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アルシオン通信

Alcyon Blog

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2023年04月24日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年30本目】映画「神々の山嶺」観ました。

【解説・あらすじ】

雑誌カメラマンの深町誠は、行方が分からなくなっていた孤高の登山家の羽生丈二を取材で訪れたネパールで見かける。
羽生の手には、伝説的なイギリス人登山家ジョージ・マロリーのものと思われるカメラが握られていた。
日本に帰国後、羽生について調べ始めた深町は、羽生の人間性に魅了されていく。

夢枕獏の山岳小説を谷口ジローが漫画化した作品を、フランス人監督パトリック・アンベールが映画化したアニメーション。
謎を残したまま亡くなった伝説の登山家と、その登山家の遺品となったカメラを手に入れた孤高の登山家の物語が、雑誌カメラマンの視点で描かれる。
日本語版吹き替えを、堀内賢雄や大塚明夫、逢坂良太、今井麻美などが担当する。

【感想】
「そこに山があるから」という、シンプルな言葉の持つ狂気!

まずストーリー。
実在の人物を丁寧に追ったとされる人物描写。
自然の過酷さ、残酷さを緩みなく、そのまま過酷に、残酷に。
登山とは、冒険とは此処まで困難なのか、此処まで危険なのか、そして此処まで蠱惑的なのかを描ききっています。
ストーリーの伏線回収もお見事。
申し分のないストーリー展開でした。

そして演出。
アニメーションによる極めてリアルな状況描写は素晴らしく当たり!
クライミングや氷上での緊迫感、空気が薄い中での意識混濁など、
アニメーションだからこそできる「限界超え」を絶妙のバランスで表現しています。
音の表現、例えば氷を削る音等、録音も超一流。
まさに目の前にアルプスの氷壁が、微かに見えるエベレストの頂があるかのよう。
緊張感も半端なく、とてもとても95分の映画だったとは思えない重厚感に仕上がっています。

さて。
「そこに山があるから。」(正確には「そこにエベレストがあるから」らしい)という、原始的すぎる欲求。
これは僕らの実生活の中にも形を変えながらきっと存在していて。
その「理由」なるものが純度を高めるとどこからか狂気に変わる、変わってしまう。
踏みとどまるのか、行ってしまうのか、多分行かなくとも生きてはいけるのだろうけれども。

自分の中にある価値観、欲求、内なる狂気を問いただされる作品であったように思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
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by alcyon | 映画観た
2023年04月22日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年29本目】映画「ロストケア」観ました。

【解説・あらすじ】

ある民家で老人と介護士の死体が発見され、死亡した介護士と同じ訪問介護センターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)が捜査線上に浮かぶ。
彼は献身的な介護士として利用者家族からの評判も良かったが、検事の大友秀美(長澤まさみ)は斯波が勤める施設で老人の死亡率が異様に高いことに気付く。
そこで何が起きているのか、真相を明らかにすべく奔走する彼女に、斯波は老人たちを殺したのではなく救ったのだと主張する。
彼の言説を前に、大友は動揺する。

葉真中顕の日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を映画化。
老人介護の現場で起きた連続殺人事件をめぐり、検事が事件の真相に迫る。
前田哲がメガホンを取り、龍居由佳里が脚本を担当。
殺人を犯した介護士を松山ケンイチ、彼と向き合う検事を長澤まさみが演じる。

【感想】
これはもはやフィクションにあらず。
誰にでも起こりうる映画の外側、現実の物語。

まずストーリー、脚本。
タイトルや予告、そこから想起されるのはシリアルサイコキラーの物語mかなと思っていたのですが、、。
ちょっと予想外の展開。
わずか2時間弱の尺の中に現実社会の歪、
例えば経済格差やセーフティーネットの不備といった普段目をつぶってしまっている問題をぎっちり詰め込み。
それでいて過剰に感じないバランスの良さはさすがでした。

そして、演出、演技。
これがまた凄まじい。
一応松山ケンイチさんと長澤まさみさんのダブル主演ということにはなっていますが、
松山さん、演技の突き抜けぶり、ちょっともう、ステージが違う。
喜怒哀楽、その隙間の感情も細かく表現していく細かな動き。
見方、見る人によってはどうとも取れるような絶妙の表情。
役に思いを込めたからこそ発せられる狂気は、今回重要な役で出演されたあの柄本明さんの上を行く。
これだけでも必見です。

さて。
物語は重く、暗く、希望を見出すのが難しい、心を削がれるものだったのですが。
一方現実には同じような状況、あるいはもっと悲惨な状況がすでにあり、
それは全く他人事ではなく、明日、いや、今日にも我が身の問題なのです。

わかっているのに目をつぶっている。
わかっているのに考えない。
わかっているのに手を差し伸べない。

わかっているのに。
わかっているのに。。

主人公斯波を断罪する、そんなこと欺瞞に満ちた僕は、社会は本当にできるのだろうか。

深く深く心に刺さる、大きな棘のような作品だったと感じています。

【価点・つけるとしたら】
☆4.5です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年04月20日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年28本目】映画「ベイビーわるきゅーれ2ベイビー」観ました。

【解説・あらすじ】

すご腕の殺し屋である杉本ちさと(高石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)は、
普通の暮らしを立てるためにはさまざまな出費がかかることに困惑していた。
一方、殺し屋協会アルバイトのゆうり(丞威)とまこと(濱田龍臣)の兄弟も、
上層部の指令ミスで報酬がもらえないといった不安定な生活に窮し、お金を欲していた。
そんなとき、「ちさととまひろのポストを奪えば正規のクルーに昇格できる」という情報を得た兄弟は、ある計画を立てる。

殺し屋女子二人組が社会になじもうと奮闘する『ベイビーわるきゅーれ』の続編。
何をするにもお金が必要な社会を生きる彼女たちに、新たな敵が立ちはだかる。
前作同様阪元裕吾がメガホンを取り、園村健介がアクション監督を担当。
高石あかりと伊澤彩織が殺し屋コンビ役で続投し、水石亜飛夢、丞威、濱田龍臣らが共演する。

【感想】
グダグダまったりからのーキレッキレすぎるアクション!!!!

まずストーリー。
前作同様ルームシェアの日常シーンはゆるくだるく。
いや、前作よりダメダメぶりはバージョンアップ。
殺し屋をしていなければ社会不適合という謎?設定が見事にはまってます。

一転しての演出、アクション。
これはもう!
ほんとに間違いない!!
前回は呼吸をどこでしているのかわからないスピードでしたが、
今回は敢えてブレスを取って、「加速」をアクションに組み込んでいます。
技数も多彩、頂点が見えない登山のようなノビシロ感。
見飽きない気泡の数々には圧倒されました。

強いて言えば、、

映画愛あふれるオマージュも嫌いじゃないのですが、ちょっとだけくどい。もしくは使うならもっと大げさに。
ところどころ録音の設定がおかしく感じる?

ぐらいが気になるところ。

でもそんなのは本当に些末、アクション映画の新しい光なことに間違いない!
きっとある次作、期待しかないです!!

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年04月19日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年27本目】映画「ハケンアニメ!」観ました。

【解説・あらすじ】

最も成功した作品の称号を得るため熱い闘いが繰り広げられている日本のアニメ業界。
公務員からこの業界に転身した斎藤瞳(吉岡里帆)は、初監督作で憧れの監督・王子千晴(中村倫也)と火花を散らすことになる。
一方、かつて天才として名声を得るもその後ヒット作を出せず、
後がない千晴はプロデューサーの有科香屋子(尾野真千子)と組み、8年ぶりの監督復帰に燃えていた。
瞳はクセが強いプロデューサーの行城理(柄本佑)や仲間たちと共に、アニメの頂点「ハケン(覇権)アニメ」を目指して奮闘する。

直木賞作家・辻村深月がアニメ制作の舞台裏を描いた小説を映画化。
期待の新人監督と崖っぷち状態の天才監督が、アニメ界の頂点を目指して火花を散らす。
新人監督を吉岡里帆、彼女と覇権を懸けて争う相手を中村倫也が演じ、柄本佑、尾野真千子らが共演。
吉野耕平が監督、政池洋佑が脚本を務める。

【感想】
仕事。その真髄を抉って抉ってさらけ出す、働くすべての人に捧げる新しいアンセム!

まずストーリーや脚本。
タイトルやキービジュアルのポップさからは想像の出来ないかなり本気度の高いお仕事ムービー。
確実かつ印象深い台詞回しで、作品を作り出す、苦しみ、葛藤、目指す高みへの逡巡などを素晴らしい推進力で牽引。
アニメという題材の設定も絶妙。
誰に届けるのか、もちろん視聴者なのだけれども、どこまで信頼するのか、勇気を持って踏み込んでいます。
劇中劇のアニメ作品の書き込みも的確・適量で、バランスの良さと熱量を併せ持つ脚本でした。

そして演技や演出。
おそらく演出は敢えてのオーソドックス。
お仕事ムービーの文法を最大限活かし、俳優陣が演じやすいように全神経を使っています。
だからでしょう、吉岡里帆さん、中村倫也さんの二人は、じゃあ誰がこの役できるの?と思うくらい入り込んだ演技!
脇を固める柄本佑さん、尾野真千子さんも大きな見せ場があり、4人4様の仕事観が際立っていて思わず身震いしました。

さて。
好きを貫く。
目を逸らさなかった者、走るのをやめなかった者だけが掴む。
そんな事当たり前で、みんな知っていて、なのに出来ない。
いや、出来ないじゃなくてやらないだけだということを否応が無しに見せつけられる今作。
当然自分の仕事を見つめ直してしまう、その甘っちょろさに苦い気持ちになる。

痛快なだけじゃない、この鑑賞後の感覚。
この胸に刺さった棘のような痛みがきっとまだ成長の伸びしろを作ってくれる。

「満足できないものを世に出したらそれで終わりなんだよ」

心にしっかり留めておきたいと思いました。

【価点・つけるとしたら】
☆4.2です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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by alcyon | 映画観た
2023年04月16日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年26本目】映画「猫は逃げた」観ました。

【解説・あらすじ】

レディースコミック作家の町田亜子(山本奈衣瑠)は雑誌編集者の松山俊也(井之脇海)と肉体関係を持ち、
彼女の夫で週刊誌記者の広重(毎熊克哉)も同僚の真実子(手島実優)と浮気している。
夫婦仲は冷え切り離婚寸前の二人は、飼い猫のカンタをどちらが引き取るかでもめていた。
そんな中、カンタが姿を消してしまう。

飼い猫の引き取りをめぐってもめる離婚寸前の夫婦と、それぞれの恋人が繰り広げる恋愛ドラマ。
今泉力哉監督と城定秀夫監督が、互いに脚本を提供するコラボレーション企画の一作で、本作では今泉が監督を担う。
モデルや雑誌編集など多岐にわたって活動する山本奈衣瑠、毎熊克哉、手島実優、井之脇海のほか、
中村久美、お笑いコンビ「オズワルド」の伊藤俊介らが出演する。

【感想】
そりゃー猫も逃げるわー、逃げたくなるわー。。

まずストーリーだったり、脚本だったり。
「猫は逃げた」という出来事をスイッチに、交錯する人間関係、その感情の交錯を巧みに描写。
ケレン味がなく、後半に向けてのスピード感もあり、プロットの回収も的確。
今泉流ラブコメの本懐、此処にあり、です。

そして演出、演技。
まずキャスティングが絶妙。
猫も含めて絶妙。
主要4人が結構難し目のセリフ廻しを余裕でこなし、さらに各々の個性で味付けてくる。
ときおり見せるネコ目線、隠し味の仕込み方もこれまた良いさじ加減。
会話劇としての面白さをきっちり撮り切る職人・城定監督の真骨頂を感じることができます。

さて。
「不倫修羅場モノ」はすでにジャンル化されていて、
すでにすべてのパターンは出尽くしていると思っていたのですが。。
いやいやまだこの手があったとは。

猫&不倫という新しいジャンルを作った?と言える?快作でした。

(追記)
猫かわいい!
猫かわいいいい!
猫かわいいいいい!

【価点・つけるとしたら】
☆3.8です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2023年04月09日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年23本目】映画「シン仮面ライダー」観ました。

【解説・あらすじ】

1971年から1973年にかけて放送された石ノ森章太郎原作の「仮面ライダー」50周年プロジェクトとして、
庵野秀明が監督を務めた特撮アクション。
仮面ライダーこと本郷猛を池松壮亮、ヒロインの緑川ルリ子を浜辺美波、
仮面ライダー第2号こと一文字隼人を柄本佑が演じ、西野七瀬や塚本晋也、森山未來などが共演する。

【感想】
「仮面ライダー・リテラシー」を厳しく問われる問題作!

まずストーリー。
これは原作に基づくオリジナル。
人間・本郷猛の葛藤を中心に、庵野監督特有の言語を絡めて、「シン」シリーズの文法通り展開。
監督ファンにはおなじみの構成です。

そして演出と俳優陣。
これもまた庵野イズム炸裂。
旧作へのオマージュを残しつつ、現代的に再構築。
ショッカーの有り様、その存在理由を際立たせながら、尺いっぱいに怪人をつぎ込む贅沢な演出。
俳優陣も池松さんを始め、きっちり演じきっています。

ただ、

・話の軸が人間性=やさしさと仮面ライダー=暴力の葛藤、からどんどん離れ、薄味になる。
・アクションが本当に見ずらい。。
・怪人のコンセプトがあやふや、、

と、正直しんどい面も多々あり、、、。

難しい語彙を使い、無理めにストーリーを難解化したものの、その緊張感を最後まで保てず、といった感想です。

もしかして僕にもっと仮面ライダーへの造詣があり、オマージュの部分をうまく汲み取れればもっと違う楽しみ方ができたのかもしれません。

やや消化不良な映画体験でした。

【価点・つけるとしたら】
☆3.4です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
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by alcyon | 映画観た
2023年04月01日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年22本目】映画「モリコーネ 映画が愛した音楽家」観ました。

【解説・あらすじ】

多くの映画やテレビ作品で音楽を手掛け、2020年に逝去したエンニオ・モリコーネ氏。
クエンティン・タランティーノ監督やクリント・イーストウッドらが彼に賛辞を贈る一方、
自身は映画音楽の芸術的価値が低かった当時の苦しい胸のうちを明かす。
『荒野の用心棒』での成功、『アンタッチャブル』で3度目のアカデミー賞ノミネートとなるも受賞を逃し、
落ち込む様子なども描かれる。

『荒野の用心棒』『アンタッチャブル』など多数の映画音楽を手掛けてきたエンニオ・モリコーネ氏が、自らの半生を回想するドキュメンタリー。
かつては芸術的地位が低かった映画音楽に携わり、何度もやめようと思いながら続けてきた日々を振り返る。
『ニュー・シネマ・パラダイス』などでモリコーネ氏と組んだ、ジュゼッペ・トルナトーレが監督を担当。
クエンティン・タランティーノ、クリント・イーストウッド、ウォン・カーウァイ、オリヴァー・ストーンらがインタビューに応じている。

【感想】
あの音が、あの旋律が。
溢れる思いがスクリーンを包み込む。映画史に確実に残る音楽映画の頂点!

まず、ストーリーなどについて。
存命中のモリコーネ氏への膨大かつ貴重すぎるインタビューと、
多くの映画監督、同業の音楽家達によるこれまた膨大なコメントをもとに、
モリコーネを浮き彫りにしていく、骨太な構成。
全編隙間なく、モリコーネの音楽で紡がれていきます。
引用される映画のあのシーン、このシーン。
モリコーネを知らずとも誰しもが思いを寄せることができます。

そして演出や登場人物。

モリコーネという映画音楽をBGMから芸術にまで高めきった巨大なアイコン。
本人のみならず、多くの関係者の膨大すぎるインタビューを丁寧に紡ぐことで
その栄光ばかりではなく、深い苦悩、挫折にまで強く迫りきった監督の執念。
本当に尊敬していなければできない仕事とはこういうことなのでしょう。

音楽の素晴らしさは言わずもがな。
彼の一生分の音楽を一つの作品に納めるなんて到底できませんが、
それでもここまで構成しきったのはこれもまたマエストロの手腕。
素晴らしい、ただただひたすらに素晴らしいです!

さて。
やはり心に残ったのは、巨大な存在としてのモリコーネではなく、
皆と同じように評価に苦しみ、仕事に悩む姿でした。

その結実としてのアカデミー。
その全てが詰まった「あのスピーチ」

ああ、そうだよ、そういうことだよ、、、。

僕も何時か。
胸を張った仕事ができるようになったときは同じことを言いたい。

そう強く決意させられたような貴重な映画体験でした。

【価点・つけるとしたら】
☆4.4です。

ちなみに
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by alcyon | 映画観た
2023年03月29日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
kazu_R

【観た/2023年21本目】映画「ベネデッタ」観ました。

【解説・あらすじ】

17世紀、現在のイタリア・トスカーナ地方にあたるペシアの町。幼いころから聖母マリアと対話し、
奇跡を起こすとうわさされていたベネデッタは、6歳でテアティノ修道院に入る。
ある日、彼女は修道院に逃げてきた若い女性バルトロメアを助け、
やがて二人は秘密の関係を結ぶようになるが、
ベネデッタが新しい修道院長に就任したことで波紋が広がっていく。

「ルネサンス修道女物語 聖と性のミクロストリア」を原案に、17世紀に実在した修道女ベネデッタ・カルリーニを描くサスペンス。
幼くしてカトリック教会の修道女となった女性が、聖痕や奇跡によって人々にあがめられる一方、同性愛の罪で裁判にかけられる。
監督などを務めるのはポール・ヴァーホーヴェン。
ヴィルジニー・エフィラ、ダフネ・パタキアのほか、シャーロット・ランプリング、ランベール・ウィルソンらが出演する。

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【感想】
信仰の奇跡と悪の病理が交錯する、意欲作かつ問題作!

まずストーリー。
宗教の持つ神秘性と欺瞞、現在も過去も変わらぬ自然の驚異への畏怖、科学の限界。
これらを絶妙にブレンドし、監督の作家性というスパイスでじっくり煮込み。
切れ味抜群、推進力の強い、脚本です。
グイグイ引き込まれ、17世紀の世界観が実像を持って感じられます。

そして演出だったり演技だったり。
映像は極めて絵画的。
重厚な宗教画を実写化して動かすときっとこんな感じ。
演出は信仰する「人」、人間に焦点をビシッとあわせ。
生々しく欲望や性、信仰心の純粋さと嘘くささをこれでもかっ!と観客の前にさらけ出す。
俳優陣の的確な演技も含め、渾身の出来栄えです。

ただ、ところどころ、
「あれ、ちょっと無駄じゃないこのシーン?」
「え、そこ省略するの?」
といった、わかりやすさとわかりずらさが混在し、結果映画自体が長く感じたのは否めませんでした。

さて。
何かを信じること。
誰かを信じること。
が宗教であれ、人、例えば親族友人であれ、その事自体は美しいこと。
そこに欲望や恐怖が介入すると一気に「人間臭く」なる。
当作品ではペスト(黒死病)をモチーフにしていますが、流行病に翻弄されるのは今も変わらず。
果たして人間らしさは「救い」の手段足りうるのか。
非常に示唆に富んだ作品だったと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

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2023年03月19日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
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【観た/2023年18本目】映画「愛なのに」観ました。

【解説・あらすじ】

古本屋の店主・多田(瀬戸康史)は店に通う女子高生の岬(河合優実)からプロポーズされるが、
多田はかつてのアルバイト仲間である一花(さとうほなみ)という女性を忘れられずにいた。
一方、一花は自身の結婚式の準備に追われ多忙な毎日を送っていたが、
婚約者の亮介(中島歩)はウェディングプランナーの美樹(向里祐香)と浮気しており、
彼女はその裏切りを知らずにいた。

とある古本屋の店主をめぐり、一方通行の恋が交錯するラブコメディー。
城定秀夫監督と今泉力哉監督が、互いに脚本を提供しR15+指定のラブストーリーを製作する企画の一作。
本作では城定が監督を務める。
古本屋店主を瀬戸康史、その憧れの女性をさとうほなみ、店主に求婚する女子高生を河合優実が演じるほか、
中島歩、向里祐香、丈太郎らが共演。

【感想】
真っ直ぐな、正直すぎる愛をこれまたド直球で描く、豪速球ラブストーリー!

まずストーリー、脚本。
今作では今泉力哉氏が脚本なのですが、絶妙なストーリーテリングぶり。
セリフの一つ一つがくっきりしているし、それでいてそんなに饒舌ではなく。
小説でもなければ演劇の脚本でも、テレビのシナリオとも当然違う、「映画」の脚本です。
お話の構成もわかりやすさに徹していて、
細かなプロットの回収こそあれ、無理やり小難しくするような、
よくある「作家性主張」のようなものは殆どありません。
没入しやすい設計です。

一方の演出、演技。
これはさすが映画職人城定監督。
脚本をしっかり咀嚼し、自らの方程式にきっちり載せ、豪快に投げ放つ。
スケール感の構築の上手さが光る、こちらは存分に「作家性」が発揮されていて。
脚本との対比の構造が見事でした。
俳優陣、見事な奮闘ぶり。
今後の日本映画界を支えていくであろうキャスト陣が、脚本に食らいつき、演出を超えていく。
全員、肉体表現の生身っぷりは、役なのか自身そのものなのか錯覚するくらいの憑依感。
演技合戦としてもかなり見どころがあります。

強いて言うならところどころ共感のできない心理描写があり、
そこはもうちょっと尺を使ってもいいのではと思わなくはないですがこれは個人差のある部分でしょう。

さてさて。
今作を通じて考えさせられたこはやはり結婚とはなんなのかということです。

それは恋の結実なのか。
それとも愛の始まりなのか。

少なくとも生活の手段とはかんがえたくないなあ、、と想いをはせる映画体験でした。

【価点・つけるとしたら】
☆4.0です。

ちなみに
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2023年03月15日

こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
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【観た/2023年17本目】映画「別れる決心」観ました。

【解説・あらすじ】

生真面目な刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、ある男性が山で転落死した事件を捜査することになる。
取り調べを進める中、彼は被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)に疑念を抱くようになるが、謎めいた彼女に惹かれる気持ちを抑えることができずにいた。
一方のソレもまた、ヘジュンに特別な感情を抱く。

パク・チャヌク監督によるサスペンス。
ある滑落事故をきっかけに刑事と被疑者として出会った男女が、疑念を抱きながらも惹かれ合う。
チョン・ソギョンが同監督と共同で脚本を担当。
パク・ヘイルとタン・ウェイが主演を務め、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョらが共演。
第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞した。

【感想】
美しいすぎる映像、そのすべてが人の心を精密にあぶり出す。
これぞパク・チャヌク!!!

まずストーリーだったり脚本だったり。
夫婦の有り様は本当に数限りなく、もはや語り尽くされてるはずのテーマのはずなんですが。
ギリギリまで鍛えられた刀と焼き時間を数秒単位で見極められた陶芸、句読点の一つにまでこだわった文学。
パク・チャヌクとチョン・ソギョンの手にかかるとそれは魔法のように溶け合い。。。
ギリギリを見極める職人の凄みが感じられます。
もちろん細かなギミックやプロットの設計も見事。
尺長めの作品でも最後まで加速していく推進力は圧巻です。

そして演出、演技。
一つ一つのシーンにきっちり意味をもたせ、細かなセリフ、繰り返しの表現も少しづつニュアンスを変える。
かなり俳優陣には負荷の大きい演出のはずなのですが、そこはさすがの韓国クオリティ。
全俳優、監督の演出に食らいつくどころか食ってやるぐらいの野心的な演技。
とりわけヘジュン役のパク・ヘイル、ソレ役のタンレイは圧巻。
なりきり?憑依?
言葉が足りないくらい映画の中で「生きている」。
スクリーンが一回り大きく見えるような印象すらありました。

しいて苦手なところがあるとすれば風景描写が美しすぎる、この一点。
絵画的すぎて気持ちがストーリーから離れてしまう。
全シーン印象が強すぎるので少し焦点を絞ってもらったほうが作品の主題に近づけた感はありました。

さてさて。
以前にこんな言葉を教えてもらったことがあります。
「人は二種類しかいない。ルールを守りたくて守れない人。破りたくて破れない人」

自分は果たしてどちらのタイプなのだろうか。
同じ状況になったらどんな行動をしてしまうのだろうか。
思いとどまるのか、踏み外すのか。。。

恋愛。
その深淵を強く感じさせてくれる作品だったと思います。

【価点・つけるとしたら】
☆4.1です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

もちろん「オススメ☆」です♪
↓お読みいただきありがとうございました。宜しければぜひぜひコメント・クリックをお願い致します↓

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こんにちは、伊豆高原の小さなオーベルジュ アルシオンのかずです。
伊豆の四季やイベント、グルメ情報などを中心に、時々は好きな映画や本などのこともUPしていきます。
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