つけるとすれば】
4.6です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た

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こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
伊豆の四季やイベント、グルメ情報などを中心に、時々は好きな映画や本などのこともUPしていきます。
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