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アルシオン通信

Alcyon Blog

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2023年09月26日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年53本目】映画「バービー」観ました。

【解説・あらすじ】

世界中で発売されているファッションドール、バービーを映画化したファンタジー。
ハッピーな毎日を送ることのできるバービーランドで暮らすバービーとケンが、リアルワールド(人間の世界)に迷い込む。
バービーをマーゴット・ロビー、ケンをライアン・ゴズリングが演じる。
監督はグレタ・ガーウィグ。

“バービーランド”はどんな自分にでもなれる、夢のような場所。
そこに暮らすバービー(マーゴット・ロビー)は、ある日突然、体に異変を感じる。
バービーは原因を追求するべく、ボーイフレンドのケン(ライアン・ゴズリング)と共に人間の世界へとやってくる。
そこでバービーは、自分の思い通りにならない経験をする。

【感想】
まず観て、一度胸に手を当ててみる。。。。

では、ストーリーについて。
バービー人形の歴史、制作の経緯などをしっかり折り込みながら進むので、「この世界観」未体験の「男性」でも問題なく観れる設計。
同時にフェミズムの構造を啓示することで強烈に男性社会のマッチョズム、マンプレ、ミソジニー、ルッキズムなどを浮き彫りに。
抉ってくる脚本。
流石です。。

演出、演技面。
マーゴットロビー、ライアン・ゴズリングを中心にまさに奮闘。
華やかなミュージカルシーンのダンスも頑張りを感じましたし、
分量の多いセリフも破錠なくこなすのは相当の負荷、やってのけた感を感じます。

よくぞこの映画を成立させた!
テーマの内容やその教示、矜持には100%同意せざる得ないし、観たあとには反省しかない!

のですが、、。

ミュージカル映画?にしては曲が今ひとつ記憶に残らない。
テンポも途中で緩む、もしくは本来の監督の作風に戻る。
お話の主題は理解するが、やや強引に感じるところも散見する。
「いい材料使ってます!全部入りラーメン」のようなボリューム感で肝心の味がぼやける。。

等々、
映画としてどうだったかと問われるとすこし微妙な気持ちになりました。

ビックバジェットでメジャープレイヤーを揃え、成功を強いられる環境での制作、
のびのび作ったのかしら、本当にこれをつくりたかったのかしら。

テーマは満足、作りは不満、というのが正直なところでした。

【評価・つけるとすれば】
3.8です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2023年09月24日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年52本目】映画「世界のはしっこ、ちいさな教室」観ました。

【解説・あらすじ】

「世界の果ての通学路」の製作チームが、ブルキナファソ、バングラデシュ、ロシアのシベリアのそれぞれの僻地で教える3人の女性教師に密着し、
様々な困難に直面しながらも子どもたちの明るい未来のために奮闘する姿を見つめたドキュメンタリー。

【感想】
教育が導くのは貧困からの脱出ばかりではない。問いただされるのは我が身であるを痛感!

まずストーリー。
アフリカ、シベリア、南アジアの貧困問題。
世界経済の成長から取り残された、もしくは犠牲となっている地区、人々を丁寧、実直に撮影。
問題の根深さ、その解決法、「教育」のあり方へのアプローチは十二分。
教師三者三様の持つ問題意識、葛藤もありのままに。
ドキュメンタリーの真骨頂を堪能できます。

演出というか撮り方について。
前述しましたが、なるべくそのままに撮る方針が徹底されています。
結果、監督の意図はより鮮明に。
教師を女性に絞ったのもまさにまさに。
これは、遠い世界の問題ではないことを痛感できます。

さてさて。
社会問題、とりわけ貧困問題を追うと突き詰めれば「教育」にたどり着くというのが僕の持論ではあるのですが。
この作品ではさらに踏み込んでいて。。

女性の社会進出の難しさ。
若さゆえの理想との葛藤。
報われるとは限らない情熱。

そんな苦しい描写を、
子供たちの情熱と笑顔が溶かしていく。

教室で育まれるのは学力だけではなく、愛情、そして友情。
彼らを支えていくのはきっとあの学び舎で、共に過ごした記憶。

本当に勉強が嫌いとか言ってる場合じゃなかったと、
あの日々は貴重すぎたと、
ちょっとビターな気持ちになりました。

社会問題映画としてもチアアップムービーとしても必見だと思います。

【評価・つけるとすれば】
3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年09月18日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年51本目】映画「リバー、流れないでよ」観ました。

【解説・あらすじ】

劇団ヨーロッパ企画を主宰する上田誠が原案と脚本を手掛けたSFコメディー。
2分間のタイムリープに陥った人々が、その原因究明に奔走する。
監督は山口淳太。
ヨーロッパ企画の藤谷理子、永野宗典、角田貴志のほか、近藤芳正、久保史緒里らが出演する。

京都・貴船にある老舗料理旅館「ふじや」。
仲居のミコト(藤谷理子)は、別館裏の貴船川のほとりに佇んでいたところを女将に呼ばれて仕事に向かうが、2分前にいた貴船川のほとりに戻ってしまう。
ミコト以外の番頭、仲居、料理人、宿泊客たちも、2分間のタイムリープを実感しており、協力して原因を突き止めようとする中、貴船一帯に異変が生じ始める。
ミコトはある思いを抱えながら、そんな状況を眺めていた。

【感想】
まだこの手があった!伝統とSFが見事に交差する軽快コメディ!

まず、ストーリー、脚本。

ぐぬぬぬぬ、、、。
タイムリープものはただでさえストーリーがごちゃごちゃになりやすいのに。
それをさらに複雑な構造の老舗旅館、貴船という小さな区域という制限をあえて設けているのに。
破錠なく、テンポよく、しかも群像劇的に一人ひとりにストーリーを付けて、更に絡ませて、さらにさらに解きほぐしてして見せる。
十分に計算され尽くした脚本。
唸りました、大変に満足です。

そして俳優陣。
スピード感のある動きが求められ、かつ台詞回し自体に伏線が張られている中での演技。
チームワークとソロパートのバランスを常に意識しながら、全員見事に完走。
同じ劇団員を中心に、確実に演じれる芸達者を集めるキャスティングも絶妙でした。

ちょっと難を感じたのは、

まず、同じメンバーで過ごしているであろうことが透けて見える「こなれ感」。
すこし緩む用に見えるシーンもないとは言えませんでした。

次にロケーション。
有名な場所、ではあるのでしょうが、やっぱり街のサイズ感だったり、季節感だったりがわかりにくい。
結果的に微妙に説得力に欠け、この距離、この時間で移動できるの?とか細かな疑問は残りました。

さて。
「タイムリープ」は本当によくある設定、悪く言えば使い古されていて。
新しいギミックを作り出すのはもはや無理、、、と期待薄に観たのですが。。
群像劇に落とし込むのは流石だし、その一つ一つが興味深いのは更に流石。
実際には時間だけは不可逆で、ありえないことなのだろうけど、もし、できることならと、ついつい考えてしまう。

夢も郷愁も希望も愛もしっかりつまった作品だったと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年09月13日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年50本目】映画「青いカフタンの仕立て屋」観ました。

【解説・あらすじ】

モロッコ・サレの旧市街で、モロッコの伝統衣装カフタンドレスの仕立て屋を営む夫婦を描くヒューマンドラマ。
職人気質の夫、余命わずかな妻、若い職人の出会いを描く。
監督などを手掛けるのはマリヤム・トゥザニ。
ルブナ・アザバル、サレ・バクリのほか、アイユーブ・ミシウィらが出演している。

モロッコの海辺にあるサレの街。
ハリム(サレ・バクリ)とミナ(ルブナ・アザバル)夫妻は、カフタンドレスの仕立て屋を営んでいる。
伝統を守る仕事をしながらも、自身が伝統からかけ離れた存在だと苦悩するハリムを、病気で余命わずかのミナは支えてきたのだった。
ある日、そんな二人の前に若い職人ユーセフ(アイユーブ・ミシウィ)が現れ、青いカフタンドレス作りを通して3人は絆を深めていく。

【感想】
カフタン。青。その尊さが、気高さが心を貫く。伝統の中に普遍の今が輝く傑作。

まずストーリー。
伝統的の象徴としてドレス=カフタンをモチーフに。
細部にまでこだわる刺繍同様、丁寧に映像でイスラーム圏の社会構造を描写。
説明セリフの抑え込み方が絶妙。
シークエンスのテンポもよく、寡黙な映画なのに話の推進力が落ちません。

そして演技、演出。
静的な演技の中に激しい衝動や葛藤を仕込む。
表情の起伏を抑えながら目の潤いや視線で感情がどこにあるのか表現していく。
社会と個人、伝統文化とありのままの自分。これまた難しい課題も背景的に見える街の風景も使いながらクリア。
監督の意図を完璧かそれ以上に昇華させる俳優陣に支えられ、骨太感が素晴らしい仕上がりです。

さて。
伝統と現代、文化の保存と革新はいつだって衝突を繰り返し、ときに多くの犠牲を払ってきたのは既知なところ。
一方の価値感を絶対化することの怖さも皆体感している。

それでも変わらないのは、やはり愛。
どんな形であれ愛なのだと監督は強く語りかけてきます。
正解はなく、優劣はない。
それでも。

やはり日々過ごしていると隣りにいる存在が薄れてしまう様に感じます。
日々のせいにしてはいけない、かけがいのなさ。

忘れてはいけないと心にピンを打たれるような作品でした。

【評価・つけるとすれば】
4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年09月10日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年49本目】映画「クロース」観ました。

【解説・あらすじ】

ルーカス・ドン監督による青春ドラマ。
13歳の少年同士の関係を映し出す。
エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワールのほか、エミリー・ドゥケンヌらがキャストに名を連ねる。
第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門グランプリに輝き、第80回ゴールデン・グローブ賞非英語作品賞にもノミネートされた。

親友同士である13歳のレオ(エデン・ダンブリン)とレミ(グスタフ・ドゥ・ワール)は、学校でもプライベートでも行動を常に共にしていた。
だがある日、あまりにも親密すぎることをクラスメートにからかわれたことから、レオはレミへの接し方に戸惑い、彼についそっけない態度をとってしまう。
二人の仲は次第にぎくしゃくしていき、ささいなことで大げんかになる。

【感想】
再生とはなにか。時間の不可逆性を真正面から受け止めた大きな真実の物語。

まずストーリー。
思春期、その中でも特別に多感なローティーンの時期に起きる事件。
悪く言えばよくある使い古されたテーマ。
作品に仕上げるのは至難なはず。
そんな大きな課題に対し、説明セリフをギリギリまで省き映像で見せきる、
極限まで研ぎ澄ました脚本で挑んでいます。
その結果、「よくある、あの感じ」とは到底言えない、芯を食う作品に仕上がっていました。

そして演出だったり、演技だったり。
これはまず、二人の子役、その恐ろしき表現力に全振りで賭けた監督の胆力に恐れ入りました。
なんせすごい。ともかくすごい。
表情、体の張り方、視線の泳がせ方、感情の溢れさせ方、抑え方、、、。
もちろん細かな演出があったのかもしれませんが、お構いなしの才能の発露。
映像に押え切るだけでも至難、よくぞ撮りきったといえるでしょう。

さたさて。
幼き頃の葛藤や悩み、無垢であるがゆえの残酷さはやはり思い当たる節もあって。
「あの時ああしていれば」はやはりつきまとうのだけれど、、。
そんな後悔の気持ちでさえも時間とともに薄れ、最後には壊れてしまう。

ネタバレになりますが今作では痛ましい事件が起こります。
凡百のパターンなら、悲しみからの再生を描くはず。
しかし監督はその結論を選ばなかった。
時間の不可逆性と真正面から向き合った。
一つ一つのシーンに込められた、贖罪という言葉では収まりきれない監督の気持ち。
観終わったあとの押しつぶされそうな、僕の気持ち。
美しいばかりが過去ではないこと、許されるばかりが罪ではないことを世に知らしめる、美しすぎる作品だったと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.3です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2023年09月06日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年48本目】映画「君たちはどう生きるか」観ました。

【解説・あらすじ】
宮崎駿が、『風立ちぬ』以来約10年ぶりに監督を務めた作品。タイトルは吉野源三郎の同名の著作に由来し、宮崎監督が原作と脚本を手掛ける。

君たちはどう生きるか

【感想】
宮崎駿、これが最後作?ファンへの感謝と衰えぬ意欲が交錯する生命賛歌!

まずストーリー的なところ。
これは公式がネタバレ無しを謳ってる以上あまり詳しくは書き込めないのですが、、、。
ちょっとだけ触れると「少年・宮崎駿」が戦争の時代の中、母=母性と父=父性の間で自我を探し求める物語、
といったところでしょうか。
話は難解で正しく宮崎駿のもつ複雑性を全面に押し出すもので、賛否有りと聞いてはいたのですが、
このくらい複雑な映画は正直他にもあるなあ、、程度でしたのでそこはあまり気になりませんでした。

そして演技、演出。
これもまたネタバレが難しいのですが、
おーーー!結構なサプライズ有り。
声の作り込みがしっかりしていて一声目で解読できたのはひとりだけ。
奮闘ぶりを素晴らしく、俳優さんによってはブレイクスルーになあったのではないでしょうか。
演出面では過去作の引用をふんだんに使ったファン感謝デー。
ファンならおなじみのシーンがそこかしこと使われていたっぽく、アゲ要素らしいです。

らしい、、と書いたのは実は僕はそれほどジブリ作を熱心に追っていなかったのです、、、。
なのでライトファンとしては以下の点はどうしても気になりました。

・ファン感謝シークエンスそんなに必要?これはこれで撮り切ったら良かったのでは?
・エンディングテーマ問題。久石譲のメインテーマをもっと活かしきる手を何故使わなかった?
・色のガチャつき、これはいつものことだけど、やっぱりちょっとメリハリがほしい。

以上の三点は終始イガイガ感が残りました。

さて、本作の原作「きみたちはどういきるか」、これ学生時代の国語の教材として母校で使われていまして。
本作との関連性はあるっちゃあるし、ないっちゃないのだけど、時代の要求をベースにしながらも、そこに根を張る力強さ、

「強く生きる」
「したたかに生きる」
「意思を持って生きる」

という現代においても変わらない確かな価値基準を強烈に明示しているところは原作・本作共通に思います。
十二分なエネルギーを感じる、生きることへの強いこだわりが感じらられることのできる作品。
えー、ほんとにこれで終わりなの、駿!!ってかんじです。

【評価・つけるとすれば】
3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2023年08月21日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年47本目】映画「パーフェクトドラバー」観ました。

【解説・あらすじ】

ワケありの荷物の配送を請け負う特殊配送会社「特送」ドライバーの姿を描くアクション。
ズバ抜けた運転技術を持つ女性が、小さな男の子を運ぶためにカーチェイスを繰り広げる。
監督はパク・デミン。
パク・ソダムとチョン・ヒョンジュンのほか、キム・ウィソン、ソン・セビョクらが出演する。

ペク社長(キム・ウィソン)が釜山で営むペッカン産業は、表向きは廃車処理場だが、裏ではどんな荷物も配達する「特送」の仕事もしていた。
金になるならどんな依頼も引き受ける社長の指示で、ドライバーのチャン・ウナ(パク・ソダム)は確実に荷物を目的地まで送り届けなければならない。
一方ソウルでは、元プロ野球選手のキム・ドゥシク(ヨン・ウジン)が、息子のソウォン(チョン・ヒョンジュン)を連れて海外に逃亡するため荷造りをしていた。

【感想】
韓国映画がカーチェイスをやるとこうなる!痛快さが光る、アクション快作!

まずはストーリーだったり、構成だったり。
お話の流れは鉄板ど真ん中。
特に目新しい、、、はないんですが、味付けはしっかり目。
主題の脱出劇のひりひり感をきっちりハイテンションにキープしつつ、
さりげなく韓国の男性社会=ミソジニーや、移民の問題などを絡めたり、スパイスも効いている。
王道かつオリジナルという課題をクリアしています。

そして俳優陣。
主演、パク・ソダムの存在感はもはや唯一無二。ダークヒロインは正真正銘の当たり役。
子役の存在感、自然さ、技術の高さは圧巻。このまま育ってくれ!!!
脇を固める俳優陣も高め安定の演技。
難しいレトリックのない、アクション作品だからこそ全体の技術の高さが目立ちます。

ちょっとここはと思ったところは、、

・肝心のカーアクションが割合としては少なく感じる。そもそも山場は室内なのはいかがなものか。
・全体に容赦ない演出なのに最後だけ甘口。ホッとはしたがもっとビターなエンディングでも良かったのでは。

の二点でした。

さてさて。
カーアクション映画はそれこそジャンルムービーの大きな一角。
バジェット次第でいくらでも派手になる。
しかしそうなると大手に敵わない、じゃあどうする。
その解を丁寧な演出と手堅い脚本、俳優陣の演技力で勝負した本作。
これは日々に生活でも相似形に感じるところが多々あり。
我が身を振り返る作品でもあったと感じました。

【評価・つけるとすれば】
3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2023年07月30日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年46本目】映画「はりぼて」観ました。

【解説・あらすじ】

2016年8月、ローカル局のチューリップテレビが「自民党会派の富山市議 政務活動費事実と異なる報告」というスクープを報道したことにより、およそ半年で14人の市議会議員が辞職した。
富山市議会は政務活動費の使い方についての厳しい条例を制定するが、議員たちは不正が発覚しても開き直って辞職せず、居座るようになってしまっていた。

解説: 14人の富山市議会議員が辞職に追い込まれた政務活動費不正使用問題のその後を取材し、人間の狡猾さなどをあぶり出したドキュメンタリー。
「政務活動費を巡る調査報道」によって2017年度の日本記者クラブ賞特別賞などを受賞したローカル局のチューリップテレビがさらに3年の取材を続け、
なおも続く議会の腐敗や開き直る議員たちの様子をとらえる。
監督を務めるのは、五百旗頭幸男と砂沢智史。

【感想】
社会の木鐸、第四の権力。マスコミ、報道ははたして機能するのかを厳しく問いただす意欲作。

かなり攻め込んだソリッドな内容。
そのまま時系列に並べたらおそらくいたたまれなくて観ていられないところ、あえてのコミカルなタッチ。
これが非常にアイロニーの効いた「表現」の域にまでたどり着いています。

緻密で地道な取材にも頭が下がります。
想像するに難くない膨大な書類を丁寧に、余すところなく、重箱のスミ以上のミクロなレヴェルまで追っていく。
「執念」とはまさにこのことだし、ここまでやっての報道なのだと強い意志を感じさせてくれました。

身内の忖度すら手加減なく写し切っていることにも好感がもてました。
ドキュメンタリーとはいえカットもできたはず。
凄まじい覚悟、よくぞここまで、です。

さてさて。
振り返るに、どうしても考えてしまうのは「地方自治」という美しいお題目。

身の回りにしか関心の持てない市民。
優秀な人材を活かしきれない忖度だらけの行政。
もはや名誉職、人生すごろく最後のマス目と成り下がった政治=議員職。

すべてがそうとまでは言いませんが、既視感ありあり、とても題材となった富山市だけの問題と思えるわけもなく。

いかに声を上げるか。
いかに伝えるか。

劣化したと揶揄されるマスコミ当事者の、
いい意味での諦めの悪さ、
まだ終わっちゃいない感を強く感じました。

こんな作品が世に出るのなら、まだなにかに期待しても良い。
そう思わせてくれる良作であったと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.2です。

ちなみに
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by alcyon | 映画観た
2023年07月27日

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【観た/2023年45本目】映画「アートのお値段」観ました。

【解説・あらすじ】

世界的に有名なサザビーズのオークションを6週間後に控え、アート業界はいつにも増して騒がしくなる。
現代アート作品の値段は上がり、評論家はバブルのような状況を嘆く。
一方アーティストたちは、創作と評価の間で葛藤していた。

ナサニエル・カーンが監督を務めた、アート市場の実態に踏み込んだドキュメンタリー。
アーティストやコレクター、美術商、評論家らの意見からアートとお金の関係を探ると同時に、アートの価値とは何かを問う。
自身の作品が9,000万ドルを超える額で落札されたジェフ・クーンズをはじめ、ラリー・プーンズら芸術家たちが出演する。

【感想】
モノの価値を如何に測るか。
芸術と金の関係をあからさまに追うドキュメンタリー。

構成としては現代アートの値段の決め方であるオークションシステムを中心に丁寧に追っています。
美しいアートの数々も見どころ。眼福だし、よくここまで沢山の作品を扱えたなと感服しました。

その上で収蔵の問題や、所有権の有り様、美術館の存在意義といった美術を取り巻く構造に深くコミットしているのは感じ取れました。
一方、アートそのものの尺度としてのカネの問題、その正しさのようなものへの焦点の当て方はとても曖昧。
あえてなのでしょうがすこしもやもやするものが残ったように思います。

さてさて。
僕はアートには疎く、それほど多くの作品に触れたことがあるわけでもないですが、
それでも好きな作品があったりはしているわけです。
本物がほしいとまでは、、ですがレプリカだったり、ギフトっぽいものだったりが身近にあったらいいなと思うのも確か。
現在のシステムだとエンドユーザーレヴェルですら気軽なプライスではなく、
そもそも美術館で鑑賞できる作品が少なくなっていくことへの不安が拭えない。
価値の適正化の難しさを提示した作品だったとは感じました。

【評価・つけるとすれば】
3.7です。

ちなみに
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2023年07月23日

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【観た/2023年44本目】映画「怪物」観ました。

【解説・あらすじ】

息子を愛するシングルマザーや生徒思いの教師、元気な子供たちなどが暮らす、大きな湖のある郊外の町。
どこにでもあるような子供同士のけんかが、互いの主張の食い違いから周囲を巻き込み、メディアで取り上げられる。
そしてある嵐の朝、子供たちが突然姿を消してしまう。

是枝裕和が監督を務め、脚本を坂元裕二、音楽を坂本龍一が担当したサスペンス。
けんかをした子供たちの食い違う主張をきっかけに、社会やメディアを巻き込む騒動が起こる。
安藤サクラや永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、田中裕子などが出演する。

【感想】
旧態依然とした、リノベーションされない社会を鮮やかに嘲笑う、新しきジュブナイル映画!

まず脚本、ストーリー。
これはまさしく、This is “坂本裕二”!!!!
セリフのワードチョイスも素晴らしいのですが。
なにより3部構成にした意味の持たせ方、
一つ一つのプロットの書き込み、
そしてなにより「これは是枝作品である」ということを意識したプロフェッショナルなバランス感覚、引き算。
普段は自分で脚本を書くことが多い是枝監督作品ですが、あえて脚本家を迎える、これは当たりでしょう。

そして演技や演出。

安藤サクラを筆頭に「大物」揃いの本作。
おそらく演技プラン、特に佇まいのような静的なアプローチは本人任せの部分も多かったのではと想像します。
二面性が全員に求められる中、永山瑛太も田中裕子ももうこの人しかいなかっただろうという、
非常にフィット感のあるキャスティングも素晴らしい。
そしてこの日本映画フル代表をあっさり超えてくる、子役二人。
言葉の一つ一つ、目線の泳がせ方、歩く歩幅、自転車のスピードに至るまで、
瑞々しさ、粒立ち、申し分なさすぎ。
末恐ろしいとはこのことなのだと感じました。

先にちょっとここはと思った点は、、

・明らかに意識しているモチーフ作品があり、結果「サービスショット」がすぎる
・ラストシーンの前、ある演出があるのだけれど、あれ「いらない」!!!

の二点。
これはちょっと観易さを意識しすぎたのかなと勘ぐりたくなりました。

さてさて。
この作品、ついつい怪物が「誰か」をさがしてしまうのですが、、、。
ただしこれはやはりミステリー映画ではなかった。

生きていれば。

誰かを言葉で、
暴力で、
無関心で、
事勿れで、
我が身可愛さで

気づけてしまうことはきっと不可避。
それでも僕らは誰かを愛し、知り合おうとすることを止めることはない。

お話の中心点で、二人の少年は見事なまでに演じきってみせた。
坂本龍一の曲でさえ、その二人の眼差しの前では霞んだ。

今日、このタイミングで観ることに非常に意味のある作品だったと思います。

【評価・つけるとすれば】
4.2です。

ちなみに
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こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
伊豆の四季やイベント、グルメ情報などを中心に、時々は好きな映画や本などのこともUPしていきます。
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