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アルシオン通信

Alcyon Blog

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2022年11月25日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年68本目】映画「窓辺にて」観ました。

【解説・あらすじ】

フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者の妻・紗衣が売れっ子小説家と浮気していることを知りながら、妻にそれを指摘できずにいた。
それだけでなく、彼は浮気を知ったときに芽生えた自身の感情についても悩んでいた。
ある日、文学賞を受賞した女子高校生作家・久保留亜の小説に心を動かされた茂巳は、留亜に小説のモデルについて尋ねる。

稲垣吾郎が主演を務め、好きという感情について描いたラブストーリー。
妻の浮気を知りながら何も言い出せないフリーライターが、自身に芽生えたある感情に悩む。
監督は今泉力哉が務め、本作のために脚本も書き下ろした。

【感想】
今泉力哉の研ぎ澄まされた映画文法が観客を独特の「映画体験」に誘う。
今どき珍しくなってしまったオリジナル脚本による力作!

まず、脚本、構成。
夫婦の形をモチーフにしたコミニュケーションの問題。
その理解しがたさ、面倒臭さを否定も肯定もせず、ありのままに取り出す手法。
これはシンプルだからこそ、の高難易度。
よくチャレンジしているし、成功もしていると感じました。

そして演出。
愛情の深さや広さ、その業の深さをキャストの数をしっかり絞りってテーマを浮き彫りに。
少ないセリフや無言の表現、窓辺での光のシーン、ギリギリまで削ぎ落とした劇伴で物語を加速させ。
最近の映画にしては長い尺(140分)を十分に活かして、余白を作っていく。
感情の起伏を大きくつけず、日常を切り取ったかの手法。
ありがちなのですが今泉監督の手にかかるとじわじわ胸の奥にしみる。
またいわゆる「消え物」、今作ではパフェとかにも大きな意味を持たせているのですが、
象徴的すぎないように工夫もされていて、これもまた今泉イズムを感じました。

俳優陣で特筆に感じたのはやはり若葉竜也さん。
今泉ファミリー、ですが毎回違う側面をしっかり表現してくるところはさすが。
中村ゆりさんは昔からファンなのですが、抑えた演技は円熟のラインに入ってきたように感じます。

惜しいと思ったところは次の2点。
・稲垣さんはもっとやれた。もっと作品にダイブさせても良かった。
・全体のトーンにあってない俳優さんがちらほらいた。

人の感情は複雑とも言えるし、意外なほどシンプルとも言える。
行動は思ったより直落的ともいえるし、思考の深みが足を止めることもある。
いずれにしてもコミュニケーション、互いに手をつなぐことはそれほど容易いことではない。
だからこそ人は、僕は、求めてやまないのだなという解答が詰まった作品。

正直、
恋人同士も熟年夫婦も一緒に見ることは全くおすすめしませんが、
別々に観に行く分には、これは大変オススメです!

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2022年11月14日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年66本目】映画「アフター・ヤン」観ました。

【解説・あらすじ】

人型ロボットが一般家庭に普及した近未来。茶葉の販売店を経営するジェイク(コリン・ファレル)は、
妻のカイラ、中国系の養女ミカ、ロボットのヤンと共に暮らしていた。
だが、ある日ヤンが故障して突然動かなくなってしまう。
何とか彼を修理しようとする中で、ジェイクはヤンの体内に定期的に数秒間の動画を記録する特殊なパーツが組み込まれていることを知る。

アレクサンダー・ワインスタインの短編「Saying Goodbye to Yang」を原作に描くSFドラマ。
近未来を舞台に、ある家族と人型ロボットの絆を描く。
コゴナダが監督を務め、坂本龍一がオリジナルテーマ曲を手掛けている。
コリン・ファレルをはじめ、ジョディ・ターナー=スミス、ジャスティン・H・ミン、マレア・エマ・チャンドラウィジャヤらが出演する。

【感想】

美しい情景と、内包される自然。
言葉にできない言葉を、目線と光で紡ぐ、優しさを詰め込んだサプリメントムービー。

まず脚本などなど。
主題に余白をたっぷり取りながら、周辺をなぞるように進む、難解なストーリー。
死生観と再生、輪廻を映像化するとこんな感じなのかと新鮮さを感じました。
近未来、SFと言った要素も絶妙だったのではないでしょうか。

そして演出、演技など。
一貫しているのは監督の美意識、一つ一つの造形に対する審美眼。
セリフも最小、無駄に見えるシーンにも意味があり。
とりわけ中庭と外、人間とAIの対比には独特の感性を強く感じました。
坂本龍一の音楽も含め極めて美術的であったと言えます。

強いて言えば、
・お茶の持つ哲学的な意味合いの説明がバッサリなので、やっぱりわかりにくい。
・画作りは単調で、一体今どのシーンなのか、進行上どのあたりなのか意識がさまよう。
のは、おそらく演出上の意図なんでしょうが、やはりきつく感じました。

さてさて。
いつも感じるのは人間らしさとはなにか。
AIに置き換わらないものについて、消去法で見つけられるのか。
SFの体ではあるもののこれは歴史だったり哲学だったりといつも語られてきた命題。
ヤンの視線、その先にあった優しい世界。
僕の目にもまだ映るだろうか。
自問自答せざる得ない鑑賞体験でした。

【価点・つけるとしたら】
☆3.9です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2022年10月27日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年64本目】映画「マイブロークンマリコ」観ました。

【解説・あらすじ】

気の晴れない日々を送るOL・シイノトモヨ(永野芽郁)は、親友・イカガワマリコ(奈緒)が亡くなったことをテレビのニュースで知る。
マリコは子供のころから実の父親(尾美としのり)にひどい虐待を受けており、そんな親友の魂を救いたいと、シイノはマリコの遺骨を奪うことを決断。
マリコの実家を訪ね、遺骨を奪い逃走したシイノは、親友との思い出を胸に旅に出る。

解説: 文化庁メディア芸術祭マンガ部門で新人賞に輝いた平庫ワカのコミックを映画化。
長年にわたり父親から虐待されていた親友の死を知った女性が、遺族から遺骨を奪って旅に出る。
タナダユキがメガホンを取り、向井康介が共同で脚本を担当。
主人公を永野芽郁、亡き親友を奈緒が演じるほか、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊らが共演する。

【感想】
抱えきれない喪失感を、それでも抱えて生きてゆく。
それが不毛でも無意味でもないことを教えてくれる紛れもない名作!

まず脚本。
これは原作ありき、既読の状態で鑑賞したのですが、まずまずの再現性。
そんなに長編の原作ではないので肉付けの塩梅が難しいはずなんですが足されたシーンも引かれたシーンも、まさにいい塩梅。
散漫さだったり、目に余る隙はないのでストーリーに集中できました。

次に演出、演技。
演出は脚本同様、原作の世界観を忠実に守りつつ、「喪失感」の部分をきっちり強調。
ただなぞるばかりではないという制作陣の矜持を強く感じる作り。
演技、俳優はこれぞベストなキャスティング。
日本映画の若手女優層はかなり分厚く、主人公役は適任が他にも考えられる昨今なのですが。
あえて永野芽郁に預けた。彼女は受けた。非常に野心的で好感が持てました。
さらに窪田正孝の「静」の演技は変えの演技の幅を感じさせられました。

さらにさらに奈緒。
こんなに壊れた、これ以上のマリコは存在しない。
今後本人の意向はともかく、この手の役は彼女の席になるのでは思うほどの表現力。
映画を支配していたのは紛れもなく彼女。
これは大発見でした。

強いて難点をいえば、

・永野芽郁、やっぱりやさぐれきれず。また叫ぶ演技のテンションに幅がない。
・もうちょっと海までの距離感とか、ロケーションの見せ方があった。
・モノローグ、ちょっと多い。。もっと観客を信じて削っても良かった。

といったところでしょうか。

さてです。

個人的な話にはなりますが、本当に先日、「名前も顔も覚えていない同級生」が先にいってしまい。
なぜかとても悲しく苦しく、喪失感を感じ、言葉を振り絞ったら出てきたのは「ごめんなさい」でした。

何故そんな言葉が出たのかとずっと考えていて、その中での鑑賞だったのです。

その人を忘れない。思い出の中に生かしておく。それがあとに残されたものが生きていく意味。
書いてしまえばシンプルだが、忘れることを受け入れなきゃいけないのもまた真実のような気がします。

ただそれでも、忘れてしまっていて、きっと話したことも、一緒にご飯を食べたこともあるはずなのに忘れてしまっていて。
思い出の中で友人を生かしていなかったことに「ごめんなさい」だったのかな、、。

そりゃあ、大作でもなければエンタメでもない。
粗もあるだろうしもっと別の手法があったのかもしれない。

それでもこれは僕にとっては特別な映画。

もちろんおすすめです!

【価点・つけるとしたら】
☆4.1です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2022年10月26日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年63本目】映画「女子高生に殺されたい」観ました。

【解説・あらすじ】

女子高生に殺されたいという願いをかなえるため、高校教師になった男・東山春人(田中圭)。
赴任先の学校で人気教師として日々過ごす一方で、これまで9年間をかけて理想的な殺され方のための完璧な計画を練り上げてきた。
理想とする「完全犯罪であること」「全力で殺されること」を目標に、平穏な学園内で彼の自分殺害計画は進行していく。

古屋兎丸のコミックを実写映画化。
女子高生に殺されたいという願望を持つ高校教師による、理想的な殺され方のための9年をかけた犯罪計画を描く。
監督・脚本は城定秀夫、企画・プロデュースは谷戸豊が担当。
自らのゆがんだ欲望をかなえるための計画に突き進む主人公を田中圭が演じる。

【感想】
完璧に構築された筋書きによる、ひねりの効いたサイコスリラー!

まず脚本。
オートアサシノフィア(殺されたいという欲求を持つ異常性癖者)という、かなりパンチの効いた設定。
更にただ殺されるだけではダメで、5つの条件をクリアせねばならないという複雑系。
その上一体「誰が殺す」のかという謎解き要素を加えた立体的で難易度マックスのはずなんですが。
そこはさすがの城定クオリティ、あっさりと諸条件をクリアしています。

そして演出、演技。
田中圭はこの手のサイコな演技、よくハマることが再確認。狂気と凡庸、完璧と破錠のバランスに上手い。
南沙良、河合優実といった若手成長株、細田佳央太といったこれまた若き実力俳優も高校生役をやる、ギリギリの旬。
きっちり17歳に見えてくるあたりも演技演出共にさすがです。

難点は、

・脚本がスッキリしすぎていて起伏が感じられず、かえって頭に入ってこない。いつの間にかお話が通り過ぎた感じ。
・劇中劇の扱いが雑。この手の作品はこういったディテールが品質を変えると感じます。
・やたら録音の質が変わる。よくとれてるところとそうでもないところが散在し、ちょっと集中しづらい。

といったところです。

それにつけても城定監督のケレン味のない演出と若手有望株のアンサンブルは眼福。
それほど怖いシーンもないのでサスペンス入門としても良いのではないのでしょうか。

【価点・つけるとしたら】
☆3.7です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2022年10月24日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年60本目】映画「渇きと偽り」観ました。

【解説・あらすじ】

自殺した旧友ルークの葬儀に参列するため、20年ぶりに帰郷した連邦警察官のアーロン・フォーク(エリック・バナ)。
命を断つ前に妻と子供を殺したとされるルークの行動を調べるフォークは、
数十年前に起きた当時17歳の少女エリー・ディーコンの死亡事件との関連を疑う。
フォークは、亡きルークに掛けられた妻子殺しの疑惑と、自身の過去と絡むうえに未解決のままであったエリー死亡の真相を追う。

ジェイン・ハーパーの小説を実写化したサスペンスミステリー。
旧友の葬儀に出ようと故郷に戻った警察官が、そこで起きた過去と現在の事件を調べていく。
監督はロバート・コノリー。
エリック・バナ、ジュネヴィーヴ・オライリー、キーア・オドネルのほか、ジョン・ポルソンらが出演する。

【感想】
質実剛健、プロットの回収もダイナミック。
トリッキーさを廃した見応え十分なサスペンス。

まずストーリー。
2つの時系列、2つの事件を同時に扱っていますが、情報が混雑することのないスッキリ設計。
またストーリーの「混ぜ方」を面ではなく点、
交差させる程度に抑えているので観客の視点がいい塩梅にミスリードされていくのもこれまた「いい感じ」。
自然環境の活かし方、乾いた大地の意味も含めよく練り込まれた脚本です。

次に演出や演技。
20年の年月、その中で変わるもの、変わらないものをしっかり演じ分ける演出、演技。
特に「大人としての振る舞い」と「若者の無邪気さ」のバランスを、若者編、大人編にも取り込んだのはちょっとした発明。
結構厳しい演技プランのはずですが、しっかりと演じきっているのは皆様お見事です。
最後の最後、その結末には正直ブルブルと震えました。比喩ではなく震えました。。

敷いて難点を上げるとすれば、

・1つ目の事件のフラッグの立ち方がありがち。
・自然環境の変化と人々の変容の描写がゆるい。もっとコントラストを付けても良かった。
・事件そのものがなんとも酷く、観れない人が続出しそう。そこはアレンジでもよかったのでは、、。

といったところです。

さて。

他所のための嘘。
保身のための嘘。
その交わりが生み出してしまった2つの事件。
そもそも嘘をつく事自体悪いことなのか。
正直は絶対的な正義なのか。
嘘をつくから人間とさえ言えるのか。

そういった人としての根幹、基礎的な倫理に踏み込む本作。
サスペンス要素を全部取っ払っても観客に残す、えぐ味のような思考。

どうやら僕は作品の術中に嵌まったようです。。

もちろんおすすめです!

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。
事前に「オーストラリア 大干ばつ」とかを調べておくと理解が早いと思います。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2022年10月10日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年59本目】映画「声もなく」観ました。

【解説・あらすじ】

鶏卵販売をしながら犯罪組織からの下請け仕事で生計を立てる、
口の利けない青年テイン(ユ・アイン)と相棒のチャンボク(ユ・ジェミョン)。
ある日、組織のヨンソクに依頼され、身代金目当てで誘拐された11歳の少女チョヒ(ムン・スンア)を1日だけ預かることになる。
しかしヨンソクが組織に殺害されたことで、二人は図らずも誘拐事件に巻き込まれてしまう。
そしてテインとチャンボク、チョヒによる疑似家族のような生活が始まるが、
チョヒの両親から身代金が支払われる気配はなかった。

貧しさゆえ闇の仕事を請け負う二人の男が、誘拐された少女を預かったことで予期せぬ事態に巻き込まれるクライムサスペンス。
裏稼業に手を染める男たちと、裕福な家庭に育ちながらも家族に冷遇される少女が織り成すドラマは、
韓国の青龍賞で主演男優賞と新人監督賞を受賞するなど数々の映画賞で高い評価を得た。
監督・脚本はホン・ウィジョン。
口の利けない青年をユ・アイン、彼の相棒をユ・ジェミョンが演じる。

【感想】

ありがちな設定。
なのに、こんなにもエモーショナル、これほどにも胸を貫く。
「家族映画」の水準をぐっと引き上げた新しきベンチマークです!

まずストーリー、脚本。
入り口の描写、取り扱う題材等々は韓国ノワールの伝統をきっちり重んじ。
誘拐された少女の家庭内での立場をちりばめる、
バックストーリーを想起させる台詞回し、相当の技術。

その上でのサスペンスということがしっかり構築されていて。

後戻りできない崩落感、
まるで5mの高さのあるブロック塀の上を歩くような不安感を、

濃いめしっかり目にストーリーに盛り込んいます。

そして演出,演技。
特徴的に感じたのはやはり「日常感」。
あからさまに「私、悪者でございます」といった、視覚ではっきり解る演出は最小限。
普通の人、生活者、市民が強欲と切って捨てがたい職業犯罪に染まっている様子は暗澹たる気持ちになりました。
子どもたちが魅せる笑顔、
死んだ魚のような無気力感の対比も含めた
「家族」という単位に対する描写には社会に対する強いアイロニーも感じさせられます。

俳優陣も素晴らしい。

セリフがない、表情と動きだけ。
難役なのは間違いない、それでなおあの豊かさ、言葉以上に伝わる表情の饒舌さ。
ユ・アイン。
彼は別な作品でも拝見していますが、今後も十分にキャリアが楽しみ。

子役陣のプロを感じさせるケレン味のなさ、
脇をしっかり固めたユ・ジョンミンのおおらかな存在感も含め、
キャスティングの成功、その目利きがこの映画の肝であたっと感じます。

強いて言うなら、

・題材的にはもうお腹いっぱいなくらい過去作で見受けられる。
・サスペンスに不可欠な追う・追われるのやり取りがゆるい。

ことが気になりました。

サスペンスベースのお話なので、観ていられない、心苦しいシーンやエピソードもたしかに有り。
しかしながらそれば現実の世界でも確かにあるのです。

あくまでも商業映画ではありますが、
社会構造の歪みは誰が引き受けているのかを可視化した価値は非常に高いと思いました。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
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☆4・・・・是非オススメ!
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by alcyon | 映画観た
2022年10月05日

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kazu_R

【観た/2022年58本目】映画「人質 韓国トップスター誘拐事件」観ました。

【解説・あらすじ】

あらすじ・解説
韓国、ソウル。
記者会見を終えて家に帰る途中だった俳優のファン・ジョンミン(ファン・ジョンミン)は、何者かに拉致されてしまう。
パイプ椅子に縛りつけられた状態で目を覚ましたジョンミンは、自身が巨額の身代金を目当てに誘拐されたことを知り、
さらに犯行に及んだ若者たちがソウルを震撼させている猟奇殺人事件の犯人であることにがく然とする。
身動きの取れない彼は、演技力を武器に犯人グループを翻弄、脱出のチャンスをうがかう。

ファン・ジョンミンが本人を演じたサスペンスアクション。
身代金目的で誘拐されてしまった彼が、演技力を駆使して犯人グループから逃れようとする。
監督はピル・カムソン。
イ・ユミ、リュ・ギョンスらが出演する。

【感想】
この役を誰がやるのか。そりゃあファン・ジョンミンしかありえない!
武器は演技力のみ。そりゃあファン・ジョンミンでしょう!!

まずストーリー。
これは韓国映画の方程式通り。
前半にプロットを仕込み、後半アクションを交えつつ、最後に回収し、示唆的に終わる。
まあ、よく見るパーターンではあるのですが一つ一つのギミックに工夫がされていて、全く見飽きない。
武器は「演技」に絞った点も実にうまい設定。
軸がしっかりしているのでストーリーにしっかり奥行きが出ているように感じる。

次に演出、俳優陣。
まずはファンジョンミンありき。
彼のキャリア、演技派としての突出した名声を巧みに悪用!(褒めてます!)
観客をうまくミスリードしながら、
時に彼らしい、時にはらしくない台詞回しで犯人と観客をきっちり巻き込んでいく。
脇を固める若手俳優陣も、ファン・ジョンミンとの共演に臆した様子は微塵もない。
従来的な演出への皮肉とも取れるシーンなども挟み込むあたり、監督の悪意も感じました。(褒めてますってば!!)

強いて言うなら

・アクションシーンが長く感じる。バリエも少ない。
・そりゃあ無理だろというほどのファン・ジョンミンの強靭さ。

あたりは一癖つけたいところ。

さてさて。
これが例えば「社長誘拐」とか「政治家誘拐」だったら。
ファン・ジョンミンが主役でも数段劣る作品になったでしょう。
あえての俳優、あえての本人役にすることで、
本人のパブリックイメージ、映画の中での実像、
さらには映画の外での姿を想像させるのは上手いし新しい。
これ、キャストを変えてもう一回やれるかと言ったら多分やれない。
ハリウッドリメイク?
できるとしたら、、もう20歳若いイーストウッド?
ともかく無理筋。

僕は告白すれば、ファン・ジョンミンファンなので、もう大満足でした。

演技派とはなんぞや?
役へのアプローチ、その基礎中の基礎である「体を借りて他人を演じる」ことの最適解。

このあたりを注目してご鑑賞いただければなかなかに興味深いのではと感じます。

もちろんおすすめです!

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by alcyon | 映画観た
2022年10月01日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
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【観た/2022年57本目】映画「ヘルドッグス」観ました。

【解説・あらすじ】

警官時代に殺人事件を止めることができず、その苦悩を抱えながら生きる元警官の兼高昭吾(岡田准一)。
警察は関東最大のヤクザ組織「東鞘会」への潜入捜査を彼に強要し、
データ分析で相性98パーセントと判定された無軌道なヤクザ・室岡秀喜(坂口健太郎)とコンビを組ませる。
東鞘会最高幹部の一人でもある土岐勉(北村一輝)が率いる東鞘会・神津組に潜り込むことに成功し、抜群のコンビネーションを発揮。
連絡係の衣笠典子(大竹しのぶ)の協力を得ながら、組織内でのし上がる。

深町秋生の小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」を映画化したアクション。
暴力団に潜入した元警官と無軌道なヤクザのコンビが、組織内でのし上がっていく姿を描く。
監督は原田眞人。
過去にも原田監督と組んだ岡田准一が主演を務める。
坂口健太郎、松岡茉優のほか、北村一輝、大竹しのぶらが出演する。

【感想】
これでもか!まさに豪華キャスト!!。
ヤクザ映画、その定型文の大外をあえてゆく、チャレンジングな作品!

まず脚本だったりストーリーだったり。
実在した事件をモチーフに、全体のトーンというか色彩というのか、
ベタベタと塗り重ねていく作風は原田監督のいつも通り。
セリフ量の多さなども過去作に比べても通常運転感はあります。

次に演出、演技なんですが。
まず驚いたのがキャスティングの振り幅。
本職の演技派俳優を要所に配置し、重要な役をあえてでしょう、ミュージシャンやコメディアン、
若手の気鋭に振っていく、それでいて誰も「浮かない」。
そのあたりのベンチマークの取り方はさすがベテラン監督です。
格闘シーンもバリエが豊富で一つ一つのスペックが高い。
見応え十二分でした。

ただやはり。

特有の台詞回しは表裏一体。シンプルに聴き取れない箇所が多発。
ストーリーも途中から合理性がぶっ飛び、話の最終地点がモヤっとする。
潜入捜査の動機づけもありきたり。
ラストシーンも軽薄に感じる。

等々、到底看過できない部分も散見。

アクション映画としては上々だが、骨太ではない。
俳優陣は凄まじいが、演出的には不満。

矛盾と言うか二律背反的な要素がふんだんに含まれる本作。
もしかすると「現実社会もそういったものだよね」というメタ構造になっているとしたら、、、。

いやいや、それは考え過ぎな感じがする。。。

ので

岡田くんのキレキレのアクション。
坂口くんのキレキレの狂気。
松岡さんのキレキレの綺麗さ。

などをご堪能したい方に、
ぜひおすすめです!

【価点・つけるとしたら】
☆3.8です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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2022年09月28日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年56本目】映画「ファイナル アカウント・第三帝国最後の証言」観ました。

【解説・あらすじ】

第2次世界大戦中、ナチスはホロコーストを行った。ナチスが支配するドイツ・第三帝国でホロコーストを実際に目撃した人々は、戦後長い間沈黙を守ってきた。
そして今、当時を知る最後の世代となった彼らはようやく口を開きさまざまな証言を語る。
そこにはナチスに加担した後悔や、自分は加害者ではないという言い逃れ、
自己弁護、アドルフ・ヒトラーへの支持など多様な思いがあった。

ナチス支配下のドイツ・第三帝国を知る高齢者たちにインタビューしたドキュメンタリー。
アドルフ・ヒトラー率いるナチス政権下のドイツで幼少期を過ごし、ホロコーストを実際に知る最後の世代である彼らの証言を映し出す。
監督などを手掛けるのはルーク・ホランド。元ナチス親衛隊のカール・H・ L・ホランダー氏、ハンス・ヴェルク氏らをはじめ、
ドイツ女子青年団に所属していたマリアンネ・シャントロー氏や、
ナチス親衛隊員宅のベビーシッターだったマルガレーテ・シュヴァルツ氏らが出演する。

【感想】
おそらく、ほぼほぼ最後になるであろう、「虐殺当事者」を直撃するドキュメンタリー。

まず構造。
過去の蛮行を現代的視点で振り返る。
過去の若者を現代の若者が斬る。
この2つにはっきりと絞りきった、ピンと強めの作画。

次にその焦点、内容ですが。
これは過去の蛮行、心の本音を暴き出すことだけに徹底。
周辺事情や被害者視点はみんな知ってるよね、といったところに据え置き、
対比構造は意図的に避けている。

さてさて。
「直接手を下していない」
「知らなかった」
「いやいやヒトラー、政権運用は良かった」
「命令だったから仕方ない」
といった、ギリギリの建前までは迫っていると思うのですが、いかんせん尺が短い。
監督の作画のきっかけ、その強い動機であったり、ユダヤ人迫害に至るストーリーは全然追えておらず、
結果「彼ら」の「本音」に迫るまでには至っていないと感じました。

ただ。
この言い訳の方程式は現在性、再現性、敷いては普遍性が高く。
どれもこれも、時代を超え、場所を替え、言語を変えて見聞きしてきたものばかり。
背筋が寒くなったこともまた事実です。

狂気。
それはいつも平時の中にこそある。
強く心に刻みたいと感じる作品でもありました。

【価点・つけるとしたら】
☆3.5です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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伊東のホテル|伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオン

by alcyon | 映画観た
2022年09月25日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2022年55本目】映画「NOPE/ノープ」観ました。

【解説・あらすじ】

田舎町に暮らし、広大な牧場を経営する一家。
家業を放って町に繰り出す妹にあきれる長男が父親と会話をしていると、
突然空から異物が降り注ぎ、止んだときには父親は亡くなっていた。
死の直前、父親が雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目にしていたと兄は妹に話し、
彼らはその飛行物体の動画を公開しようと思いつく。
撮影技術者に声を掛けてカメラに収めようとするが、
想像もしていなかった事態が彼らに降りかかる。

ジョーダン・ピールが監督、脚本、製作を務めたサスペンススリラー。
田舎町の上空に現れた謎の飛行物体をカメラに収めようと挑む兄妹が、思わぬ事態に直面する。
ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、スティーヴン・ユァンのほか、
マイケル・ウィンコット、ブランドン・ペレアらが出演する。

【感想】
「スリラー、ホラーは観ない」。
なぜなら怖いから、という僕の不問律をあっさり破る理由の最適解!

まあ、何はともあれ脚本、ストーリーです。
「ネタバレしない」もう一つの禁を思わず破りたくなる、面白さ。
骨格のしっかりしたストーリーに、精密な仕掛けをちょっと必要以上に詰め込みまくり。
徐々に話の主軸が変わっていくのも新鮮でしたし、
実質的なネタバレ後にももう一段階「話を盛り上げていく」のも凄まじい。
プロットの回収が映画の時間ではなく、帰りの車の中ではっと気付かされるものも。
しまった、パンフレット買いそこねた感半端ないです。

そして演出。
やっぱりスリラー、ホラー?なのでそれなりに怖い、グロい、ゴアゴアもりもり。
ではあるのですが、お話の主軸がしっかりしているので僕程度の耐性でも十分鑑賞可能な安心?設計。
抑えめの前半、加速していく中盤、全開の後半は、まるで競馬の大きなレース、クラシックさながら。
「馬」はこの映画の大きなガジェット、キーワードでしたので意識してないわけがない。

強いて言えば、

・スピード感が有りすぎてプロットすべてを劇場内で拾いきれない。
・現象に対する動機づけが途中で変容するが説明が足りてない。
・ラストのラストがちょっと長い、くどい。

ぐらいがちょっときになるところでした。

僕は比較的普通の大きさのスクリーンで鑑賞したのですが、
噂によると、「画面のサイズで視えるモノが変わる」らしく。
確かにもう一回観たら、IMAXで見たらどうだろうとか考えてしまいました。
リピーター続出も全くもって頷ける、快作、力作。
同じ監督の過去作、お恥ずかしながらノーマークだったのでちょっと急ぎで掘り返したいと思います。

ホラー好きも、そうじゃない方も。
もちろんおすすめです!

【価点・つけるとしたら】
☆4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

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by alcyon | 映画観た

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こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
伊豆の四季やイベント、グルメ情報などを中心に、時々は好きな映画や本などのこともUPしていきます。
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